HIVと重複感染の多いとされる性感染症について説明します。あなたの性感染症予防にお役立て下さい。

 

(甥っ子陽介)おじさん、HIVと重複感染しやすい性感染症があるってホントですか? (私)陽介、それは本当だよ。梅毒やB型肝炎などが重複感染の多い性感染症だね。
陽介 私

(陽介)HIVと重複感染する性感染症ってどんなものがあるんですか?

(私)さっきも言ったけど、梅毒やB型肝炎などが非常に重複感染が多い性感染症とされているね。もしもHIVに感染していることが分かったら梅毒やB型肝炎は必ず検査されるよ。

(陽介)それじゃB型肝炎に感染した場合もHIVや梅毒を検査するんですか?

(私)そうだね。少なくともHIVは必ず検査すると思うよ。何しろ自覚症状が出ないから感染していても分からない。

(陽介)ふーん、そうなんですか。いったい、どの程度重複感染が多いんですか?

(私)そうだね。おじさんが調べたところ、こんなデータがあったよ。

HIVと重複感染の多い性感染症

これはACCで調査したデータだよ。調査対象者がMSMという条件付きだけど、それにしても非常に高い重複感染率だね。

ACC:独立行政法人国立国際医療研究センター  エイズ治療・研究開発センター

MSM:Men who have Sex with Men 男性間性交渉者

「HIV感染者の早期発見と社会復帰のポイント」(医薬ジャーナル社)より

(陽介)うわー!ホントに重複感染率が高いですね!

(私)この他にも、保健所がHIV検査を受けに来た人に配布している予防冊子にも書いてあるよ。

保健所冊子

(陽介)ホントですね。梅毒がHIVと重複感染が多いと書いてありますね。でも、どうしてこれらの性感染症はHIVとの重複感染が多いのですか?

(私)うーん、それがよく分からないんだよ。一般に、日本では一番感染者が多いのはクラミジアだと言われているけど、HIVとの重複感染でみると梅毒の方が多い。この理由は調べてみたけど分からなかった。「今後の課題」と書いてある専門書があったけどね。

(陽介)そうなんですか。それじゃおじさん、HIVとの重複感染が多い梅毒とB型肝炎について教えてもらえませんか?いったいどんな病気なんですか?

(私)いいよ。それじゃ簡単に梅毒とB型肝炎について説明しょう。表にしてみたからこれを見てごらん。

病名 梅毒
病原菌 梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)というスピロヘータ科の細菌
潜伏期間 3週間
検査方法 血液検査によって、梅毒血清反応検査を行う。
感染ルート 性行為感染・母子感染・血液感染。梅毒は非常に感染力が強く、コンドームを使用しても患部と接触すると感染することがある。
主な症状 症状は第一期から第四期まで4段階がある。詳細は本文にて説明。
治療法 ペニシリンなどの抗生物質を使用。第一期に治療すれば2週間から4週間で治るが、第二期では4週間から8週間、第三期以降では8週間から12週間かかる。
注意点 HIVと重複感染すると、通常は第三期まで3年かかるところがわずか数ヶ月で進行することがある。また神経梅毒など重症化することもある。

◇ 梅毒の主な症状

●第一期

発症してからおよそ3ヶ月くらいまでの期間です。感染した部分に赤いしこりが出来る。大きさは小豆大から、指の先くらいの大きさです。

発症場所として、男性で多いのは亀頭部、包皮などです。女性で多いのは、大小陰部、子宮頸部などです。まれに唇、口、手指などにも発症することがあります。

このしこりは特に痛みはなく、放置していると2週間から3週間で消えてしまいます。ここから、約3ヶ月後に第二期を迎えるまでは無症状となります。

しかし、この間、病原体はリンパ節に潜入して増殖します。この第一期ではあまり不快感を伴う異常が出ないため、自分が梅毒に感染していることに気付かないことが多いのです。

●第二期

感染してから3ヶ月後から、およそ2年くらいの期間です。バラの花びらをまき散らしたようなバラ疹が全身に現れます。(梅毒性バラ疹)

