B型肝炎はHIVとの重複感染が多い性感染症のひとつです。肝炎が性感染症というのはピンとこないかも知れませんが、まぎれもなく性感染症です。
しかもB型肝炎はHIVと重複感染すると重症化することがあります。
B型肝炎がいったいどんな病気か、私の甥っ子の陽介に説明しますから、ぜひあなたもごいっしょに聞いてください。
(甥っ子陽介)おじさん、B型肝炎がHIVと重複感染が多いって、ホントですか? |
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(私)陽介、ホントもホントだよ。しかも重複感染すると重症化することもあって要注意だ。 |
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◇B型肝炎とはこんな性感染症です
(陽介)おじさん、B型肝炎は間違いなく肝炎の一種でしょう?肝炎がどうして性感染症なんですか?
(私)性感染症とは主に性行為で感染する病気のことを言うんだよ。B型肝炎はまさに性行為で感染していく病気だから性感染症だ。もちろん、お酒の飲み過ぎとかで肝炎になることもあるけど、B型肝炎はウイルスで感染するからね。
(陽介)うーん、どうもイマイチ納得いかないんですけど。
(私)まぁまぁ、これから詳しく説明してあげるよ。とにかくB型肝炎は性行為によって感染する病気であり、日本国内には100万人から150万人もの感染者がいると言われているんだ。
(陽介)えー!100万人から150万人もいるんですか!めちゃ多いですね。
(私)ただし、80%から90%の人には何も症状が出ない。無症候感染なんだよ。
(陽介)へぇ、そうなんですか。B型肝炎は感染しても気づかないままの人が大勢いる訳ですね。
(私)そうだよ。ただ成人になって感染した場合と、出産時や乳幼児のときに感染した場合で経過が異なるんだ。成人後にB型肝炎ウイルスに感染した場合は70%から80%の人が肝炎を発症しない。残りの20%から30%の人が急性肝炎を発症する。
そして急性肝炎になった人の約10%が慢性肝炎になってしまうんだ。更にそのまた3%~4%が肝硬変から肝がんになってしまう。
そして怖いのが劇症肝炎だ。急性肝炎になった人はほとんど完治できるんだけど、1%~2%の人は劇症肝炎になってしまう。劇症肝炎は致死率が高く、治療も難しい。
(陽介)うわー、劇症肝炎は怖いですね。でも、ほとんどの急性肝炎は治るんですね?
(私)そうだよ。ところで出産時や乳幼児のときに感染した場合、思春期から25歳くらいまでに肝炎を発症するんだ。でも約90%の人は自覚症状がないか、あっても軽くて済む。残り10%の人が肝炎を発症し、慢性化してしまう。
(陽介)うーん、何だかB型肝炎ってややこしくて一度聞いただけではよく分かりません。他の性感染症とずいぶん違いますね。
(私)確かにそうかも知れない。今の説明も思い切り端折ってこれだからね。きちんと説明してたら日が暮れるかも知れないよ。
・
◇B型肝炎の感染ルート
(私)B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスが感染して発症する病気だよ。他にもウイルス性肝炎はA型、C型、E型などがあるんだ。
(陽介)C型肝炎はよく聞きますね。
(私)そうだね。日本ではB型肝炎、C型肝炎の感染者が多いね。実はそれぞのウイルスによって感染ルートが違うんだ。
●B型肝炎
性行為感染・母子感染・血液感染の3つが主な感染ルート。かつては予防接種の注射器使い回しなどで血液感染していたが、現在の医療環境ではそういった血液感染はなくなった。最も多い感染ルートは性行為感染となっている。
●C型肝炎
性行為感染・母子感染・血液感染の3つが感染ルート。B型肝炎ウイルスに比べると感染力が弱い。
●A型肝炎
主に食物や水などから感染する。日本でも戦後間もないころ劣悪な環境下で感染した人が多かった。
●E型肝炎
A型肝炎ウイルス同様、飲み水や食べ物から感染する。最近では、イノシシの生レバー、加熱不十分な豚レバー、野生のシカ肉から感染する例が報告されている。
こんな感じだ。
・
◇B型肝炎の潜伏期間と症状
(私)感染して1ヶ月から6ヶ月、平均すると3ヶ月で発症する。でもさっきも話通り、必ず症状が出る訳ではなく、むしろ症状の出ない人の方が多い。
発症した場合の症状としては、
・全身の倦怠感
・発熱
・頭痛
・吐き気
・食欲不振
・下痢
・黄疸(おうだん)
・尿が褐色になる
こんな症状が出る。
(陽介)何だか風邪や食あたりみたいな症状から始まるんですね。
(私)そうだね。初期症状では風邪と間違う人も多いね。
・
◇B型肝炎の検査方法
(私)B型肝炎の検査は血液を採取してウイルスの抗原や抗体を調べるんだ。
(陽介)おじさん、僕も職場の健康診断で血液検査を受けました。色んな肝機能の数値が出てましたけど、あれでB型肝炎も分かるんですか?
