性行為でHIVに感染するリスクを増す要因、減らす要因について調べてみました。
甥っ子の慎太郎に話しますので、あなたもいっしょに聞いて下さい。
【今回のテーマと内容】 ・ ●テーマ:性行為でHIVに感染するリスクを増す要因、減らす要因 ・ 1.感染リスクを増す要因 ・ 2.感染リスクを減らす要因 ・ 3.まとめ ・ |
(甥っ子慎太郎)おじさん、今日のお話はどんなことですか? |
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(私)慎太郎、今日はねHIVに感染するリスクを増す要因と減らす要因について話そうと思う。 |
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(慎太郎)HIVに感染するリスクを増す要因と減らす要因ですか?
(私)その通り。
(慎太郎)へぇ、そんな要因があるんですか?
(私)あるよ。前にこんな話をしたのを覚えているかい?
どうかな?
(慎太郎)あ~、ありましたね、そのお話!
確か、クラミジアとか淋菌、梅毒に性器ヘルペス、こうした性感染症に感染すると患部が炎症を起こしたり潰瘍を起こしたりして、そこからHIVが感染しやすくなるってお話でしたよね。
(私)そう、その通りだ。
普通の健康な人に比べると、そうした性感染症に感染している人は数倍から数十倍も感染確率が高くなるって話だったよね。
(慎太郎)今回もそのお話の続きですか?
(私)そうだね、性感染症の感染に限らず他の要因も話そうと思う。それに、HIV感染の可能性を減らす要因についてもね。
(慎太郎)はい、ぜひお願いします。
(私)今回の情報はこちらのサイトからだよ。
このハンドブックは厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業の一環として公開されたものだよ。
ハンドブックの中に、性行為によるHIV感染のリスクを高める要因、減らす要因と言うのが説明されている。
それを表にしたものがこれだ。
■性行為によるHIV 感染の相対危険度の増減因子
因 子 | 相対危険度 |
感染確率が上昇する場合 | |
HIVウイルス量が高値 | 2.89 |
陰部に潰瘍病変の存在 | 2.65 |
急性 HIV 感染期 | 7.25 |
感染確率が減少する場合 | |
HIV 陽性者による抗ウイルス薬の内服 | 0.08 |
HIV 陰性パートナーによるPrEP(ヘテロセクシュアル | 0.29 |
HIV 陰性パートナーによるPrEP(MSM) | 0.56 |
HIV 陰性パートナーによるPrEP(薬物使用者) | 0.52 |
コンドームの使用 | 0.2 |
(慎太郎)う~ん、この表をちょっと見ただけでは意味がよく分かりません。
(私)そうだろうな。それじゃ順番に説明しよう。
まずはHIV感染のリスクを高める要因だ。
●HIVウイルス量が高値 2.89倍
●陰部に潰瘍病変の存在 2.65倍
●急性 HIV 感染期 7.25倍
この3つだね。
(慎太郎)うーん、ウイルス量が高値って・・・。体内のHIVの量のことですか?
(私)ズバリ、その通り!ひと口にHIV陽性者と言っても、体内のウイルス量、すなわちHIVの量は様々だよね。
HIVに感染した直後の人と、すでに抗HIV治療を受けて順調に治療が進んでいる人では、全くウイルス量が違うんだよ。
(慎太郎)なるほど。当然、体内のウイルス量が多い人の方が感染リスクも高い訳ですね。
(私)そうだね。例えば、 エイズ治療・研究開発センターのホームページに掲載されているHIV陽性者の事例では、治療前の患者のウイルス量は、HIV-RNA量で100万コピー/ml近い人もいる。
それが治療が順調に進むと50コピー/ml以下になっていく。このウイルス量の差はそのまま感染リスクと直結しているよね。
(慎太郎)おじさんが前に何度か説明してくれた、早期のHIV治療開始は二次感染防止に役立つと言うお話ですね。
(私)その通り。早期治療は患者本人の治療効果も大きいけど、社会全体で見ると感染防止に役立という事だね。
(慎太郎)でもおじさん、「ウイルス量高値」って、どのくらいなんですか?
