2017年9月19日、ネット上で非常に注目されたニュースが流れました。
それは、
このニュースです。
HIV感染症がかつての致死的疾患から慢性疾患へと変わりつつある現在、新たな課題も見えてきたようです。
私の調べたことを甥っ子の慎太郎に話しますので、あなたもごいっしょに聞いて下さい。
【今回のテーマと内容】 ・ ●テーマ:HIV感染者の喫煙リスクとは? ・ 1.HIV感染者の喫煙リスク ・ 2.長期合併症の対策 ・ 3.まとめ ・ |
(甥っ子慎太郎)おじさん、ちょっと気になるニュースを見つけたんですけど。 |
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(私)慎太郎、それはどんなニュースだい? |
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(慎太郎)HIVに感染している人で、タバコを吸う人は肺がんで亡くなるリスクが高くなるっていうニュースなんです。
(私)ああ、それなら私も見たよ。
これだね。
HIV感染者でタバコを吸う人は、HIV関連死で死ぬ確率より肺がんで死ぬ確率の方が高いとするものだね。
(慎太郎)そうそう、そのニュースです。ちょっと意味が分からないところもあるんですよ。
(私)どこが分からない?
(慎太郎)まず、HIV関連死って何ですか?
(私)HIVに感染したことが直接の死因になった場合、それをHIV関連死って言うんだよ。
例えばHIV感染による免疫力低下でエイズ指標疾患のような日和見感染症で亡くなった場合だね。
かつてはニューモシスチス肺炎、カポジ肉腫などのエイズ指標疾患で多くの患者が亡くなっていた。
(慎太郎)はい、それは「エイズ指標疾患ってなに?」ってお話で教えてもらいました。
(私)そうだったね。しかし、1997年頃から始まったARTと呼ばれる抗HIV治療で劇的に死亡数が減ったんだ。
体内のHIVをコントロールできるようになって免疫力が回復出来るようになったからね。
(慎太郎)そうでしたね。前にも教えてもらいました。
こんなお話でしたよね。
(私)そうだったね。
今でこそ治療でエイズ発症を防ぐことも出来るし、エイズ発症後でも命を落とすことは少なくなった。
でもARTが始まる前はHIV感染者の治療はエイズ関連死をどうやって防ぐか、まさにそこにかかっていた訳だ。
何しろART開始前はHIVに感染することが数年先のエイズ発症を意味し、そこから2年以内の死を意味していた時代だからね。
(慎太郎)それはそうでしょうね。
(私)かつて致死的疾患だったHIV感染症は今では慢性疾患と言われるようになった。薬で病気をコントロール出来るようになったんだよ。
その結果、HIV感染者の寿命は非感染者と大差ないところまで延びている。
そこで今回のニュースのような事態が問題となってきたんだよ。
(慎太郎)どう言うことですか?
(私)さっきも言ったけど、ARTによってHIV感染者はエイズ関連死で亡くなることは激減し寿命も延びた。
その結果、エイズ関連以外の病気で亡くなる人が問題になってきたんだよ。
今回のニュースの肺がんもその1つだね。
(慎太郎)なるほど。かつての致死的疾患だった時代には問題になってなかった病気が、寿命が延びることで問題となってきた訳ですね。
(私)その通りだ。しかも今回のニュースで驚くのは喫煙との関連だよ。
(慎太郎)と言うと?
(私)そもそもHIVに感染していない人でも喫煙が肺がんの危険因子であることは知られているよね?
(慎太郎)はい、タバコを吸わない僕でも知っています。タバコを吸ってる人は吸わない人に比べて何倍も肺がんになるリスクが高くなるんですよね。
(私)その通り。今回のニュースで驚いたのはこの2点だ。
●HIV感染者の喫煙率は40%で、これは非感染者の喫煙率の2倍に当たる。
●HIV感染者でARTの治療を受けていても、喫煙している人は25%が肺がんで亡くなっている。これはエイズ関連死の6倍~13倍に相当する。
(慎太郎)う~ん、そうなんですか。でも、なぜHIV感染者には喫煙者が多いんですか?