(私)残念だけど一般的な健康診断では分からないよ。確かに肝機能は検査するんだけど、それは肝臓が正常に働いているかどうかだけの検査なんだ。ウイルスが感染しているかどうは分からない。
(陽介)え~!そうなんですか!てっきり分かると思ってました。
(私)それ、けっこう間違っている人が多いね。B型肝炎ウイルスに感染してもすぐに肝機能に異常が出る訳じゃない。だから普通の健康診断では全く問題ないと診断されても感染している場合もあるよ。
(陽介)それじゃ病院で検査してもらわないと分からないんですね。
(私)そうだね。病院や保健所などでウイルス学的検査をする必要があるね。
(陽介)分かりました。
・
◇B型肝炎の治療方法
(私)B型肝炎の治療法には主に3つの方法があるんだ。
●抗ウイルス療法
病原菌であるB型肝炎ウイルスに直接働きかけて治療する方法。よく知られているのがインターフェロンによる治療。インターフェロンは感染したB型肝炎ウイルスが増殖するのを防ぐ。
●免疫促進療法
免疫力を強くして体内でB型肝炎ウイルスが増殖するのを防ぐ治療法。
●抗炎症療法
取りあえずウイルスそのものはそのままにしておいて、炎症を抑える治療法。副作用が少なく、抗ウイルス療法がうけられない人でも治療を受けやすい。
(陽介)これも何だか難しい単語がいっぱい出てきますね。何のことやらよく分かりませんけど。
(私)だろうね。でも、ここで説明しているとやっぱり日が暮れてしまいそうだ。後で専門サイトを教えてあげるから、詳しくはそちらを見てごらん。
(陽介)分かりました。
(私)それじゃ最後にB型肝炎ウイルスの大事な点をまとめておくからね。
●B型肝炎はB型肝炎ウイルスが主に性行為によって感染する病気である。
●感染してもほとんどの場合症状がないか、軽くて済む。
●しかし、中には慢性肝炎から肝硬変、肝がんに移行する場合もある。
●あるいは劇症肝炎に進む場合もあり、劇症肝炎は致死率が高い。
●B型肝炎はウイルス検査が必要で、普通の健康診断では分からない。
こんなところかな。
(陽介)それじゃおじさん、最後にB型肝炎の予防方法と注意すべき点を教えてください。
(私)了解。まず、予防法としては性行為のときにコンドームを使うこと。これで性行為による感染を防ぐことが出来る。そして薬物注射の回し打ち、ピアス、刺青などによる血液感染に注意することだね。むろん、薬物は注射器の問題以前に絶対やっちゃいけない。
(陽介)他にも予防法がありますか?
(私)あるよ。実はB型肝炎にはワクチンがあるんだ。保健所や病院のホームページを見て欲しいね。家族にB型肝炎の人がいる場合にはワクチンはお勧めだね。
(陽介)なるほど分かりました。それじゃ一番最後にB型肝炎で注意すべき点を教えてください。
(私)実はB型肝炎はHIVとの重複感染が非常に多いことが分かっている。一番最初から言ってるようにB型肝炎は性感染症の1つだからね。HIVと感染ルートは同じなんだよ。⇒補足資料①
そしてB型肝炎患者がHIVにも感染している場合、症状がより重症化する場合がある。HIVもB型肝炎も感染しても症状が出ないことが多いので、要注意だね。⇒補足資料②
何も自覚症状がなくても、感染の可能性がある行為に心当たりがあればぜひ検査を受けて欲しい。それもHIVとB型肝炎の両方を同時に検査すれば安心だね。
(陽介)そうなんですか!HIVとB型肝炎って、意外な組み合わせですね。
(私)そうだよね。普通はそんなこと思いもよらないし、知らないよね。だからこそ注意して欲しいね。
(陽介)分かりました。おじさん、ありがとうございました。
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補足資料
①HIVとB型肝炎の重複感染について
ACCで調査したデータによる。調査対象者がMSMという条件付き。
ACC:独立行政法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター
MSM:Men who have Sex with Men 男性間性交渉者
「HIV感染者の早期発見と社会復帰のポイント」(医薬ジャーナル社)より
②B型肝炎患者がHIVにも感染した場合
「これでわかるHIV/AIDS診療の基本」(南江堂)からのデータです。
●HIVとHBVを重複感染した場合の死亡率
・HIV単独の死亡率=1.7/1000
・HBV単独の死亡率=0.8/1000
・HIV+HBVの死亡率=14.2/1000
このように重複感染すると死亡率が8倍から17倍と、格段に高くなります。
また、死亡率だけでなく、B型肝炎が慢性化するリスクも高くなります。
●B型肝炎慢性化率
・HBV単独の慢性化率=6%前後
・HIV+HBVの慢性化率=10%~18%
このように、B型肝炎患者がHIVにも感染している場合、肝炎がより重症化し死に至る危険性も高くなります。全HIV感染死亡者のうち、肝疾患による死亡率は30%から55%に及ぶとした報告もあるそうです。(B型肝炎以外のC型肝炎なども含む)