HIV抗体検査にも世代交代があるのをご存じですか?現在、保健所や病院でスクリーニング検査として行われているHIV抗体検査は第四世代まで進んでいます。
では、HIV抗体検査がどのように世代交代を行ってきたのか、私の調べたことを甥っ子の陽介に説明しますので、あなたもごいっしょに聞いて下さい。
(甥っ子陽介)おじさん、HIV検査の世代交代って、何ですか? | (私)陽介、それはね、HIV検査の進歩の歴史だよ。 |
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(陽介)そうなんですか。よく、「第三世代のHIV検査」とか、「第四世代のHIV検査」とか聞くんですけどね。
(私)そうだね。日本の保健所でHIV検査が始まったのが1987年だ。それが第一世代のHIV検査だね。
(陽介)そうなんですか。もう27年も前のことですね。
(私)その27年間の間にHIV検査の技術も進歩して、第一世代から現在では第四世代まで進んでいるんだ。
(陽介)第四世代が一番新しいんですね。
(私)そうだよ。それじゃここで、第一世代から第四世代まで、分かりやすく表にしたものがあるから、それを見ながら説明しよう。
◇世代別 HIV検査
検査項目/対象 | 第一世代 | 第二世代 | 第三世代 | 第四世代 |
HIV-1 | ○ | ○ | ○ | ○ |
HIV-2 | × | ○ | ○ | ○ |
IgG抗体 | ○ | ○ | ○ | ○ |
IgM抗体 | × | × | ○ | ○ |
p24抗原 | × | × | × | ○ |
ウインドーピリオド | 35~45日 | 25~35日 | 20~30日 | 15日~20日 |
「HIV/AIDS患者のトラブルシューティングとプライマリケア」(南山堂)を参考にさせて頂きました。
(陽介)はは・・・これがHIV検査の世代交代ですね。なるほどです。
(私)少し説明しよう。これは保健所や病院でスクリーニング検査として使われているELISA法というHIV抗体検査だ。
感度が非常に高いのが特徴で、それゆえスクリーニング検査として使われているんだ。
(陽介)感度が高いってことは、ちょっとでも怪しい人を見逃さず陽性に分類できるってことですね。
(私)そうだね。この前に『HIV検査の感度と特異度とは?』で教えてたよね。
(陽介)はい。覚えてます。
(私)それじゃ、まずは第一世代から見ていこう。1987年に保健所でHIV抗体検査が始まったとき、HIV-1だけの検査でHIV-2は検査出来なかったんだよ。
(陽介)そうなんですね。でも、HIV-2は日本ではほとんど見られないんでしょう?
(私)まぁそうだね。おじさんの知ってる限りでも5件か6件くらいしか報告されていないと思うよ。
⇒補足資料①
(陽介)それからHIV抗体検査で見つける抗体って、IgGとIgMの2種類があるんですね?
(私)そうだね。前に、『これってHIV感染症の初期症状かな?』と言う話のときに説明したよね。
(陽介)そうでした。覚えてます。抗体の種類には、IgG、IgM、IgD、IgA、IgEの5種類があって、HIV抗体検査ではこのうちのIgGとIgMの2種類を検出するんですよね。
(私)そうだ。そして第一世代のHIV抗体検査ではIgGのみ検出してた。
(陽介)はい。第一世代のHIV抗体検査ではHIV-1のみ検査出来て、検出する抗体としてはIgGのみだった訳ですね。
(私)そうだね。そしてそれが第二世代になると、HIV-1だけじゃなくてHIV-2も検査できるようになったんだ。
HIV-2は報告件数としては少ないけど、やはり検査しないと不安だよね。
(陽介)そうですね。万一感染者を見逃してしまうと二次感染が広まって大変なことになりますね。
(私)さて、第二世代のHIV抗体検査からHIV-2も検査できるようになって、更に第三世代のHIV抗体検査からは、IgGに加えてIgMも検出できるようになった。話は第三世代へと移るよ。
(陽介)おじさん、第三世代になってIgMも検出できるようになったメリットは何かあるんですか?
(私)もちろんあるよ。人間の体内ではIgGより先にIgMが生成されるんだよ。と、言うことは?陽介にもわかっただろう?
(陽介)はい!早くHIV抗体検査が可能になるってことですね?
(私)その通りだよ。HIV抗体検査はHIV感染によって体内で生成される抗体を見つける検査だ。
いくらHIVに感染していても抗体が生成されていなければ陽性判定にすることが出来ない。
だからより早く生成されるIgMを検出できるようになったことは大きなメリットだね。
(陽介)ウインドーピリオドが短く出来るってことですね。⇒補足資料②
(私)そうだね。では次はいよいよ第四世代のHIV抗体検査だ。今のところこの第四世代が一番新しい検査方法だ。
(陽介)第三世代とはどこが違うんですか?
