つい最近読んだ本から、

「男性同性愛者はHIV検査を受ける」

と言うお話です。

私の調べたことを甥っ子の慎太郎に話しますので、あなたもいっしょに聞いて下さい。

(甥っ子慎太郎)おじさん、今日はどんなお話ですか?
陽介
(私)慎太郎、今日はね、「男性同性愛者はHIV検査を受ける」って話だよ。
私

(慎太郎)え~!何ですか、それって?

(私)最近私が読んだ、この本にそう書いてあった。

『感染症のはなし』中島 秀喜著 朝倉書店 ¥2,800+税 

(慎太郎)へぇ~、そうなんですか。

(私)今日はこれを詳しく説明しようと思う。

(慎太郎)はい、お願いします。

(私)まず、厚生労働省エイズ動向委員会が今年3月に発表した、2016年のエイズ動向速報値からのデータを見てもらおう。

2016年の新規HIV感染者と、新規エイズ患者の感染ルートだ。

●新規HIV感染者の感染ルート

HIV感染ルート
グラフ1.新規HIV感染者の感染ルート

全体の約9割が性的接触によるものであり、特に同性間が全体の7割以上を占めている。

ここでの同性間は全て男性同士だよ。

次に新規エイズ患者の感染ルートを見てみよう。

●新規エイズ患者感染ルート

エイズ感染ルート
グラフ2.新規エイズ患者感染ルート

新規エイズ患者の場合、全体の約8割が性的接触であり、男性同士の性的接触が55%となっている。

この2つのグラフを見比べて、慎太郎は何か気付くことはないかい?

(慎太郎)え~っと・・・。そうですね、どちらも男性同士の性的接触が最大感染ルートになっています。

(私)うん、そうだな。そこ、もうちょっと突っ込んでグラフを見て欲しいね。

(慎太郎)はぁ・・・突っ込んで、ですか。そうですねぇ・・。同じ男性同士が多いと言っても、HIV感染者に比べるとエイズ患者の方が比率としては少ないですね。

(私)そうだ!そこだよ!気付いて欲しかったのは。

実はこの傾向は2016年だけでなく、何年も前からすっと同じなんだよ。

(慎太郎)はぁ・・・そうなんですか。

(私)もう少し分かりやすくするために、異性間の感染と、男性同士の感染だけに絞って比べてみよう。

まずは新規HIV感染者からだ。

●新規HIV感染者

HIV比率
グラフ3.HIV比較

こうして見ると、異性間が約2割、男性同士が約8割と分かるよね。

では次に新規エイズ患者を見てみよう。

●新規エイズ患者

エイズ比率
グラフ4.エイズ比較

エイズ患者の場合は、異性間が約3割、男性同士が約7割だね。

こうして見ると、男性同士の性的接触によるHIV感染は最大感染ルートには違いないけど、HIV感染者に比べるとエイズ患者の方が比率が小さいことが分かるね。

88.1%⇒68.1%だから、比率的には20%も少ない。

(慎太郎)そうですね。でも、それが何か意味があるんですか?

(私)大ありだよ。「感染症の話」によれば、これこそが、

「男性同性愛者はHIV検査を受ける」

と言うことを示しているってことになる。

(慎太郎)そうなんですか?

(私)つまり、HIV感染者に比べてエイズ患者の方が比率が小さいってことは、それだけHIV検査を受けてるってことを意味してる。

(慎太郎)はは~ん・・・なるほど。

(私)ここで出て来る「新規エイズ患者」って言うのは、全てHIV感染に気付かずエイズを発症した、いわゆる「いきなりエイズ」の患者さん達だからね。

(慎太郎)なるほど。

(私)もっと分かりやすいデータを見せよう。異性間のHIV感染と、男性同士のHIV感染で「いきなりエイズ」の割合がどう違うか。

それがこのグラフだよ。

●いきなりエイズの比較

いきなりエイズ比較
グラフ5.いきなりエイズ比較

異性間のHIV感染では、HIV感染者として報告された人の約40%はすでにエイズを発症していたことになる。

一方、男性同士のHIV感染では、HIV感染者として報告された人のうち、約25%がエイズを発症していた訳だ。

いきなりエイズの比率が40%と25%、これは随分違うだろう?

(慎太郎)なるほど。このデータだとよく分かりますね。

(私)つまり、それだけ男性同士の性的接触を持つ人はHIV感染に関心があって、検査を受けてるってことだ。

(慎太郎)すると異性間の性的接触を持ってる人は、その点では関心が薄いってことですね。

(私)そうなるね。

(慎太郎)でも、男性同士のHIV感染の件数そのものは多い訳で、そこは問題ですね。

(私)その通り。HIV検査を受ける人が多いのはエイズ発症を防ぐ意味でとても重要だね。しかし、そのHIV検査の結果で陽性が多い訳だ。

だからHIV検査を受けることも大事だけど、HIVに感染しないよう予防することはもっと大事だね。

(慎太郎)そうですね。「いきなりエイズ」の比率を下げることも大事だけど、感染者の件数を減らすことはもっと大事ですよね。

(私)件数で言えば、男性同士の性的接触がHIV感染の最大感染ルートであることは間違いない訳で、当然ここにHIV感染予防の啓蒙活動を進めているよ。

(慎太郎)そうですね。MSM向けのHIV感染予防キャンペーンを国や地方自治体が行っているのを見かけます。

(私)それからもう1つ言えることは、異性間の性的接触による「いきなりエイズ」が多いことから、ここはもっとHIV感染に関心をもってもらいたいね。

(慎太郎)なるほど。それも言えてますね。

(私)HIV感染に関しては、まずは予防、そして次は検査、これが大事だね。

(慎太郎)分かりました。

(私)それじゃ今回はこの辺で終わりにしよう。

(慎太郎)おじさん、ありがとうございました。

関連記事

番外編!なぜ男性同士の性的接触でHIV感染が多いのか?

男性同士の性的接触でHIV感染が多いのはなぜか?

フッター新1

フッター新2