HIV感染症は完治することは出来ませんがエイズ発症を防ぐことは出来るようになりました。

またエイズを発症しても免疫力を回復させることが可能になりました。

それにはいったいどんな薬が使われているのでしょうか。

私が甥っ子の慎太郎に説明ますから、あなたもいっしょに聞いてください。

 

(甥っ子慎太郎)おじさん、HIVに感染したときに使う薬って、どんな薬なんですか? (私)慎太郎、薬は何種類かあるんだよ。だけどその目的は全部一緒なんだ。
陽介 私

(慎太郎)え?HIVの薬は全部同じ目的なんですか?

(私)そうだよ。体内でHIVが増殖するのを防ぐのが目的だよ。

(慎太郎)そうなんだすか。増えるのを防ぐだけじゃなくて殺してしまうことは出来ないんですか?

(私)今のところHIVを殺す薬はないんだよ。だけどHIVが増えるのを防げば免疫細胞がHIVを退治していくからどんどん減っていくんだ。

(慎太郎)あ~、なるほど。でも完全にHIVを退治してしまうことは出来ないんでしょう?

(私)そうだね。残念ながらゼロにすることは出来ない。でも免疫力を回復させることは出来るようになったんだ。

(慎太郎)それでエイズの発症を防いだり、エイズを発症した患者が助かったり出来るようになったんですよね。

(私)その通りだ。

(慎太郎)ではおじさん、そのHIVが増えるのを防ぐ薬ってどんな薬ですか?

(私)抗HIV薬は現在も新しいものが次々と開発されているよ。その種類は大きく分類して5種類あるんだ。

さっきも言ったけど全部HIVが体内で増殖するのを防ぐ薬だね。

(慎太郎)もう少し詳しく教えてもらえますか?

(私)ではHIVがどうやって体内で増えていくかを説明しながら、それを阻止する薬の働きを説明していこう。

(慎太郎)お願いします。

(私)まず、おおざっぱにHIVが体内で増える工程を説明しよう。

まず、HIVはCD4陽性T細胞という、人間の免疫機能の中枢細胞に感染するんだ。

●HIVがCD4陽性T細胞に取り付く。

●細胞膜と融合して内部に逆転写酵素とRNAを放出する。

●RNAデータをDNAデータに書き換える。

●細胞の核に入り込み、HIVのDNAデータを組み込む。

●HIVの部品を作らせる。

●HIVの部品を組み立てる。新しいHIVが大量に作られる。

●HIVはCD4陽性T細胞を破壊して細胞外に飛び出し、次の感染を繰り返す。

だいたい、こんな感じだね。抗HIV薬はこの工程をじゃまして新しいHIVが作れないようにするんだよ。

(慎太郎)うーん、何だか難しくて聞いただけでは分かりませんね。

(私)それじゃおじさんが作った図を見ながらもう一度説明するよ。

(慎太郎)お願いします。

(私)まず、一番最初の工程だね。

HIVはCD4陽性T細胞の表面にあるレセプターと呼ばれる目印をめがけて取り付くんだよ。

そしてCCR5と呼ばれる受容体と結合して細胞内に入り込むんだ。

(慎太郎)レセプターとか受容体とか、意味が分からないんですけど?

(私)レセプターの日本語訳が受容体だ。だから意味は同じだね。

簡単に言えば細胞が外部から情報を取り込むための入り口だね。

まずこのレセプターが外部の物質と接触して反応するように出来ている。

(慎太郎)あちゃー!そんな大事なところにHIVがくっつくんですか!

(私)そうなんだよ。よく例えられるのがカギとカギ穴だねCD4陽性T細胞のカギ穴がレセプターで、HIVはそのカギ穴にピッタリ合うカギを持っているんだよ。

だから内部に侵入出来てしまう。

(慎太郎)うーん、恐ろしいですね。

(私)まず、この段階でHIVが細胞に侵入するのを阻止する薬があるんだ。

これが侵入阻害薬とか、CCR5阻害薬とか呼ばれている薬だよ。

(慎太郎)なるほど。細胞内部に入ってこれなければ増えることもない訳ですね。

(私)では次いくよ。下の図を見てごらん。

HIVが細胞内に入ってくると、逆転写酵素と自分のRNAを放出するんだ。

これは何の為かと言うと、HIVの遺伝子はDNAがなくてRNAしかない。

それで逆転写酵素を使ってRANのデータをDNAのデータに書き換えるんだ。

(慎太郎)ふえ~、何だかよく分からないけど、ずいぶん手の込んだことをするんですね。

(私)全くね。このとき逆転写酵素の働きを阻止する薬がある。

それが図の中にも書かれている、核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)と非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)だ。

薬の作り方は違うけど用途は同じだね。

(慎太郎)なるほど。RNAのデータからDNAのデータを作るのを邪魔するんですね。

(私)そういうことになるね。では次にいくよ。

逆転写酵素によって作られたHIVのDNAは、CD4陽性T細胞の核内に入り込むんだ。

そして元々あったCD4陽性T細胞のDNAの中にHIVのDNAを組み込んでしまう。

(慎太郎)えーー!何ですかそれは!とんでもない恐ろしいことをやりますね!

