エイズが登場してからすでに30年以上が過ぎています。しかし、未だにHIVのワクチンはありません。なぜでしょうか?
HIV感染症はかつての致死的疾患から慢性疾患に近づきつつあります。それは体内でHIVの増殖を抑える治療法が見つかったからです。
しかし、その治療法もHIV感染を完治させるまでに至らず、生涯治療となります。しかも、未だにHIV感染を予防するワクチンは出来ていません。
その理由を私が甥っ子の陽介に説明しますから、ぜひあなたもごいっしょに聞いてください。
(甥っ子陽介)おじさん、HIVのワクチンはどうして作れないんですか? | (私)陽介、それはHIVというウイルスの特性に原因があるんだよ。 |
![]() |
![]() |
(陽介)HIVの特性?どんな特性があるんですか?
(私)それはね、HIVが容易に変異を繰り返すと言う特性だよ。
(陽介)HIVが変異するんですか?
(私)そうなんだよ。だからせっかくワクチンを作っても、実際に使おうとするとすでにHIVは変異しているのでワクチンが効かないんだ。
(陽介)HIVって、どのくらいの割合で変異するんですか?
(私)そうだね。それをちょっと説明しよう。まず、HIVは感染して体内に入ると、1日に100億個も増殖するんだ。むろん、感染の時期や個人差もあるから、凡その目安だけどね。⇒補足資料①
(陽介)えーーー!1日で100億個!トンデモナイ数ですね!
(私)そしてHIVは1万個に1個の割合で突然変異を起こすと言われているんだよ。
(陽介)はあ~!すると単純計算で、1日当たり100万個も突然変異したHIVが現れる計算になりますね。
(私)実際にはHIV感染者の体内では免疫細胞がHIVと戦っているので、HIVが毎日100億個ずつ増えている訳ではないよ。ただ、HIVというウイルスが容易に変異することは間違いない。
(陽介)そんなに姿を変えるんじゃワクチンを作るのも難しいですね。
(私)そうだね。今の説明はかなり難しい医学的な話だけど、ワクチンがなかなか作れない理由にはもっと簡単に理解できる理由もあるよ。
(陽介)え?僕でも簡単に理解できますか?
(私)ああ、できるとも。なぜ、HIVのワクチンが作れないか?その理由の1つは、新しいワクチンを研究しても、その効果を試すことが難しいからだよ。
(陽介)ふ~ん・・・ワクチンの効果を試すのが難しんですか?
(私)いいかい、陽介。普通に考えたら、新しいワクチンってどうやって効果を試す?
(陽介)そうですね、いきなり人間に使うと危ないからまずは動物実験ですかね。例えばネズミとか、サルとか・・・
(私)でもHIVは人間にしか感染しないウイルスだよ。サルを使っても十分な確認は出来ないんだ。
(陽介)あ!そうでした!確かにHIVは人間にしか感染しませんよね。うーん、それは困りますね。新しく作ったワクチンの効果を試せないんじゃ、研究は思うように進まないでしょうね。
(私)そうなんだ。一般にワクチンは2種類あって、1つは生ワクチン、もう1つは不活化ワクチンと呼ばれる。
(陽介)あ~、何だか聞いたことあります。生ワクチンは危ないって言う人もいますよね。
(私)生ワクチンとは毒性を弱めたウイルスから作られたワクチンだよ。毒性が弱いから本当の病気にはならない。不活化ワクチンとは完全に死んでるウイルスから作られたワクチンだ。当然病気になる恐れはない。
ただ生ワクチンは毒性を弱めているけど、何しろ生きたウイルスを使っているので人によっては副反応が出てしまうことがあるんだ。
(陽介)うーん、それってHIVでも同じことが言えるんですね。
(私)その通り。100%安全なHIVの生ワクチンなどないんだ。さっきも言ったけどHIVは容易に変異するからね。いつ毒性が強くなるかも分からない。万一、本当にHIVに感染してしまったら大変なことになるよね。
(陽介)それじゃHIVでは生ワクチンは作れませんね。とてもじゃないけど怖くて試せないですね。でも、それなら安全な不活化ワクチンを作ればいいんじゃないですか?不活化ワクチンなら人間にも試せるでしょう?
(私)そうだね。だけどワクチンの効果としては生ワクチンの方が感染予防効果が高いんだ。なぜなら、生きたウイルスを使うから実際に感染したときに近い状態で抗体ができるんだね。
(陽介)なるほど。生ワクチンは予防効果は高いけど、副反応の可能性がある。不活化ワクチンは安全だけど予防効果の点では劣ると言う訳ですね。
(私)全てのケースがそうとは言えないけど、一般的にはそうだね。おじさんが調べたところ、現在ではHIVの不活化ワクチンとして遺伝子組み換え技術を使う研究が進んでいるらしいよ。
(陽介)それじゃもうじきHIVのワクチンも出来ますか?
(私)うーん、何とも言えないね。専門家の話でもまだまだ先になりそうと言うのが多い見解みたいだね。
(陽介)HIVのワクチンが難しいのは、HIVが容易に変異を繰り返すこと、ワクチンの効果を確認するのが難しいこと、この2つの理由があるってことですね。
(私)そうだよ。他にもまだ理由はいくつかあるけど、この2つは大きな理由だね。今回のお話はここまでだよ。
■関連記事:この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます。
■「HIV検査が怖い」3ヶ月間悩み続けた私がついに決心した3つの理由
・
補足資料