HIVには、HIV-1とHIV-2の2種類があります。
日本ではHIV-1がほとんどで、HIV-2はこれまでに数件しか報告されていません。
しかし、感染の可能性がゼロではないことから、全国の保健所や医療機関などのHIV検査では必ずHIV-2も検査を行っています。
では、HIV-2の検査のタイミングはいつでしょうか?
HIV-1と同じなのでしょうか?
私が調べたことを甥っ子の慎太郎に説明するので、ぜひあなたもいっしょに聞いて下さい。
(甥っ子慎太郎)おじさん、HIV-2の検査っていつから出来るんですか? |
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(私)慎太郎、それは検査方法によって違ってくるよ。 |
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(慎太郎)HIV-2の検査可能時期って検査方法で違ってくるんですか?
(私)そうだよ。それはHIV-1だって同じことだ。ただし、保健所でも病院でもHIV-2のスクリーニング検査は抗体検査しかやってない。
(慎太郎)抗体検査のみですか。
(私)そうだよ。そして抗体検査だと検査可能時期は感染の可能性があった日から3ヶ月経ってからの検査になるね。
(慎太郎)なるほど。抗体検査は3ヶ月ですね。
(私)次にHIV-2で抗体検査以外にどんな検査方法があるかだ。ちなみにHIV-1だと抗体検査の他にどんな検査方法がある?今までに教えてきたよね?
(慎太郎)え~っと・・抗体検査の他って言うと・・抗原検査にNAT検査ですね。
(私)その通り。抗原検査はHIVの一部であるタンパク質を調べ、NAT検査はHIVの核酸を増幅して調べる検査だったね。
しかしどちらもHIV-1のみ検査が可能だ。さっきも言ったけどHIV-2はやっていない。抗体検査のみだ。
(慎太郎)HIV-2は抗原検査やNAT検査は全くやれないんですか?
(私)いや、そんなことはないよ。スクリーニング検査ではHIV-1しかやらないけど、例えば献血で集めた血液はHIV-2もNAT検査をやっている。
(慎太郎)そうなんですか。それでHIV-2のNAT検査はどのくらいの時期から検査可能になるんですか?
(私)それがね、実ははっきりしない。HIV-1のNAT検査だと感染の可能性があった日から11日経てば検査可能と言われている。
(慎太郎)はい、前にそう教えてもらいましたね。
(私)ところがHIV-2についてはデータが見つからない。そもそも普通の医療機関ではHIV-1しか検査していないからデータもない。
HIV-2をNAT検査してるのは献血をやっている日赤血液センターだけだ。でも日赤のホームページ上には検査可能時期について具体的な説明は何もない。
当然、抗体検査よりはずっと早いはずだけど、それがいつなのかは分からない。
献血を検査代わりに使われると困るから、敢えて公表していないのかも知れないけどね。
(慎太郎)なるほど。HIV-2は抗体検査では3ヶ月、NAT検査ではハッキリとは分からないけど、かなり早期の検査が可能ってことですね。
ではHIV-2の抗原検査はどうなんですか?
(私)いや、それがね、HIV-2の抗原検査ってのが全くデータが見つからない。私の持っている専門書にも医療機関のホームページにも、全く出てこない。
(慎太郎)そうなんですか。
(私)HIV-1では抗原検査が可能なのに、HIV-2は出来ないのか。あるいは、技術的には可能だけどやらないだけなのか。
それも分からない。
普通に考えて、抗原検査が費用もそんなに掛からず、時間や手間もかからないならとっくにやっていると思うよ。
(慎太郎)HIV-2の感染例がごくわずかってこともあるんでしょうね。
(私)確かにね。私の記憶では日本でHIV-2の報告例は5件とか7件くらいだったと思うよ。
(慎太郎)今までのおじさんのお話だと、HIV-2の検査は抗体検査のみで、感染の可能性があった日から3ヶ月経って検査可能になるってことですね。
(私)その通りだよ。
(慎太郎)ところでおじさん、つい最近なんですが、ネット情報でこんなのを見つけました。
「HIV-1の抗体生成は感染後2ヶ月かかり、HIV-2の場合は3ヶ月かかる。」
これって本当なんですか?
(私)これは間違いだと思うよ。どの専門書、医療サイトを見ても抗体の生成時期でHIV-1とHIV-2に差があるなんて見たことない。
(慎太郎)そうですか。
(私)私が思うに、そんなふうに勘違いしたのはHIV-1では抗原検査が可能だからだと思うな。
つまり、HIV-1は2ヶ月目で検査可能、HIV-2は3ヶ月目で検査可能、これを抗体生成時期と間違ったんじゃないかな。
(慎太郎)なるほど。HIV-1かHIV-2かと言う問題じゃなくて、実は抗原抗体検査か、抗体検査かと言う問題な訳ですね。
(私)うん、そうじゃないかと思うな。
(慎太郎)なるほど、分かりました。でもおじさん、そうすると保健所や病院で2ヶ月経っていれば検査可能としているのは、HIV-1のみでHIV-2は検査していないってことですか?
(私)いやいや、勿論そうじゃないよ。HIV抗体検査の検査可能時期を3ヶ月後に設定してあるのは相当余裕を見ている。
実は2ヶ月経っていればかなりの人はすでに抗体が出来てるんだ。
だから2ヶ月目でもHIV-2が全く検査出来ない訳じゃない。ある程度は検査可能なんだよ。
でも、より安全を期す意味で3ヶ月にしてる。
更にHIV-2の場合はそもそも日本では過去に数件の報告しかないし、最後にHIV-2の感染者が見つかったのは2008年だ。
それ以降10年近く見つかっていない。
そんなこともあって2ヶ月設定にしているんだと思うよ。
(慎太郎)なるほど、HIV-2に感染する可能性が極めて低く、なおかつ2ヶ月後でもそれなりに感染していれば見つけることが可能ってことですね。
(私)そうだね。厚生労働省の関連サイトである、「HIV検査相談マップ」では、
『抗体検査では1か月以上経過していれば、感染している場合には検査で陽性となる可能性が高いです。』
と書かれているよ。「可能性が高い」と言う表現が、具体的にどのくらいかは分からない。
でも、「高い」と言うのだから、普通に考えれば70%、80%以上はあるってことだよね。
(慎太郎)確かにそうですね。
(私)それじゃ今回の話をまとめてもらおうかな。
(慎太郎)はい。
●HIV-2の検査は抗体検査しかない。(献血のNAT検査ではアリ)
●HIV-2の抗体検査は感染の可能性があった日から3ヶ月経過して受けるのが望ましい。
●しかし、2ヶ月目で検査を受けても十分受ける価値はある。
●HIV-1とHIV-2で抗体生成時期に差はない。どちらも3ヶ月経過して検査を受けるのが望ましい。
●HIV-1は抗原抗体検査によって2ヶ月後でも信頼性の高い検査が可能。
こんなところでしょうか。
(私)最後に結論を言うと、HIV検査を受けるときは検査実施機関に検査のタイミングを確認することだね。
(慎太郎)でもおじさん、それってこちらから聞かなくても、検査員の方から確認されますよね。
(私)その通り。あまり心配する必要はないよ。
では、今日はこの辺で終わりにしよう。
(慎太郎)おじさん、ありがとうございました。