(私)それが残念ながらハンドブックの中では具体的数値が示されていない。
(慎太郎)その数値が示されていないのに、相対危険度が2.89倍と言うのも分かりにくいですね。
(私)慎太郎の言う通りだと私も思う。2.89倍なんてかなり細かい倍率が出ているのに、その基準値が不明ってのもどうかと思うけどね。
(慎太郎)要するに、同じHIVに感染している人との性行為でも、体内にHIVの量が多い人は少ない人と比べると、3倍近い感染リスクがありますってことですね。
(私)そうだね。「多い」って言うのがどのくらいの量かは分からないけどね。
(慎太郎)それから次の要因、「陰部に潰瘍病変の存在」って、これは前におじさんが話してくれた性感染症によるものでしょう?
(私)そうだね。梅毒や性器ヘルペスに感染すると陰部に潰瘍ができることがある。
(慎太郎)その場合は潰瘍のない人に比べて2.65倍に感染リスクが高くなってことですね。
(私)そうだね。ただし、陰部に潰瘍が出来た場合の感染リスクはもっと高くなるとした専門家もいるよ。
例えば、「ストップHIV/AIDS 岡 慎一 少年写真新聞社刊」(2006年)の中にはこう書かれてある。
「性感染症による粘膜局所(性器の粘膜部分)に炎症があると、正常な場合の2倍から5倍感染しやすい。更に潰瘍(かいよう)があると50倍から 300倍感染しやすい。」
何と300倍だそうだ。
(慎太郎)う~ん、2.65倍とはえらい違いですね。
(私)だから、これもひと口に「陰部の潰瘍」と言っても、どの程度の潰瘍かによって感染リスクも違うよね。
(慎太郎)それはそうでしょうね。
(私)要するに炎症や潰瘍があると、そこからHIVが感染しやすくなり、何倍も感染リスクが高くなるって理解だね。
(慎太郎)はい。分かりました。それから、お次が「急性 HIV 感染期 7.25倍」ですか。
(私)これは以前、「HIV RNA量ってなに?」と言う話をしたよね。覚えているかい?
(慎太郎)はい。HIVに感染した後に体内でHIVがどう増えていくかってお話でしたね。
(私)その通り。前にも話した通り、HIVに感染して1週間から2週間くらいすると、体内のHIV-RNA量は100万コピー/mlを超えて、500万コピー/mlまで増えることもある。
(慎太郎)そうでしたね。
(私)そしてこの時期はまだHIV検査が出来ず、しかも非常にウイルス量が多くて感染しやすいと言う、やっかいな時期だ。
(慎太郎)なるほど。急性期の感染リスクは7.25倍ってことですか。
(私)ハンドブックにはそう書かれているね。これもまた、急性期にどのくらいHIVの量が増えたかでリスクは変わるよね。
(慎太郎)そうですね。100万なのか、500万なのか、それによってリスクも変わりますよね。
(私)残念ながら、急性期とあるだけで具体的なウイルス量は示されていない。
(慎太郎)じゃぁ、ここもHIV感染の急性期はHIV感染リスクが何倍も高くなるって理解ですね。
(私)そうだね。
(慎太郎)まぁ、これで大体、性行為におけるHIVの感染リスクを高める要因は分かりました。
お次は逆にHIV感染のリスクを下げる要因ですね。これはぜひ知りたいです。
(私)それがこの5つだね。
●HIV 陽性者による抗ウイルス薬の内服 0.08倍
●HIV 陰性パートナーによるPrEP(ヘテロセクシュアル 0.29倍)
●HIV 陰性パートナーによるPrEP(MSM) 0.56倍
●HIV 陰性パートナーによるPrEP(薬物使用者) 0.52倍
●コンドームの使用 0.2倍
これの意味、分かるかい、慎太郎。
(慎太郎)いえ、分かりません。おじさん、こっちも順番に教えて下さい。
(私)いいよ。まず、最初は「HIV 陽性者による抗ウイルス薬の内服 0.08倍」だね。
これはHIV陽性者が抗HIV医療を受けて体内のウイルス量を検出限界以下まで少なくした場合だ。
当然体内のウイルス量が少ないのだから性行為における感染リスクも小さくなる。
0.08倍ってことは、1/12.5に小さくなるってことだ。
(慎太郎)・ほどの「HIVウイルス量が高値 2.89倍」の逆ですね。
体内のHIVが増えれば感染リスクが高まるし、減少すればリスクは減るってことですね。
(私)その通りだよ。
(慎太郎)その次なんですが、「PrEP」って何のことですか?意味が分かりません。
(私)「PrEP」はPre-Exposure Prophylaxisの略で、日本語では「暴露前予防投薬」とか訳されているね。
(慎太郎)HIVが感染する前に薬を飲んでおくってことですか?
