HIVと重複感染することで症状が更に悪化したり、病気の進行が早くなる病気があります。今回はそうした病気を取り上げてみたいと思います。
私が調べたことを甥っ子の陽介に説明するのであなたもごいっしょに聞いて下さい。
(甥っ子陽介)おじさん、HIVと重複感染するとまずい病気ってありますか? | (私)陽介、それは確かにあるよ。重症化したり、進行が早くなったりする。 |
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(陽介)え~、そうなんですか!怖いですね。
(私)だってさ、考えてごらんよ。HIVに感染するとどうなる?
(陽介)え~っと、長い時間をかけて段々と免疫力が低下していきます。
(私)そうだよね。免疫力が低下したらどうなる?
(陽介)日和見感染症を発症します。
(私)うん、そうだったね。要するに私も陽介も自分の免疫力で病気にかからないよう守られているし、仮に病気になっても早く治るよう病原菌と戦ってくれている。その免疫力が低下してしまったら病気になりやすく、かつ治りにくくなるのは当然と言えるね。
(陽介)そうですね。でも、そう言ってしまえばどんな病気でもHIVと重複感染すると怖いですね。
(私)まぁ、そうなんだろうね。私も全ての病気について調べた訳じゃないけど、基本はそうだろうな。
(陽介)それじゃ、おじさんが調べた病気について教えて下さい。
(私)いいよ。それじゃ、私が調べた中から、3つ教えよう。B型肝炎、C型肝炎、梅毒、この3つの性感染症だ。
(陽介)おじさん、ちょっと待って下さい。梅毒は分かりますけどB型肝炎、C型肝炎も性感染症なんですか?何かピンときませんけど。
(私)そうだろうな。だけどB型肝炎もC型肝炎もウイルスが性行為によって感染するんだよ。だから性感染症の本には必ずと言っていいほど登場するんだ。
(陽介)そうなんですか。僕なんかの感覚だと輸血や注射器で感染するってイメージですけど。
(私)そう、確かにかつてはそうだった。そうした医療環境の不備な時代に多くの人が知らない間にB型肝炎やC型肝炎になってしまった。そうした医療の不備は国の責任だとして患者が国を訴え裁判になったよね。そして国と患者の間で和解が進んでる。
(陽介)はい。よくニュースで見ます。
(私)しかし、現在ではそんな輸血や注射器の使い回しでウイルス性肝炎になる人はほとんどいないよ。感染しないように医療環境が整っているからね。
(陽介)そうなんですね。それでB型肝炎もC型肝炎も性感染症の一種という訳ですか。
(私)うん、その通り。特にB型肝炎は感染力が強く、HIVとの重複感染が多いことが分かっている。まぁ、基本的にHIVも梅毒もB型肝炎ウイルスもC型肝炎ウイルスも、全て感染ルートは共通だからね。
(陽介)なるほどです。では、この3つの性感染症がHIVとの重複感染でどう危ないんですか?
(私)まず、梅毒について話してあげよう。実はHIVと重複感染が最も多い性感染症が梅毒なんだよ。ほら、これを見てご覧。HIV検査をやっている保健所に置いてあるパンフレットにも書いてある。
(陽介)あ!ホントですね。それで梅毒がHIV感染と重複するとどうなるんですか?
(私)うん、私が調べたところ、梅毒の症状が進むスピードが早くなることがあるんだよ。
(陽介)症状が早く悪化するってことですか?
(私)そうだよ。梅毒の症状は第一期、第二期、第三期、第四期ってステージが分けられてる。感染してからの時期で言えばこんな感じだね。
●第一期
発症から3ヶ月くらいまで。感染した部分に赤いしこりが出来る。大きさは小豆大から、指の先くらい。このしこりは特に痛みはなく、放置していると2週間から3週間で消えてしまう。
●第二期
感染して3ヶ月後から2年くらい。バラの花びらをまき散らしたようなバラ疹が全身に現れる。(梅毒性バラ疹)痛みもかゆみもなく、数週間で消える。
あるいは小豆大の赤い盛り上がった発疹が、外陰部や肛門のあたりに出ることもある。その他、白い斑点が粘膜部分に現れたり、髪の毛が抜ける(梅毒性脱毛)、リンパ節の腫れ、発熱、頭痛、倦怠感などの症状もある。
●第三期
感染して2年から3年が過ぎた後の時期。全身に硬いコブのような「結節性(けっせつせい)梅毒ゴム腫」ができる。
●第四期
感染してから10年以上経過した後の期間。病変が、脊髄や脳、心臓、中枢神経にまで及ぶ。
こんな感じだね。現在は梅毒にはよく効く薬があるので第三期まで進行する例はめったにない。
(陽介)あ~、ペニシリンですね?でも昔は梅毒で命を落とす人も多かったそうですね。
(私)そうだね。それで、梅毒がHIVと重複感染した場合なんだけどね。私が調べた結果はこうだよ。
●第二期の発症が早まり、第一期とオーバーラップすることがある。
●通常だと第三期を経て第四期で発症する神経梅毒がわずか数か月で発症することがある。
⇒補足資料①
(陽介)うわ!ホントですか!むちゃ怖いですね!