(私)うん、ニュースにはそこまでの解説は載っていなかった。それとこのニュースはアメリカ医学誌「JAMAインターナル・メディシン(JAMA Internal Medicine)」に発表された研究報告なんだよ。
(慎太郎)あ~、アメリカでの話なんですね。
(私)そうだ。日本でも全く同じかどうかは分からない。
(慎太郎)少なくとも、アメリカにおいてはHIV感染と喫煙が重複すると肺がんリスクが高くなるという事ですね。
(私)その通り。何しろエイズ関連死の6倍~13倍も死亡リスクが高くなるんだからね。
(慎太郎)うーん、そうなると日本での実情が知りたくなりますね。
(私)そうだね。今回のニュースに匹敵するようなデータは見つからなかったけど、こんな本を読んでみた。
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「HIV診療のリアルを伝授します」(丸善出版)
この本の中に「HIV治療開始後の長期合併症対策」と言うことが書かれている。
(慎太郎)何ですか、それは?
(私)先ほどから繰り返し説明してきたように、HIV感染者の寿命が延びて治療は長期に及ぶようになった。
その結果、かつての日和見感染症の管理だけを行っていた時代から生活習慣病や悪性腫瘍(がん)の長期合併症もしっかり対策が必要だってことだ。
(慎太郎)なるほど。生活習慣病って、糖尿病とか高血圧症とか、そんな病気ですねよ。程度の差はあっても、中高年にはめちゃくちゃ多いですよね。
それから今や日本人の2人1人はがんになり、3人に1人はがんで亡くなるって聞きました。
(私)その通り。データから見ると生活習慣病もがんもHIVに感染していなくても注意が必要な病気だね。
同書によればHIV感染者は非感染者に比べて生活習慣病やがんになるリスクが高いそうだ。
先ほどの肺がんは喫煙によるリスクの話だったけど、仮にタバコを吸わなくてもHIV感染者はがんになるリスクが高いと言う話だね。
(慎太郎)そうなんですか。でも、なぜそうなるんですか?
(私)うん、さっきの本によるとね、HIVによる「慢性炎症」が影響しているらしい。
(慎太郎)慢性炎症?何ですかそれ?
(私)ARTによって体内のHIVをコントロール出来るようにはなったけど、ゼロには出来ない。
量は少なくてもHIVが残ったままになっている。それが慢性炎症を引き起こす要因になっているそうだ。
どこに、どんな炎症を引き起こすのか、そこまではよく分からなかったけどね。
(慎太郎)そうですか。でもまぁ、何となくはイメージ出来ますね。
(私)その慢性炎症に加えて、薬の副作用、生活習慣、加齢などの要因が加わって、長期合併症になるわけだ。
(慎太郎)そういうことですか。
(私)アメリカの報告書みたいに具体的な数値データは載っていなかったけど、本の中にHIV感染者は喫煙率が高いと書かれてある。
だから決してアメリカだけの話じゃなくて日本の事情とも共通している点があるね。
(慎太郎)そうですか。薬の副作用は医師に対策してもらうしかないし、加齢も自分では止めることは出来ませんよね。
だったら自分で何とか出来るのは生活習慣ってことですね。
(私)そうだね。まさに肺がんリスクを高める喫煙は自分で止めることが出来るよね。
ヘビーな人にとって禁煙はそう簡単なことではないだろうけど。
今回のニュースで紹介さた報告の共著者で、アメリカマサチューセッツ総合病院のトラビス・バゲット氏はこう言ってる。
「HIV感染者が健康増進と長生きのためにできる最も重要なことの1つは、喫煙をやめることだ」
(慎太郎)まさしく生活習慣の改善ですよね。
(私)そうだね。まぁ、さっきも言ったようにHIV感染者だけの話ではないけどね。
しかし「慢性炎症」を抱えるHIV感染者は特に注意が必要ってことだね。
今回のニュースもその1つだと思えばいいのかな。
(慎太郎)おじさん、分かりました。
(私)それじゃ最後に、今回の話をまとめておこうか。
慎太郎が見たニュースの要点は、
「HIV感染者でタバコを吸う人は、HIV関連死で死ぬ確率より肺がんで死ぬ確率の方が高い。」
ってことだ。
●HIV感染者の喫煙率は40%で、これは非感染者の喫煙率の2倍に当たる。
●HIV感染者でARTの治療を受けていても、喫煙しているは25%が肺がんで亡くなっている。これはエイズ関連死の6倍~13倍に相当する。
これはアメリカのデータだけど、日本においても喫煙などの生活習慣が長期合併症のリスクと関係しているとする指摘がある。
こんなところかな。
(慎太郎)分かりました。
抗HIV医療は進歩し、HIV感染症は致死的疾患から慢性疾患へと変わり、患者の寿命も延びました。
その結果、エイズ関連疾患だけでなく、長期合併症の対策も必要になってきた、と言うことですね。
(私)そうだね。それじゃ今回はこの辺で終わりにしよう。
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