HIV検査の感度と特異度とは、何を意味しているのでしょうか?あなたがHIV検査を受ける時の参考にして下さい。

私が調べたことを甥っ子の陽介に説明します。ごいっしょに聞いて下さい。

(甥っ子陽介)おじさん、HIV検査の感度と特異度って、何の意味ですか? (私)陽介、それはね検査ではとても大事な数値だよ!
陽介 私

(陽介)そうなんですか?感度と特異度、どんな意味なんですか?

(私)それはどこで見たんだい?

(陽介)国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センターのホームページを見ていたら出て来たんですね。でも、僕には感度と特異度の意味がよく分からなくて・・・

(私)そうか。感度とか、特異度って言うのは別にHIV検査に限らず使われる用語なんだよ。

(陽介)へえ、そうなんですか。それでどんな意味なんですか?

(私)うん、HIV検査の場合で分かりやすく説明すると、こうだね。

●感度とは
HIVに感染している人を見落とさずに陽性判定する確率のこと

●特異度とは
HIVに感染していない人を間違いなく陰性判定する確率のこと

こんな説明になるね。

(陽介)あ~、そういう意味だったんですか。な~るほど、それで分かりました。

(私)陽介が見たホームページ上で、HIV検査の感度、特異度はいくらになっていた?

(陽介)はい、感度が99.9%、特異度も99.9%って書いてありました。

(私)ふ~んそうか。それは多分、保健所や病院でやってるスクリーニング検査の、ELISA法だね?

(陽介)そうそう、そうです。ELISA法って書いてありました。

(私)それはさっきも言ったけど、現在保健所や病院でスクリーニング検査として使われているHIV抗体検査の一種だよ。血液を採取してHIV抗体を調べて感染を判定するんだ。とても精度が高くて広く使われてる。

(陽介)でもおじさん、感度が99.9%、特異度が99.9%ってことは、つまり、HIVに感染している人を見落とさずに陽性判定する確率が99.9%、HIVに感染していない人を陰性判定する確率が99.9%ってことですよね?

(私)う~ん、そうなんだけど、単純にそれだけの意味じゃない。ちょっと私が調べたことを説明しよう。

(陽介)はい、お願いします。

(私)まず、感度からだね。さっきも言ったけど、感度とは病気になっている人を陽性と判定する確率だね。だから感度が高い検査というのは、病気の人を見落とさずに陽性判定出来る可能性が高い検査と言える。ここまでは分かるよね?

(陽介)はい、分かりますおじさん。

(私)しかし、感度が高い検査は同時に病気でない人まで陽性判定してしまう可能性が高い検査とも言える。本当は病気じゃない人まで陽性判定すること、つまり偽陽性が出やすい検査とも言えるわけだ。

(陽介)あ~、何となく分かります。感度が高すぎると偽陽性が出やすくなるんですね。

(私)そうだよ。HIV検査のスクリーニング検査がそうだね。前にそれを説明したよね?

(陽介)はい、覚えています。だからスクリーニング検査で陽性になってもHIV感染が確定するわけではなく、更に確認検査を受ける必要があるんですね。⇒補足資料①

(私)その通り。だから、感度の高い検査で陽性になっても、それで陽性が確定する訳ではなく、確定検査には使えない。今陽介が言ったように、次のステップとして確認検査が必要になる。

(陽介)はい。それも分かります。

(私)しかし、そんな陽性判定になりやすい検査で、陰性になったとしたら?それはどういうことを意味してる?

(陽介)え~っと・・・陽性判定が出やすい検査で、陰性になったら・・・。それは本当に病気じゃない、陰性の信頼性が高いってことですね?

(私)その通りだよ。だからHIV検査のスクリーニング検査で陰性判定が出たら、HIVには感染していないと安心できる訳だね。偽陰性は出にくい検査だって言える。

(陽介)なるほど。分かります。

(私)それじゃ、次は特異度だね。こちらはさっきも説明したけど病気じゃない人を正しく陰性と判定する確率だね。

(陽介)はい。

(私)つまり、特異度が高い検査は病気じゃない人をより陰性判定する可能性が高い検査ということになる。本当は病気じゃないのに、陽性にしてしまう可能性が低いってことだ。分かるね?

(陽介)はい、分かります。

(私)ところが、特異度が高い検査は同時に本当は病気の人まで陰性判定をしてしまう可能性が高い検査とも言える。

(陽介)つまり偽陰性の可能性が高くなるってことですか?