(私)それに梅毒は近年また感染者が非常に多くなっているので要注意だね。
(陽介)分かりました。それでは次の病気をお願いします。
(私)それじゃ次はB型肝炎だ。こちらもHIVとの重複感染が非常に多いんだよ。このグラフを見てご覧。
このデータは、国立国際医療センター(ACC)で2002年9月17日から同年10月31日の間に、HIV感染者が他にどんな性感染症に感染しているかを調べたものだよ。(ただし、調査対象は男性の同性間性的接触感染者に限られる)
データが2002年と古いデータであること、調査対象者が男性の同性間性的接触者に限定されていることなどの条件付きではあるけど、HIVとB型肝炎の重複感染がいかに多いか分かるね。
(陽介)うわぁ、本当ですね。すごい多いですね。それで、B型肝炎はHIVと重複するとどうなるんですか?
(私)まず、HIV感染者がB型肝炎にも感染した場合、肝炎が慢性化する確率が高くなるんだよ。
●B型肝炎単独に感染した場合の慢性化率=6%前後
●HIVとB型肝炎に重複感染した場合の慢性化率=10%~18%
こんな感じで3倍にも慢性化率が高くなる。⇒補足資料④
他にも私が調べたら、3倍~6倍も慢性化率が高くなると書いた本もあったよ。⇒補足資料⑤
(陽介)そうなんですね。HIVに感染していると、B型肝炎に感染したときに慢性化しやすいと言うのは分かりました。でも、その先はどうなるんですか?
(私)肝炎が慢性化すると肝硬変になりやすく、そして次には肝臓がんになりやすい。結果として死亡率が高くなってしまうんだよ。私の調べではこんな感じだ。
●HIV感染単独の死亡率=1.7/1000
●B型肝炎単独の死亡率=0.8/1000
●HIV+B型肝炎の死亡率=14.2/1000
(陽介)これはまた随分と死亡率が高くなりますね。HIV単独の8倍、B型肝炎単独の17倍ですか。
(私)そういうことになるね。そしてHIVもB型肝炎ウイルスも、どちらも感染してもすぐには自覚症状が出ないことが多い。普通の健康診断でも感染は分からないしね。不安だったら自分でそれぞれの検査を受けるしかない。
(陽介)分かりました。では、おじさんC型肝炎についてはどうですか?
(私)C型肝炎の場合もB型と同じで肝炎が慢性化しやすい。私が調べたところ、HIV感染者が非代償性肝硬変へ進んでしまうリスクはHIVに感染していない人の5倍も高くなる。⇒補足資料⑦
(陽介)おじさん、慢性化の話は分かりますが、非代償性肝硬変って何ですか?
(私)肝硬変には2種類あって、代償性肝硬変と非代償性肝硬変がある。非代償性肝硬変とは肝細胞の多くが破壊され、残った細胞だけでは肝機能が維持できない重症の肝硬変なんだよ。
(陽介)そうなんですね。HIVに感染している人がC型肝炎にも感染すると、その重症の非代償性肝硬変になるリスクが5倍も高くなるということなんですね。
(私)そういうことだね。しかも、肝硬変になるスピードも速くなってしまう。私が調べたところ、こんなデータがあったよ。
●C型肝炎単独の場合、10年以内に肝硬変になる確率=2.6%
●C型肝炎とHIVを重複感染した場合、10年以内に肝硬変になる確率=14.9%
(陽介)そうですか。HIVに感染しているとB型肝炎もC型肝炎も慢性化しやすく、かつ肝硬変にもなりやすい訳ですね。より重症化し、より進行が早くなる、とても危険ですね。
(私)そうだね。今は簡単に説明したけど、ウイルス性肝炎とHIVの重複感染は相互に影響し合ってとても治療が難しい。専門的な話は私にも分からないけど、とにかくHIVもウイルス性肝炎も、早期に見つけること、これに尽きる。
(陽介)本当にそうですね。おじさん、これで今日のお話しは終わりですか?
(私)後はね、私が調べたところ、HIVに感染すると結核に感染して発症するリスクが高くなったり、悪性腫瘍の発生率も高くなることが分かってるそうだ。
また、クラミジアや淋菌などの性感染症も感染しやすくなることが分かってる。
(陽介)そうですか。以前におじさんから、クラミジアや淋菌に感染しているとHIVに感染する確率が何倍にも高くなるって教えてもらいましたよね。そうするとその逆もあるってことですね。
(私)まさにその通りだね。
(陽介)それじゃおじさん、ここらで終わりですか。
(私)うん、終わりにしよう。
(陽介)どうもありがとうございました。
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補足資料
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③「HIV感染者の早期発見 と社会復帰のポイント」(医薬ジャーナル社)
④・⑥「これでわかるHIV/AIDS診療の基本」(南江堂)
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