日本では毎年約1,500人ほどの新規HIV感染者が報告されています。どこで見つかることが多いのでしょうか?
日本では医療機関でHIV感染が見つかった場合、7日以内に都道府県知事に報告するよう法律で定められています。(罰則規定あり)
保健所や病院でHIV感染が分かることが多い訳ですが、詳しいデータを調べてみました。それを私が甥っ子の陽介に説明します。ぜひあなたもいっしょに聞いてください。
(甥っ子陽介)おじさん、HIV感染者ってどこで見つかることが多いんですか? | (私)陽介、それは保健所や病院だよ。でも、現状の問題点もあるよ。 |
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(陽介)問題点って何ですか?
(私)問題点を話す前に、まずはHIV感染報告の現状を見てみよう。今の日本では年間に約1,500人くらいの新規HIV感染者が見つかっている。(新規エイズ患者を含む)
(陽介)そうでしたね。
(私)いったいどこで見つかることが多いと思う?
(陽介)うーん、やっぱり保健所じゃないですか?無料で受けられるし、確か年間に13万人くらいHIV検査を受けてますよね。
(私)そうだね。13万人というのは保健所以外の無料・匿名検査も含まれている。保健所だけで言えば約10万件くらいだね。
(陽介)それでも10万件ですか。それじゃやっぱり保健所で見つかることが一番多いと思います。
(私)ところが保健所じゃないんだよ。
(陽介)えー!違うんですか!
(私)厚生労働省は毎年全国の保健所で行われているHIV検査の実態調査を公開しているんだ。
その2012年度版によれば、全国480ヶ所の保健所で行われたHIV検査の実態はこうだ。
●HIV検査の総数 85,540件
●HIV陽性件数 217件
つまり保健所で見つかったのは217件なんだよ。
(陽介)へぇ・・・そうなんですか。1,500人のうちの217人ですか。
(私)ただ、厚生労働省の調査では全国560ヶ所の保健所を対象にした調査で、481ヶ所の回答しかなかった。
だから回答のなかった保健所でもHIV陽性が見つかっている可能性がある。
(陽介)なるほど。でも80%を超える回答率ですね。
(私)そうだね。それからもうひとつ。先ほど年間1,500人のHIV陽性者が見つかると言ったけど、それは新規エイズ患者も含まれている。
でも保健所にHIV検査に来る人は病人じゃないから、新規エイズ患者が見つかる可能性は低いよね。
エイズ患者をのぞく新規HIV感染者だけで言えば年間に1,000人くらいだ。だから新規HIV感染者の2割から3割くらいが保健所で見つかっているって感じだね。
(陽介)そうなんですね。それじゃ残りの8割から7割の新規HIV感染者が病院で見つかっているんですか?
(私)そういうことになるね。『HIV感染症 診療マネジメント』(医薬ジャーナル社)という本に資料が出ていたよ。
この本の著者である今村医師は都立駒込病院感染科医長だ。
その都立駒込病院はエイズ中核拠点病院の1つであり、色んな医療機関からHIV感染者、エイズ患者が紹介されて治療にくる。
いったいどんな医療機関から紹介されてくるのかをまとめたものがこのグラフだよ。
グラフ1.HIV感染者の紹介元医療機関
(陽介)こうしてみると、一般病院と診療所で全体の77%以上ですね。先ほどの推計とピッタリ合いますね。
(私)そういうことになるね。
(陽介)でもおじさん、一般病院や診療所で見つかるHIV感染者は、どんなきっかけなんですか?HIV検査を受けに行った人たちですか?
(私)むろん、HIV検査を受けに行って見つかった人もいるだろうね。でも、それ以外のきっかけも多いはずだよ。
例えば肺炎や結核の治療で検査したらHIV感染が見つかったり、原因不明の下痢や皮膚疾患などで調べてみたらHIVに感染していた、と言うケースも多い。
(陽介)なるほど。何かの病気で診察や治療を受けている間にHIV感染が分かったというケースですね。
(私)そうだね。だからこうしてみると、一般病院や診療所の役割はとても大きいよね。ここで早期にHIV感染が見つかるかどうかでその後の治療に大きな差が出る。
(陽介)つまり、早期に見つかればエイズ発症を防ぐことが出来るし、発見が遅くなればエイズを発症してしまうってことですね。
(私)その通り。いくらHIV感染症が致死的疾患ではなくなったと言っても、やはり発見が遅れれば死亡に至ることもあるし後遺症が残ることもある。
これまで何回も言ってきたけど早期のHIV検査は救命的検査だからね。
(陽介)本当ですね。前におじさんに教えてもらった話では、日本ではHIV感染者として報告された人の30%以上がすでにエイズを発症しているんですよね。
(私)残念ながらそうだ。この30%の人たちも早期にHIV感染が分かっていればエイズ発症を防げた可能性が高い。
(陽介)ということは、保健所でのHIV検査を増やすだけでなく、一般病院や診療所での早期HIV検査も重要になりますね。
(私)まさしくその通りだ。先ほどの『HIV感染症 診療マネジメント』でも今村医師が次のように指摘しているよ。
『一般病院や診療所では出来るだけ早くHIV感染症を疑い検査することが重要となる。HIV感染症の診断が遅れれば合併症が重症化したり、予後不良となってしまう。一般病院における日和見疾患の診断力アップも必要だ。』
(陽介)なるほど。一般病院ではあまりHIV感染者を診察する機会がないから、医師も気が付かない場合があるんですね。
(私)そうなんだ。医師が確実にHIV感染症を見つけてくれるとは限らない。これが今回冒頭で私が言った現状の問題点だよ。
だから自分自身でもHIV感染の不安を感じたら保健所などでHIV検査を自主的に受けることだね。
(陽介)分かりました。
(私)それじゃ今回の話のまとめだよ。
●HIV感染者の7割から8割は一般病院や診療所で見つかっている。
●一般病院や診療所で早期にHIV感染者が見つかるよう、診断力のアップが望まれる。
●HIV感染の不安を感じたら、医師の指示がなくても自分でHIV検査を受ける。
(陽介)はい。了解です。
(私)では今回の話はこれまで。
(陽介)おじさん、ありがとうございました。
管理人追記:本記事の補足記事を追加しました。『補足資料・HIV陽性はどこで見つかった?』
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補足資料