HIVとエイズの違いをあなたは正確に言えますか?

ちょっと前になるのですが、ネット上の公開番組でエイズの特集をやっていました。医療の専門家と一般の男女が参加してトークをしながらHIVやエイズの知識を学ぶという趣旨の番組です。

この中で、20代の男女3人か4人が、HIVとエイズの違いを正確に説明することが出来ませんでした。ネット上を探せばそんな情報は溢れかえるほどありますが、それでも知らない若者がいるのです。これはHIVやエイズに対する無関心さを如実に表していると思います。

さて、甥っ子の陽介はしっかり答えることが出来るでしょうか。

(陽介)HIVとエイズのちがい・・・・・うーん、改まって正確にと言われるとちょっと・・・ (私)HIVとエイズの違いを知ることはとて重要なことだよ。しっかり認識して欲しいね。
困った顔の陽介 私

(陽介)何となくイメージ的にはHIVとエイズは違うと分かるけど、正確にどう違うか説明しろって言われると・・・正直よく分かっていません。

(私)確かにそうかも知れないね。陽介と同じような認識の人は多いと思うよ。まずは言葉の意味から見てみよう。

●HIV Human Immunodeficiency Virus=HIV=ヒト免疫不全ウイルス(ヒトめんえきふぜんウイルス)

●エイズ Acquired Immune Deficiency Syndrome=AIDS=後天性免疫不全症候群(こうてんせいめんえきふぜんしょうこうぐん)

これが言葉の意味だよ。違いが分かったかな?

(陽介)何だかややこしくて分かりにくいです。

(私)ではもう少し陽介にも分かりやすく説明してあげよう。まず、HIVだね。これはウイルスの名前なんだよ。インフルエンザウイルスとか、日本脳炎ウイルスとかって言うよね。それと同じでHIVは「ヒト免疫不全ウイルス」という名前なんだ。

(陽介)ふーん、HIVはウイルスの名前なんですね。

(私)そうだよ。人間には誰でも免疫機能というのがあるね。これは外から侵入してくるウイルスや細菌をやっつけてくれたり、人間の体の中でできるがん細胞をやっつけてくれたりするありがたい機能だ。

HIVはこの免疫機能を不全にする、つまり機能しない状態にしてしまうウイルスなんだよ。

(陽介)だから「ヒト免疫不全ウイルス」って名前なんだね。でも、免疫機能が働かなくなってしまうとどうなるの?

(私)そうだね、大変なことになるね。何しろ陽介も私も自分の免疫機能に守られて生きているから、免疫機能が働かないと色んな病気に感染してしまうんだ。体の外から侵入してきたウイルスや細菌をやっつけてくれる機能がなくなる訳だからね。

(陽介)おじさんどんな病気になるの?

(私)そりゃもう沢山あるよ。例えば肺炎や結核、カンジダ症にカポジ肉腫などだね。これらは免疫力があるときはそう簡単には感染しないけど、免疫力が低下してくると感染する。こうした病気のことを「日和見感染症(ひよりみかんせんしょう)」と言うんだよ。

(陽介)なるほど。免疫力が強い状態か、弱い状態かで日和見主義で感染するから日和見感染症と言う訳ですね。

(私)その通りだ。次はエイズだね。エイズは「後天性免疫不全症候群」の英語訳の頭文字をとったものだね。その意味を考えてみよう。

後天性=生まれた後から、という意味。免疫不全には生まれつきの場合もあって、その場合は「先天性免疫不全」と呼ばれる。

免疫不全=さっき説明したように、免疫力が働かなくなる状態を指す。日和見感染症にかかってしまう。

症候群=1つの原因から発生する一連の症状を指す。単独の病気ではなく、複数の病気を発症する状態。

つまり、エイズとはHIVというウイルスに感染することによって免疫力が低下し、その結果日和見感染症を発症した状態をさす言葉だよ。

(陽介)するとHIVが原因で、エイズが結果という訳ですね。

(私)そうだよ。だからHIVとエイズは全く別物であって、きちんと使い分けなくちゃいけない。そして何より大事なことは、HIVに感染したからといって、即エイズではないってことだね。この意味は陽介にも分かるかい?

(陽介)おじさんがさっき教えてくれたエイズの意味からすると、HIV感染による日和見感染症を発症した状態がエイズでしたね。だったら、HIVに感染しても日和見感染症を発症していなければエイズとは言わないんじゃないかな。

(私)陽介えらい!その通りだよ。HIVに感染してもすぐにエイズ患者になる訳じゃない。まだ免疫力がある程度残っていれば日和見感染症には感染しないからね。

だからHIV感染者がそのままエイズ患者ということじゃないんだよ。

(陽介)それじゃHIVに感染してからどのくらい時間が経つとエイズになるの?

(私)それも大事な質問だね。以前はHIV感染からエイズ発症までの潜伏期間は8年とか10年とか言われていた。でもね、ここ数年はHIV感染から3年や4年でエイズを発症する人が増えているんだ。

(陽介)えー!それって恐いですね!どうして潜伏期間が短くなったんですか?

(私)それはまた別に教えてあげるよ。説明すると長いからね。ただ、今の医学は進歩してHIVに感染しても薬で治療すればエイズの発症を抑えることが出来るようになってきた。だからエイズを発症する前にHIV感染を見つけることが大事なんだ。

ともかくHIVとエイズの違いをしっかり認識して欲しいね。

(陽介)おじさん分かりました。今のお話で、HIVに感染してもエイズにならずに済むなら、余計にHIVとエイズは別だって知ることは大事ですね。

(私)陽介いいこと言うね!まさにその通りだよ。HIVに感染してもエイズ患者ではないと知ることは、HIV感染者に対する偏見や差別を防ぐことにもつながるからね。

(陽介)HIVはウイルスの名前、エイズはHIV感染によって発症する一連の病気を意味するんですね。よく分かりました。

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補足資料

●エイズ指標疾患

日本では次の23種類がエイズ指標疾患に指定されています。HIV感染者がどれか1つでも発症すればその時点でエイズ患者と認定されます。

エイズ指標疾患の詳細については、『HIV・エイズの正しい表現は?』のページの補足資料参照。