HIV感染が分かった時にはすでにエイズを発症していた、いわゆる「いきなりエイズ」状態でも抗HIV薬は有効なのでしょうか?
エイズ治療の一般的な情報としてお読み下さい。
(甥っ子陽介)おじさん、抗HIV薬ってエイズ発症後に投与しても効き目はないんですか? |
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(私)陽介、もちろんエイズ発症後でも効果はあるよ。どうしてそんなこと聞くんだい? |
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(陽介)実はネットで見つけた記事があるんですけど、その記事にはエイズを発症すると免疫機能は全滅して薬も手遅れだって書いてあったんです。
(私)ほほう。免疫機能が全滅?薬が手遅れ?過激なことが書いてあるね。
(陽介)要するに、HIVに感染したらエイズ発症前に治療をすれば助かるけど、エイズを発症してしまえば治療も手遅れになる、って書いてあったんです。
(私)ふむふむ。それで?
(陽介)今までおじさんに、
「早期のHIV検査は救命的検査である」
って繰り返し教えてもらいましたよね?
(私)ああ、とても大事なことだね。
(陽介)それって、逆に言えば「早期のHIV検査」が出来なかったら救命出来ないってことなんですか?それだと僕が見つけた記事が正しいってことなると思うんですけど。
(私)結論から言えば、その記事は間違いだね。エイズを発症しても免疫機能は全滅までいってないし、手遅れで薬が効かないってこともない。
(陽介)あ~、そうなんですね。良かった。
(私)確かに免疫機能を示すCD4の値は、健康な人だと700~1300くらいあるのに、エイズを発症した人だと30とか50くらいまで減っている場合もある。⇒補足資料①
(陽介)だからそこまでCD4が減少する前に治療を開始した方が予後がいいってことですよね?確か現在ではCD4が350くらいになったら薬の投与を始めるんですよね。
(私)その通り。でもそれはエイズ発症前にHIV感染が分かった場合であって、いきなりエイズを発症した場合はすでにCD4は350どころか100を切ってることもある。
(陽介)その場合はどうするんですか?
(私)当然だけどエイズを発症してるってことは、何かのエイズ指標疾患を発症してる訳だから、その病気の治療と抗HIV治療と、両方を行うことになるね。
(陽介)なるほど。肺炎を起こしていれば肺炎の治療を行いつつ、抗HIVの治療も行うってことですね。
(私)そうだよ。私が読んだ専門書にもそう書かれてる。例えば、こんな本だよ。
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「HIV感染症診療マネジメント」今村顕史著 医薬ジャーナル社
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「HIV/AIDS患者のトラブルシューティングとプライマリ・ケア」岩田健太郎著 南山堂
こうした本はエイズ治療の専門書ではないけど、エイズ発症患者の治療についても書かれてる。
また、実際にいきなりエイズを発症した後に治療を受けて免疫力が回復し、元気に暮らしてる人のブログや手記をいくつか読んだことがあるよ。
(陽介)それじゃおじさん、エイズを発症してからでも抗HIV治療は有効だってことですね。
(私)むろん、早期発見、早期治療がいいのは決まってる。HIVに感染してもエイズ発症前だと薬でエイズ発症を防ぐことが出来るからね。でもエイズ発症後であっても抗HIV薬が有効なのは間違いない。だからエイズで命を落とす人はすごく減ったよね。
(陽介)そうでしたね。
(私)それを改めてデータで確かめてみようか。現在のARTと呼ばれる治療法が広まったのは1997年頃からだね。それまではエイズを発症すると2年以内に命を落とす患者がほとんどだった。
図1.HIV感染者の病変死亡報告件数の推移
このデータを見てごらん。ARTが始まる1997年頃までは効果的な治療法もなく、エイズによる死亡者は増える一方だった。それがART開始後は劇的に死亡者が減ったんだ。⇒補足資料②
ただ、病変死亡者の報告は1999年から任意報告に制度が変わったのでこれが全数ではないかも知れない。しかし死亡者が大幅に減った傾向は間違いない。
(陽介)本当ですね。全数報告ではないにしろ、この10年くらいでは死亡報告は毎年ほぼ20件以下ですね。
(私)では1999年以降、新規エイズ患者数と病変死亡者数の推移をグラフで見てみよう。
図2.新規エイズ患者と病変死亡件数の推移
このグラフを見ても分かるように、新規エイズ患者は毎年400人から500人くらい報告されている。すでにエイズを発症した患者さんだね。
でも病変死亡報告は20件以下だよね。多くの患者さんは抗HIV薬によって命を救われている。決してエイズを発症した後の治療で抗HIV薬が効かないってことはない。
もっと分かりやすく、ARTが開始される前と、開始された後でどのくらい大きな変化があったか、表にしてみよう。ART導入は1997年頃だよ。
1985年~
・・・1997年 |
1998年~
・・・2014年 |
|
新規エイズ患者合計 |
1,057人 |
6,601人 |
病変死亡者合計 |
505人 |
392人 |
どうだい?この表を見れば、ARTがエイズ発症後の治療にいかに有効に効いているか分かるよね。
(陽介)本当ですね。こうしてみると、エイズってかつては本当に致死的疾患だったんですね。
(私)そうだね。医学の進歩はすごいよね。やがてエイズも完治出来る日がやってくるかも知れないね。体内から完全にHIVを駆除できる日が早く来て欲しいね。
(陽介)そうですね。そんな日が来るまでは、まずはHIV感染予防であり、次に早期のHIV検査ってことですね。
(私)まさにその通りだよ。いくらエイズ発症後に抗HIV薬が効くと言っても、エイズ発症前に治療を開始するのとエイズ発症後に治療を始めるのではその後の生存率に差があることが分かってる。⇒補足資料③
それに抗HIV薬で症状が回復しても後遺症が残ったりすることもある。だからHIVに感染した場合にはいかにエイズ発症前に治療を行うか、早期のHIV検査が大事だね。
(陽介)はい、分かりました。
(私)前に陽介に話したけど、毎年HIV感染が見つかった人の約30%はすでにエイズを発症している。このエイズを発症している人にも抗HIV薬は有効だけど、エイズ発症前にHIV検査で見つかっていればエイズを発症せずに済んだ可能性が高い。何度も言うけどやはり早期のHIV検査は救命的検査なんだよ。
(陽介)分かりました。
(私)それじゃ今日の話はこれでお終いだよ。
(陽介)おじさん、ありがとうございました。
検査の先送りは「いきなりエイズ」のリスクが増すだけ。
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補足資料
①CD4
「CD4ってなに?」
②ART(Anti-Retroviral Therapy)
多剤併用法、カクテル療法とも呼ばれ、3種類以上の抗HIV薬を同時に使用することでHIVが耐性を持つことを防ぐ治療法。ARTの導入によって体内のウイルス量を検出限界以下までコントロールすることが可能になり、エイズ発症を遅らせることが出来るようになった。
③HIV感染者の生存率
「HIV検査があなたの命を救います」姉妹サイト「HIV検査完全ガイド」参照