第二期の最も初期に見られる症状で、痛みもかゆみもなく、数週間で消えます。小豆大の赤い盛り上がった発疹が、外陰部や肛門のあたりに出ます。また、顔や手足に出ることもあります。

梅毒の第二期には多様な発疹が全身の色んな場所に出ます。しかも、他の病気の症状とも似ているため、医師の判断も難しいそうです。

また髪の毛が抜けることもあります。(梅毒性脱毛)あるいはリンパ節が腫れ、扁桃炎になることもあります。発熱、頭痛、倦怠感などの症状が出ることもあります。

この第二期までが感染力が強く、二次感染のリスクが高い時期です。  特に第二期は一番感染力が強い時期と言われています。

これら第二期の症状は放置していると消えてしまい、第三期へと向かいます。ほとんどの感染者はこの第二期までに感染に気付き病院で治療を受け、第三期、第四期まで進行することはありません。

●第三期

感染してから2年から3年が過ぎた後の期間です。全身に硬いコブのような「結節性(けっせつせい)梅毒ゴム腫」ができます。 放置しておけば自然と消えますが、跡が残ります。

そして、ゴム腫は繰り返し発生するため、段々と跡が増えて外見的にひどい状態になっていきます。ゴム腫が鼻骨にできると、鼻骨がくずれて「梅毒で鼻が落ちる」と言われる状態になります。

第二期までに治療を受ける感染者がほとんどのため、現在この第三期をみることはめったにありません。

●第四期

感染してから10年以上経過した後の期間です。病変が、脊髄や脳、心臓、中枢神経にまで及びます。脊髄がおかされると足に刺すような激しい痛みがあり、歩行出来なくなります。また、下半身がマヒ状態になることもあります。

脳がおかされると進行性マヒとなり、言語障害や誇大妄想、判断不能状態など、痴呆症状が現れます。日常生活は困難となり、最後は死に至ります。ただし、現在は第四期まで進行した患者をみることはありません。

続いてB型肝炎です。

病名 B型肝炎
病原菌 B型肝炎ウイルス(HBV=Hepatitis B Virus)
潜伏期間 1ヶ月~2ヶ月
検査方法 血液検査によって、ウイルス学的検査を行う。なお、一般的な健康診断の血液検査では分かりません。
感染ルート 性行為感染・母子感染・血液感染。
主な症状 本文にて説明
治療法 インターフェロンなどによる抗ウイルス療法や、免疫促進療法、抗炎症療法などがある。
注意点 HIVと重複感染すると、重症化したり慢性化したりすることがあります。詳細は本文にて。

◇B型肝炎の主な症状

・全身の倦怠感

・発熱

・頭痛

・吐き気

・食欲不振

・下痢

・黄疸(おうだん)

・尿が褐色になる

B型急性肝炎は1ヶ月ほどで完治するケースがほとんどで、抗体が作られて再度感染することはありません。しかし、1%から2%の頻度でまれに劇症肝炎に移行する患者がいます。

劇症肝炎とは、文字通り劇的に激しい肝炎を起こして肝臓の細胞がほとんど壊れてしまう病気で、非常に致死率の高い怖い病気です。私が読んだ専門書では、劇症肝炎を起こすと半数の患者は死亡すると書かれてありました。

また、慢性肝炎になると肝硬変から肝がんへと進行することもあります。

◇B型肝炎とHIVの重複感染

「これでわかるHIV/AIDS診療の基本」(南江堂)からのデータです。

●HIVとHBVを重複感染した場合の死亡率

・HIV単独の死亡率=1.7/1000

・HBV単独の死亡率=0.8/1000

・HIV+HBVの死亡率=14.2/1000

このように重複感染すると死亡率が8倍から17倍と、格段に高くなります。

また、死亡率だけでなく、B型肝炎が慢性化するリスクも高くなります。

●B型肝炎慢性化率

・HBV単独の慢性化率=6%前後

・HIV+HBVの慢性化率=10%~18%

このように、B型肝炎患者がHIVにも感染している場合、肝炎がより重症化し死に至る危険性も高くなります。全HIV感染死亡者のうち、肝疾患による死亡率は30%から55%に及ぶとした報告もあるそうです。(B型肝炎以外のC型肝炎なども含む)

(陽介)うわ~!おじさん、梅毒もB型肝炎も相当怖いですね!