(私)いわば設計図を勝手に書き換えるようなもんだね。

HIVは自分の力では増殖出来ないので感染した細胞が持っている増殖機能を利用するんだよ。

つまり、宿主細胞のDNAと自分のDNAをすり替えて、自分の新しい部品を作らせるんだ。

(慎太郎)宿主細胞はそれに気が付かないんですか?

(私)そう、気が付かない。細胞の部品を作る工場で、HIVの設計図とも知らずにせっせと部品を作り続けてしまうんだよ。

(慎太郎)なんてこった!HIVてホントに恐ろしいですね!

(私)確かに!知らず知らずのうちに倒すべき敵のコピーを作らされてしまうんだからね。

でも、このDNAを組み込む工程を邪魔する薬があるんだ。

それがインテグラーゼ阻害薬(INSTI)と呼ばれる薬だよ。

(慎太郎)なるほど。DNAの組み込みが出来なければ設計図がないのと同じだから新しい部品を作ることが出来ませんね。

(私)そうだね。では、次いくよ。下の図を見てごらん。

(慎太郎)先程おじさんが説明してくれた工程ですね。

DNAという設計図をかってに書き換えて自分のコピーを作らせるんですね。

(私)そうだよ。そのDNA組み込みを阻害する薬をさっき説明したけど、HIVの部品を作るのを邪魔する薬もあるんだ。

それがプロアテーゼ阻害薬(PI)と呼ばれる薬だよ。

(慎太郎)組み立てを阻害する薬ですね。それなら新しいHIVを作ることが出来ませんね。

(私)その通りだよ。薬としてはここまでなんだけど、HIVが増殖する工程を最後まで説明しておくね。次の図を見てごらん。

宿主細胞の中でHIVの部品を組み立て、次々と新しいHIVが出来ていくんだ。

(慎太郎)うわ~、気持ち悪い!

(私)そして最後だよ。

大量に作られた新しいHIVは宿主細胞を破壊して外に飛び出していくんだ。そして次の目標を見つけてまた感染していく。

これを次々と繰り返していくんだよ。

管理人注記:この記事の作成後に、こんな動画を見つけました。

動画の説明は英語ですが、本記事を読まれた上で動画を見ると、何となくお分かり頂けると思います。

約5分の動画ですが、非常によく出来ていて、HIVが感染して増殖する様子がリアルに分かります。

ぜひ一度ご覧ください。

『HIV Replication 3D Medical Animation』

(慎太郎)はぁ・・・恐ろしいですね。これじゃアッと言う間に天文学的な数字まで増えていきますね。

(私)まぁ、実際には人間の免疫細胞が戦っているからHIVも増える一方じゃない。

ただ、何と言ってもCD4陽性T細胞は人間の免疫機能の中枢細胞だからね。

他の免疫細胞を動かす、いわば司令塔みたいな働きをしているんだ。

その大事な免疫細胞がHIVの標的になって破壊されていくんだよ。

(慎太郎)うーん、それで最後にはHIVの方が勝って増殖し、免疫機能が破壊されてしまうんですね。

(私)その通りだよ。だから途中で説明したような薬を使ってHIVの増殖を防ぐんだ。それじゃ最後に、今説明した抗HIV薬をまとめておこう。

●侵入阻害薬(CCR5阻害薬)・・・HIVが細胞に侵入するのを防ぐ

●核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)・・・逆転写酵素の働きを阻害する。

●非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)・・・逆転写酵素の働きを阻害する。

●インテグラーゼ阻害薬(INSTI)・・・DNAの組み込みを阻害する。

●プロアテーゼ阻害薬(PI)・・・HIVの組み立てを阻害する。

こんなところだね。

(慎太郎)なるほど。でもおじさん、この薬はどれを飲むんですか?まさか全部飲む訳じゃないんでしょう?

(私)むろん、全部飲む訳じゃないよ。抗HIV薬の組み合わせ、服用の仕方はとても重要なんだ。

うまく組み合わせて、正確に服用しないと効き目がない。

(慎太郎)そうなんですか。

(私)でもね、慎太郎。この話の続きを始めるととても長くなるから、今回はいったんここで終わりにして、また次回改めて続きを説明するよ。

(慎太郎)分かりました。今回は抗HIV薬の紹介で、次回が使い方と言う訳ですね。了解です。

(私)それじゃこれでお終い。

(慎太郎)おじさん、ありがとうございました。

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