現在日本国内では毎年ほぼ1,500人ほどのHIV感染者が報告されています。(エイズ発症も含む)
では、こうしたHIV陽性者の皆さんは、どこでHIV陽性判定を受けたのでしょうか。独立行政法人 国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター(以下ACCと呼ぶ)に少し古いデータが紹介されていました。
■HIV感染症の基礎知識(ACC)
この中に、「ACCにおける新規登録患者の診断契機」と言うデータが入っていました。これは、ACCへHIV陽性者として治療を受けにきた患者が、どこの医療機関でHIV陽性と分かったのか、それを調べたデータです。
さっそく結果をご覧頂きましょう。
グラフをご覧頂いてお分かりのように、最も多かったのは何かの病気で病院にかかりそこでHIV陽性が分かったケースです。このケースですぐに思いつくのは2つあります。
●梅毒、クラミジア、淋菌などの性感染症にかかったとき、あるいは疑われるとき。この場合は感染ルートが共通なのでHIV検査まで行うことが多く、そこでHIV陽性が見つかることがあります。
●エイズ指標疾患を含む症状が出ている場合。HIV感染による免疫力低下は多岐に渡る症状が出ます。そうした症状からHIV感染を疑い、検査を行った場合ですね。
その次に多かったのが保健所でHIV陽性が見つかったケースです。年間に約13万人から14万人がHIV検査を受けています。
そしてその次に多かったのは手術前のスクリーニング検査でHIV陽性が見つかったケースです。あなたが何かの病気で手術を受けるとき、院内感染防止や治療のために多くの病院ではHIV検査を行っています。
ACCのデータでは、手術前と並んで検査前スクリーニング検査とも書かれていました。何かの検査を行う前のスクリーニング検査と言うことになるのですが、具体的にはどんな検査の前に行うのか、ちょっと分かりませんでした。
また、自己希望で病院でHIV検査を受けた場合、妊婦健診でHIV検査を受けた場合がどこに含まれるのか、それもちょっと分かりませんでした。ただ、病院でHIV陽性が分かったケースが全体の64%であった、と言うことです。
そして最後は献血でHIV陽性が分かったケースです。献血でHIV陽性が分かっても本人には告知しないのが建前ですが、実際には非公式に本人へ告知が行われています。今回のACCのデータもそれを裏付けています。
もしも本人へ告知をしないのなら、ここに献血がデータとして上がってくることはあり得ません。ただし、だからと言って献血がHIV検査の代わりに使えると言うことでは決してありません。ここは誤解しないで下さい。
詳しくは関連記事をお読み下さい。⇒『献血でHIV感染が分かるか?』
以上のように、ACCへ治療を受けにきたHIV陽性者の64%は病院でHIV陽性が分かり、33%は保健所、2.3%は献血で分かったと言うことです。
さて、手術前のHIV検査や他の病気でたまたまHIV陽性が見つかった人は、ある意味偶然HIV陽性が見つかった訳です。もしかしたらHIV陽性に気付かず数年後に「いきなりエイズ」を発症していたかも知れません。
こうしたケースでHIV陽性が見つかった人もけっこう多いと思います。HIV陽性は大変辛いことですが、せめてエイズ発症前に見つかれば予後が随分違います。
そう考えると、改めて早期のHIV検査が大事だと痛感します。もしもあなたが少しでもHIV感染不安を感じたら自覚症状の有無にかかわらずHIV検査を受けて下さい。
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