(私)その通り!HIVはむろん自覚症状がないけど、B型肝炎や梅毒も初期には気が付かないことがあるから要注意だね。

(陽介)でも、梅毒が性感染症というのは分かりますけど、B型肝炎が性感染症というのはピンときませんね。

(私)そうだね。肝炎だからね。でも、性感染症とは主に性行為によって感染する病気のことだから、B型肝炎は間違いなく性感染症の一種だね。

(陽介)それじゃぁHIV感染が不安なときは、梅毒やB型肝炎の検査も同時に受けた方がいいってことですね。

(私)そうだね。まぁ、性感染症はみんな同じ感染ルートだから、どれが1つ不安なら当然他の性感染症も危ないね。中でも感染していた場合特に健康への被害が大きいのはHIV、梅毒、B型肝炎だね。

(陽介)うーん、よく分かりました。

(私)それから重複感染で注意して欲しいことがもう1つあるよ。

(陽介)何ですか?

(私)それはね、クラミジア、淋菌、梅毒、尖圭コンジローマ、性器ヘルペスなどの性感染症に感染しているとHIVに感染する確率が何倍も高くなるってことだよ。⇒補足資料①

(陽介)えー!そうなんですか!でも、それはなぜですか?

(私)性感染症によって性器などの粘膜部に炎症や潰瘍が出来るとそこからHIVが感染しやすくなるんだよ。むろん、HIV以外のウイルスや細菌も同様に感染しやすくなる。

(陽介)そうですか。クラミジアや淋菌はとても感染者の多い病気ですけど、HIVの感染予防という観点からも要注意ってことですね。

(私)その通りだよ。梅毒やB型肝炎ほどではないにしろ、もしもクラミジア、淋菌の感染が見つかったら、少なくともHIV検査は受けた方がいいね。万一HIVに感染してたらエイズ発症前に治療を受けないとね。

(陽介)分かりました。とにかく、HIVと重複感染が多い病気はB型肝炎と梅毒ですね。そしてHIVと重複感染すると病気の進行が早くなったり、症状が重くなったりすることがあるんですね。

(私)その通りだよ。

(陽介)そしてクラミジアや淋菌などに感染すると、HIVへの感染確率が何倍も高くなるんですね。

(私)今日は陽介が最後まとめてくれたね。もしも検査を受けたいと思うなら、保健所がいいね。HIVはむろん、梅毒やクラミジアなども無料・匿名で検査してくれる保健所が沢山あるよ。B型肝炎も年齢などの条件付きだけど保健所で無料検査をしてくれるよ。

(陽介)よく分かりました。

(私)では今回はこの辺で終わりにしよう。

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補足資料

①HIV感染の確率を高める性感染症

例えば、以下のような公的医療サイト、専門書に指摘があります。

●「HIV感染者の早期発見と社会復帰のポイント」(医薬ジャーナル社 岡慎一氏編)
岡慎一氏は国立国際医療センター戸山病院 エイズ治療・研究開発センター長です。 「クラミジア感染による炎症で性器が荒れると、HIVの感染確率は4倍から5倍高くなる」

●エイズ予防情報ネット(公益財団法人 エイズ予防財団)
「クラミジアにかぎらず、梅毒や淋病、性器ヘルペス感染症などの性感染症にかかると、性器の 粘膜が壊れてHIVに感染しやすくなる」

●東京都福祉保健局
「クラミジアに感染すると、性器に炎症が生じた状態になるため、感染していない人と比べて3倍 から4倍HIVに感染しやすいと言われている」

●横浜市衛生研究所
「最近の研究によれば、クラミジアに感染している女性は、感染していない女性に比べて、HIV 感染者との性交渉において5倍以上の確率でHIVに感染してしまうことが、分かっている」

これらの公的医療機関からの警告以外にも探せば多数見つかります。

私が保健所でHIV検査を受けたときにもらった、「HIV/エイズの基礎知識」と言う小冊子にもクラミジアに感染するとHIV感染リスクが高くなると警告してありました。