あなたはエイズパニックをご存知ですか?たぶん40歳以上のあなたはご記憶にあるかも知れません。
今から27年前、1986年長野県松本市、翌1987年神戸市で起きたエイズ騒動についてお話したいと思います。当時私は30歳をちょっと超えた年齢でした。
私自身は松本市にも神戸市にもゆかりはありませんが、しかし日本中を巻き込んだエイズ騒動は鮮明に記憶しています。いったい、あの騒ぎは何だったのか。
私の記憶をたどりながら甥っ子の陽介に話したいと思います。エイズパニックをご存知ないあなたはぜひいっしょに聞いてください。
(甥っ子陽介)おじさん、エイズパニックって何ですか? | (私)陽介、それは今から27年ほど前に起きたエイズ騒動だよ。 |
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(陽介)エイズパニックはいったいどんな騒動だったんですか?
(私)エイズパニックを話す前に、当時の日本におけるエイズの状況を説明しておくね。アメリカで1981年に初めてエイズ患者が報告されて、世界中がエイズに注目し始めた。そして1985年に初めて日本人のエイズ患者が見つかったんだ。
(陽介)それじゃエイズが登場して間もない頃だったんですね。
(私)そうだよ。最初は男性の同性愛者や麻薬中毒患者の間で感染する奇病だと言われてた。ましてや海の向こうの話であって、日本には関係ないって思ってた。
(陽介)ふーん、そうなんですか。おじさんがエイズを最初に知ったのはどこからの情報ですか?
(私)テレビだよ。今でもハッキリ覚えているけど、当時のエイズ患者と言えば必ずと言っていいほどニューモシスチス肺炎かカポジ肉腫の患者だった。
週刊誌などにも患者の写真が載っていて、かなりショッキングな印象を覚えているよ。
(陽介)どんな感じで写真が載っていたんですか?
(私)ハッキリ言って、意図的にエイズを怖い病気だと印象づけるような写真の載せ方、記事の内容だったと思うね。そして、今思えばエイズについては怖い病気だというイメージばかりが先行して大きくなり、正しい情報や知識はほとんど手に入らなかった。
例えばHIVとエイズの違いも全く知らなかった。当時はHIVもエイズもごちゃまぜにしてエイズと言ってた。エイズに感染する、という表現をマスコミも使ってたと思うよ。
(陽介)そうなんですか。
(私)そんなHIVについてもエイズについても十分な情報、知識がまだ日本に定着していない頃、エイズパニックが起きたんだよ。
(陽介)いよいよエイズパニックの話ですね。
(私)そうだよ。1986年11月、長野県松本市にフィリピンから出稼ぎに来ていた女性がフィリピン帰国後にHIVに感染していたことが判明したんだ。
そして、その女性が松本で売春行為を行っていたと報道された。その女性の実名も公表され、女性が働いていたとされる店や、そこに行った客までも探そうとマスコミが松本に殺到したんだ。
(陽介)えー!実名が報道されたんですか!
(私)そうだよ。報道機関は情報を出すことが感染防止につながると主張して個人のプライバシーを二の次にしたんだ。そしてすでに店の客はフィリピン女性からHIVをうつされた可能性があるとしてテレビのワイドショーが毎日のように取り上げたんだ。
(陽介)それでどうなったんですか?
(私)当時松本市内にはフィリピンから出稼ぎに来ていた女性が多くいたんだけど、そうした女性たちもHIVに感染しているかも知れないとして、大変な差別を受けることになった。
(陽介)どんな差別ですか?
(私)例えば公衆浴場に入れない、スーパーや百貨店も入店を拒否される、病院までが診察を拒否するようになってしまった。
(陽介)えー!ひどい話ですね。あり得ないですね。
(私)そうなんだ。HIVの感染ルートに対して正しい知識がないから、日常生活で感染すると思っていたんだね。お風呂で感染すると思ってた。
(陽介)そうなんですか。
(私)しかし、差別を受けたのはフィリピンからの出稼ぎに来ていた女性だけではなかったんだ。松本市内にはすでにHIVに感染した人がいるかも知れないと他府県の人が疑うようになった。それで今度は長野県からの旅行者を断るホテルや旅館が出てきた。
(陽介)うーん・・・・
(私)今思えばずいぶんバカバカしい話だけど、正しい情報、正確な知識がないと恐怖心ばかりが大きくなるんだね。デマや噂話が横行して完全なパニック状態になってしまった。
(陽介)そうなんですか。
(私)それから翌年の1987年、今度は神戸市で事件が起きた。この年、厚生省(当時)は神戸で日本人女性初のHIV感染者が確認されたことを発表したんだ。その女性は男性同性愛者の疑いのある外国人船員からHIVを感染したと報道された。
そして女性の死後、名前や顔写真が公開され、更にはその女性が多くの日本人相手に売春行為を繰り返していたと報道された。そして、松本の場合と同様、マスコミは神戸へ押しかけ、女性の客だったと思われる男性探しが始まったんだ。不安になった男性たちがHIV検査を受けに保健所に殺到したそうだよ。
(陽介)でも、その女性の名前や顔写真まで公開されるってひどい話ですね。
(私)そうだね。当時はとにかくHIV感染者、エイズ患者に対する偏見や差別が当たり前のように多かったんだよ。二次感染を防ぐには個人の人権やプライバシーは犠牲になっても仕方ないという考え方が正当化されていたように思うね。
なんだかHIV感染者やエイズ患者は社会の敵みたいに扱われてた。
(陽介)おじさんもやっぱり同じように偏見を持っていたんですか?
(私)そうだね。正直、おじさんも当時は正確な知識がなかったから、テレビのワイドショーや週刊誌の記事に踊らされていたような気がするよ。
実際の話、神戸でHIVに感染した女性は売春行為でHIV感染を広めたと報道されたけど、女性の遺族が事実無根として名誉棄損の裁判を起こし、女性が売春行為を行ったとする報道は事実ではないと否定されているんだ。
(陽介)そうなんですか!ずい分ひどい話ですね。
(私)そうだね。おじさんの記憶では、とにかくHIVに感染したのは自業自得であり、社会の敵だから患者は隔離せよ、みたいな風潮さえあったと思うよ。
(陽介)考えられない話ですね。
(私)それに同じころ、薬害エイズ事件も注目されていた。血友病患者が治療に使った非加熱血清剤によって多くの患者がHIVに感染したんだ。
(陽介)そうなんですか。それじゃHIVの感染ルートとして血液感染と性行為感染の2つがあった訳ですね。
(私)そうなんだ。そして薬害のHIV感染者には同情が集まり、性行為でHIVに感染した人には差別と偏見が集まった。今から27年前の日本はそんな時代だったんだ。
(陽介)エイズパニック、よく分かりました。でもおじさん、27年経った今でもまだHIVやエイズに対する差別と偏見は残っているんじゃないですか?
(私)陽介の言う通りだね。残念だが完全になくなったとは言えないと思うよ。例えばHIVに感染したことによって会社を辞めさせられたり、個人情報が守られなかったりすることが起きてる。
(陽介)エイズパニックのときは、エイズが日本に上陸して間もない頃だったし、情報や知識が不足してたからある面仕方ないのかも知れません。でも、現在はいくらでも情報は入るし、知識も学べますよね。
(私)そうだね。知識や情報の不足が恐怖心をあおり、偏見や差別を生む原因になる。エイズパニックはまさにその典型だね。だから正しい情報や知識を身に着けることは何より大事な第一歩だね。
(陽介)はい。よく分かりました。
(私)それじゃエイズパニックの話はこれでお終いにしよう。
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