(私)そうそう、その通り。だからそんな陰性になりやすい検査でもしも陽性判定になったとしたら?

(陽介)え~っと、それは本当に病気である可能性が高いってことですね。

(私)そうだね。つまり偽陽性は出にくい検査だって言える。

(陽介)なるほどです。感度と特異度の持つ意味がよく分かりました。感度が高い検査は陰性が信用出来て、特異度が高い検査は陽性が信用出来るってわけですね。

(私)まぁ、簡単に言えばそうだね。

(陽介)それじゃ、HIV抗体検査、ELISA法の感度99.9%、特異度99.9%は両方とも非常に高い値ですね。

(私)そうだね。実際にこの感度、特異度で検査後の確率が計算できるんだよ。こんな計算式になる。

検査後確率=(検査前確率☓感度)/((検査前確率☓感度)+(1-検査前確率)×(1-特異度))

(陽介)うわぁ!何だか難しい計算式ですね!サッパリわかりません。

(私)そうだなぁ、ちょっと難しいかな。この式で求めているのは、この検査で陽性になった場合、本当に病気である確率だよ。それを検査後確率と呼んでいる。

(陽介)それじゃ検査前確率って何ですか?

(私)一般に言う、有病率だね。その病気にかかっている人の数を単位人口で割った値だよ。つまり、その単位人口の中に病人が存在する確率だね。実際の統計などから計算するんだ。

(陽介)HIV感染症の場合では有病率はどのくらいなんですか?

(私)これは単位人口をどの母集団に設定するかで違ってくるね。一番分かりやすいのは厚生労働省の関連サイトで公開しているデータかな。それによると平成25年の時点でHIV感染者は人口10万人当り12.4人となってる。(エイズ患者を除く)⇒補足資料②

だから有病率としては、(12.4/100,000)×100%=0.0124%だね。

(陽介)はい、検査前確率が0.0124%ってことですね。そうすると、これで検査後確率が計算できますね?

(私)そうだね、さっきの数式に当てはめてみればいいね。陽介計算してごらん。

(陽介)はい、ちょっと待ってくださいよ。え~っと・・・・。ハイ!計算できました。検査後確率は11%になります。

(私)なるほどね。そうすると保健所や病院でスクリーニング検査を受けた場合、陽性判定を受けても本当に陽性である確率は11%ってことになるね。仮に10人が陽性判定を受けたら、本当にHIVに感染している人は1人で、後の9人は感染していない、偽陽性ってことになるね。

(陽介)う~ん、おじさん、これっておかしくないですか?

(私)どこがおかしい?

(陽介)前に教えてもらったHIV抗体検査の偽陽性発生率って、こんなに高くなかったと思うんですけど。

(私)あ~、『HIV検査の偽陽性とは?』で話した内容だね?

(陽介)そうです。その時の説明では、確かHIV抗体検査の偽陽性は50%~77%だったはずです。でも今の計算では偽陽性の発生率は89%になってしまいます。

(私)確かにね。それは計算の前提としている検査前確率、有病率が違うからだよ。国内全体を母数として計算するのと、保健所でHIV検査を受けた人だけを母数にして計算するのとでは当然有病率が変わってくるよね。

(陽介)なるほど。保健所にHIV検査を受けに来る人の方が有病率が高くて、偽陽性が出る確率が低い訳ですね。

(私)その通り。当然そうなるよね。わざわざ保健所までHIV検査を受けに来るくらいだから、何かHIV感染に心当たりのある人も多いだろうし、結果として本当にHIVに感染している確率も高くなる。

だから日本人全体での偽陽性の確率が89%であるのに対して保健所でHIV検査を受けた人の偽陽性の確率は50%~77%と低くなる。それだけ実際にHIVに感染している可能性が高いってことだね。

逆に有病率が低い場合の検査では偽陽性が出やすくなる。もともと本当の感染者が少ないわけだからね。

(陽介)はい、良く分かりました。

(私)まぁ、実際に私や陽介が保健所や病院でHIV検査を受けるとき、感度や特異度を気にする必要はないね。ただ、スクリーニング検査では偽陽性が出る可能性がある、確認検査を受けるまではHIV陽性は確定しない、これだは知っておく必要がある。

(陽介)分かりました。

(私)では、今回の話はここまで。

(陽介)おじさん、ありがとうございました。

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補足資料

①『HIV検査の偽陽性とは?』

『HIV検査の偽陰性とは?』

②『平成25年(2013年)エイズ発生動向年報』