(私)表を見て分かる通り、検出する対象が、第三世代までのIgG、IgMという2種類の抗体に加えて、p24という抗原も検出できるようになったんだ。
(陽介)p24抗原っていったい何ですか?
(私)p24抗原とはHIVというウイルスの部品の一部なんだよ。IgGもIgMもあくまで抗体であって、直接HIVそのものを検出してた訳じゃない。
しかし、p24はHIVのタンパク質の一部であり、直接ウイルスを検出するんだ。
(陽介)なるほど。HIV抗体だけじゃなく、HIV抗原も見つけるってことですね。
(私)その通り。だから第四世代のHIV検査は抗体検査じゃなくて、抗原抗体検査なんだね。
(陽介)それじゃおじさん、p24抗原を検出するメリットは何ですか?
(私)うん、これがまたウインドーピリオドの短縮なんだよ。HIVに感染した人の体内では、HIV抗体よりも先にHIV抗原が現れるんだ。
すなわち、抗体を見つけるより抗原を見つける方が早く検査が可能になるってわけだ。⇒補足資料③
(陽介)なるほど。HIVに感染した人の体内では、p24抗原、IgM、IgGの順に体内に現れるってことですね。
(私)そうなんだ。だから早く体内に現れるものを見つけるようにすれば、それだけ早期のHIV検査が可能になるってことだね。
(陽介)でもおじさん、HIV検査ではHIV-1とHIV-2の2種類とも検査していますよね。p24抗原はどちらのHIVにも現れるんですか?
(私)うん、いい質問だね!実は第四世代のHIV検査で検出できる抗原はHIV-1のp24抗原だけで、HIV-2の抗原は検査出来ない。
だからHIV-2については第三世代までと同じで抗体検査なんだ。
(陽介)そうなんですか。まぁ、それでも日本の場合はほとんどがHIV-1の感染なので、それでも大きなメリットですね。
(私)そうだね。
(陽介)うーんと、その話もふまえてなんですけど、おじさんが見せてくれた表のウインドーピリオドって、ずいぶん短いように思うんですけど?
例えば、第四世代のHIV検査ではウインドーピリオドが15日~20日になってますけど、こんな短いウインドピリオドで検査してくれる保健所や病院はないと思うんですけど。
(私)確かに陽介の言う通りだね。この表のウインドーピリオドは「HIV/AIDS患者のトラブルシューティングとプライマリケア」(南山堂)と言う本に示されているんだ。
実際の運用にあたっては保健所や病院がもっと個人差を考慮して余裕を持ってるね。
それでも保健所のHIV検査でウインドーピリオドを従来の90日から60日に短くしている所が多くなったのは第四世代の導入によるものだと思うよ。
それと第四世代ではさっきも言ったけどp24抗原の検査はHIV-1しか出来ない。
だからHIV-2まで考えるとHIV抗体が現れるまで待つ必要があるから、どうしてもウインドーピリオドが長くなるんだと思う。
(陽介)なるほど、絶対に間違いないHIV検査を行うため、ウインドーピリオドにはかなり余裕を持ってる訳ですね。
(私)そうだね。本当はHIVに感染している人が、ウインドーピリオド中に検査を受けて陰性判定を受け、自分はHIVに感染していないと信じてしまったら大変なことになるらかね。
(陽介)その人も危ないし、他の人にうつしてしまう危険性もありますね。
(私)それに、HIV感染症そのものが、1ヶ月や2ヶ月で急激に重症化することもないしね。検査の時期を少しのばしても問題ないんだ。
(陽介)それより正確な検査を受けることの方が大事ってことですね。
(私)そうだね。だからどうしても早くHIV検査を受けたい人は、取りあえずウインドーピリオド中に受けてもいいけど、必ず再検査を受けることが条件だね。
(陽介)はい、よく分かりました。
(私)では陽介。今回のおじさんの話をまとめてくれないか。
(陽介)はい。日本のHIV抗体検査は1987年から始まり、現在第四世代まで世代交代が進んでいます。
第一世代ではHIV-1しか検査出来なかったけど第二世代以降はHIV-2も検査可能になりました。
また、HIV検査で見つける対象も最初はIgG抗体だけでしたが、順次IgM、p24抗原と増えていき、その結果ウインドーピリオドが短くなりました。
第四世代のウインドーピリオドは15日~20日まで短くなっていますが、保健所や病院では個人差も考慮した設定で検査の案内をしています。
(私)うん、そんなとこだね。では今回の話はこれで終わりだよ。
(陽介)おじさん、ありがとうございました。
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補足資料
②『HIV検査とは?HIV検査の受け方とは?』
(ウインドーピリオドの説明があります)
③IgG・IgM・p24の出現する時期