私は数年前に深刻なHIV感染疑惑に陥りました。そしてHIV検査が怖くて保健所になかなか行けませんでした。

結局、3ヶ月かかってやっとの思いでHIV検査を受けることが出来ました。

その3ヶ月の間、

「もしもHIVに感染していたら・・・」

そればかり考え続けていました。

そしてHIVに感染した人たちのブログを読んだり、医療機関のサイトを見たりして、もし自分がHIV陽性告知を受けたら、その後どうなるのかを調べました。

かなり高い確率でHIVに感染していると思っていたので心の準備をしていたのです。

幸い、私はHIVには感染していませんでした。

では、もしも私がHIV陽性の告知を受けていたら・・・・。それを私の甥っ子陽介に話したいと思います。

(甥っ子陽介)おじさん、もしもHIV陽性を告知されたら、その後はどうなるんですか? (私)陽介、それはね専門のスタッフがフォローしてくれるよ。
陽介 私

(陽介)もしも僕が保健所や病院でHIV検査を受けて、その結果が陽性だったらどうすればいいんでしょうか?

(私)そうだね。まず、陽介にHIVの告知を行う人が、そこから先のことを一通り説明してくれるはずだ。それでまず、陽介が大まかなイメージをつかめるように説明してくれるよ。

(陽介)そうなんですか。いったいどんなことを説明してくれるんですか?

(私)おじさんは前にHIVに感染した人たち239人にアンケート調査を行った報告書を読んだことがある。そのアンケートによると、こんな説明があったそうだ。

●今後の治療を受けるために専門病院の紹介。

●HIV感染症はちゃんと治療を受ければ死ぬ病気ではなくなっていること。

●これからも今までと同じような日常生活を送れること。

●何も自覚症状がなくても定期的に通院する必要があること。

●今後も仕事や学校を続けることが出来ること。

●色んな医療費の支援制度が利用出来ること。

●今後の治療方法と、必ずしもすぐに薬を飲み始めなくてもいいこと。

●副作用が軽減される薬が開発されていること。

●日常生活の中で他の人にHIVを感染させることはないこと。

●色々な支援団体や、HIV陽性者の団体があること。

●家族や職場の人たちに、必ずしも自分のHIV感染を伝えなくてもいいこと。

●恋愛、結婚、出産をあきらめなくてもいいこと。

こういったことを説明してくれるんだよ。

(陽介)うわー、いっぱいありますね。もしも僕だったら、一度にこんな沢山の話をされたらパニックになるかも入れません。

(私)もちろん一度に全てを理解する必要はないよ。おじさんだって無理だ。たぶん、HIV陽性という事実を自分が受け止めるだけでいっぱい、いっぱいになると思うよ。

(陽介)そうですよね。時間をかけて少しずつ理解していくしかないですよね。

(私)もしもおじさんがHIV陽性を告知されたとしたら、一番心配なのは誰か他の人にHIVをうつしていないかってことだね。自分の配偶者とか、恋人とか、ともかく一度でも性行為を持った相手はHIVが感染している可能性があるからね。

(陽介)うーん、そうですよね。もしも自分が告知されたら、そうした関係の相手には教えてあげた方がいいですよね。もしも感染していたら大変ですからね。HIV検査を受けるように言った方がいいですよね。

(私)そうだね。ただ、日本では自分がHIVに感染していると分かったとき、性的関係を持った相手に教える法的義務はない。あくまでも自分の判断に委ねられているんだよ。

(陽介)そうなんですか。保健所や病院から知らせることはないんですか?

(私)ないね。HIVに感染していることを本人の了解なしに家族や職場、学校に連絡することはないよ。これは最も慎重に扱われるべき個人情報だからね。

(陽介)そうなんですか。でも、そしたら中には自分がHIVに感染していたことをパートナーに教えない人が出てくるんじゃないですか?

(私)可能性はあるね。でも、それを強制的に知らせることは出来ないんだよ。そこはよく専門家が本人と話すしかないね。

(陽介)うーん、そうですね。僕だったら、どこまでの人に話すだろう。考えますね。

(私)それからもう1つすぐに気になるのが医療費だね。いったい治療に毎月どのくらいお金が要るのが気になるよ。

(陽介)そうですよね。HIVを治療する薬は高そうですね。

(私)まぁ、全額自己負担で払う訳じゃないからね。でも薬が高いのは事実だし、普通の病気みたいに健康保険だけ使って3割負担だと、到底払いきれないと思うよ。

(陽介)いったいどのくらいお金が必要なんですか?

(私)それは症状や進行具合にもよるし、一概には言えないね。おじさんが調べた限りでは、薬を処方される段階では毎月20万円くらいかかるらしいよ。

(陽介)うわー!毎月20万円ですか。健康保険だけの利用だと毎月6万円かかる訳ですね。

(私)そういうことになるね。それはよほど経済的に余裕のある人しか払えないよね。

(陽介)そうですよ!僕には毎月6万円なんて絶対に払えません!

(私)まぁまぁ、そうあせるなよ。さっきも言ったけど医療費については色んな支援制度の利用が出来るんだよ。むろん、私たちは日頃そんな知識も情報もないから専門家が相談に乗ってくれるよ。

(陽介)そうですか。でも、やっぱり現実問題としてお金のことは気になりますよね。

(私)そうだね。かつてHIV感染症は致死的疾患で、感染すればほぼ間違いなく死ぬ病気だった。それが今では治療を受ければエイズの発症を抑え、長生きできるようになった。すると今度は医療費の問題や副作用の問題、家庭や職場での対応の問題などが出てきたんだね。

(陽介)なるほど。長期の治療になって新たな課題も出てきた訳ですね。

(私)そうなんだよ。でも、それは考えようによってはいいことだよね。生きて治療を受ければこその課題だと思うからね。むろん、治療は決して楽じゃないし、大変だとは思うけど。

(陽介)おじさん、僕はもう少し詳しく告知後のことを知っておきたいんですけど。

(私)分かったよ。それならおじさんが話すよりも、こちらのサイトを見てもらった方がいいと思うよ。

『HIV陽性と分かったばかりの人へ』

『HIVマップ 陽性とわかったばかりの人へ』

これらのサイトには直接電話で相談できる窓口の案内があったり、すでにHIV陽性を告知された人の体験記などもあるんだよ。

(陽介)はい、分かりました。さっそく見てみます。

(私)それじゃ、今回はこの辺でお終いにしよう。

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