(私)その通り。本来治療用に使われる抗HIV薬をHIV感染する前から常用的に飲んでおくんだ。
すると、万一HIVにが体内に侵入してきてもウイルスを直ちに攻撃してHIV感染を防ぐって訳だ。
(慎太郎)へぇ~、そんなことが出来るんですか。
(私)アメリカなどではHIV感染のハイリスクグループなどがすでに実施しているらしいよ。
でも、日本では「PrEP」は認められていない。抗HIV薬はあくまで治療用なんだよ。
何しろ、セックスの前だけ飲んでも効果がない、毎日飲み続けないとね。
それは副作用の問題もあるし費用の問題もあるよね。
(慎太郎)なるほど。
(私)ハンドブックではそうした「PrEP」をヘテロセクシュアル 、MSM、薬物使用者が行った場合のリスク減少を示している訳だ。
(慎太郎)おじさん、ヘテロセクシュアル 、MSMってどう言う意味ですか?
(私)ヘテロセクシュアルは異性愛者、MSMは「Men who have Sex with Men」の略で男性間性交渉者のことだよ。
(慎太郎)なるほど。そうした人たちがもしも「PrEP」を行うとHIVの感染リスクは1/3から1/2近くまで減るって訳ですか。
(私)そういうことだね。
(慎太郎)そして最後がコンドームの使用ですね。これは僕でも知っています。
(私)感染リスクが0.2倍、つまりコンドームを使用しない場合に比べてリスクは1/5に減るってことだ。
(慎太郎)はぁ・・1/5ですか。何となくイメージとしてはもっと減るような・・・。少なくとも1/10くらいかなって思ってました。
(私)まぁ、これも基準値がハッキリしないから、感覚的なものだろうなぁ。
(慎太郎)でも、コンドームが手軽に出来て、予防効果の大きな方法だってことは分かりますね。
(私)そうだね。それじゃ今回の話をまとめておこう。
性行為におけるHIV感染のリスクを高めたり、減らしたりする因子にはこんなものがある。
HIV感染のリスクを高める因子
●HIVウイルス量が高値 2.89倍
●陰部に潰瘍病変の存在 2.65倍
●急性 HIV 感染期 7.25倍
HIV感染のリスクを減らす因子
●HIV 陽性者による抗ウイルス薬の内服 0.08倍
●HIV 陰性パートナーによるPrEP(ヘテロセクシュアル 0.29倍)
●HIV 陰性パートナーによるPrEP(MSM) 0.56倍
●HIV 陰性パートナーによるPrEP(薬物使用者) 0.52倍
●コンドームの使用 0.2倍
こんなところかな。
(慎太郎)今回のお話で僕が気を付けることと言ったら、
●梅毒やクラミジアなどに感染するとHIVにも感染するリスクが高くなる。もしも感染が見つかったら、HIV検査も受ける。
●HIV感染予防にはまずはしっかりコンドームを使用する。
ってことですよね。
(私)そういうことだね。では今日はこれで終わりだ。
(慎太郎)おじさん、どうもありがとうございました。
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