HIV検査を受けた人たちの特性についてまとめた資料を見つけました。中にいくつか興味深いデータがあったの、数回に分けてあなたにお伝えしたいと思います。
今回私が見つけた資料はこちらです。
『HIV郵送検査と保健所等におけるHIV抗体検査受検者の特性に関する研究』
この記事について私が気づいたことを甥っ子の陽介に話しますのであなたもいっしょに聞いて下さい。そしてあなたのHIV感染予防、HIV検査のきっかけにして頂けたら幸いです。
(甥っ子陽介)おじさん、今日のお話しは何ですか? | (私)陽介、今日はね、HIV検査を受けた人たちの特性についての話だよ。 |
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(陽介)HIV検査を受けた人たちの特性?それって意味がよく分かりませんけど・・・?
(私)HIV検査を受けた人たちの、年齢、性別、生活様式、HIV感染の予防や不安、コンドームの使用状況などをまとめたものだよ。
(陽介)へぇ、そんなデータがあるんですか?
(私)それがあるんだよ。つい最近私が見つけたのがこのデータだよ。
『HIV郵送検査と保健所等におけるHIV抗体検査受検者の特性に関する研究』
これは厚生労働省のエイズ対策研究事業の一環として行われたものだ。
(陽介)なんだか興味深いタイトルですね。郵送検査も出てくるんですか?
(私)そうなんだよ。保健所のHIV検査受検数が伸びない中で、郵送によるHIV検査は年々伸びている。でも、郵送検査を使ってる人についての調査はこれまでなかった。さすがにこれだけ使う人が多くなれば、一度キチンとした調査対象に入れようってことだと思うよ。
まず、この調査ではHIV検査をどこで受けたか、検査の受け方を4通りに分類してるんだ。
●郵送検査利用者(国内A社利用者:A社がどこかは明らかにしていない)
●保健所利用者(宮城・千葉・東京・神奈川・愛知・大阪・福岡・沖縄)
●南新宿検査所利用者
●大阪なんば検査所利用者(以下chotCAST)
この4分類に分けて、色んなアンケート調査を行ってる。調査は2012年10月から2013年9月の間に行われ、分析対象者は28,564名だった。
(陽介)けっこう大がかりですね。そもそもこの研究の目的って何だったんですか?
(私)一言で言えば、保健所でもっとHIV検査を受けてもらうにはどうすればいいか、その手がかりを探すことが目的だよ。HIVの最大感染ルートが男性同士の性的接触であることから、特にMSM(Men Who have sex with men)の受検数を増やすことが狙いだね。その為にHIV検査を受けている人たちの特性を研究して今後の対策、啓もう活動に生かそうってわけだ。
(陽介)なるほど。そういうことですか。
(私)それでね、この資料には多くのデータが含まれていて、とても一度に全部は話せないから少しずつ数回に分けて陽介に説明してあげよう。
(陽介)はい、ありがとうございます。
(私)まず初回として私がけっこう驚いたデータを見つけたので、それから陽介に話そうと思うんだ。
(陽介)おじさんが驚いたデータ?いったい何ですか?
(私)それがね、コンドームの使用率なんだよ。
(陽介)はぁ、コンドームの使用率ですか。つまり、色んなところでHIV検査を受けた人たちがどのくらいコンドームを使ってHIV感染予防をしていたかってデータですね。
(私)その通り。データではこんな分類に分けてアンケート調査をしている。
●過去6ヶ月に特定の男性とセックスあり。コンドームを常用していたか、非常用だったか。
●過去6ヶ月に特定以外の男性とセックスあり。コンドームを常用していたか、非常用だったか。
●過去6ヶ月に特定の女性とセックスあり。コンドームを常用していたか、非常用だったか。
●過去6ヶ月に特定以外の女性とセックスあり。コンドームを常用していたか、非常用だったか。
この4分類で、調査対象者はさっきも言ったけど郵送検査でHIV検査を受けた人、保健所で受けた人、南新宿で受けた人、chotCASTで受けた人だ。
(陽介)なるほど。
(私)どうだい、陽介の予想は?コンドーム使用率はどのくらいだと思う?
(陽介)そうですねぇ・・・。普通に考えると特定の人より、特定以外の人とのセックスの方がコンドームを使いますよね。感染リスクが高いと考えるのが普通でしょ?
(私)それはそうだね。では実際に何パーセントくらいの人がコンドームを常用していたと思う?
(陽介)う~ん・・・・そうですねぇ。特定の人とは50%くらいかな。特定以外だと・・・80%くらいですかね。
(私)ふむふむ。実は私もその程度の数字じゃないかなと思ってた。ところがデータを見て驚いたね。
(陽介)え?と言うことは・・・・?
(私)そう、もっと低い数字だった。特定以外の人とセックスするのにコンドームを常用する人は至って少ない。
(陽介)う~ん、そうなんですか。
(私)では、データを見てもらおうか。まずは特定の男性、特定以外の男性とセックスをした人たちのコンドーム使用率だ。
グラフ1.男性相手のセックス
郵送検査、保健所、南新宿、chotCASTでHIV検査を受けた人の人数はそれぞれ異なるからね。調査対象数はNで示している。そのN人の中でコンドームを常用した人のパーセントをグラフ化しているんだ。
青色が特定の男性相手、赤色が特定以外の男性相手のセックスだよ。たしかに4つのグループ全てで特定の相手より特定以外の相手の方がコンドームを常用している。その意味では用心してるんだね。
(陽介)だけど・・・。おじさん、用心してるって言っても35%ですよ!これ少なくないですか?
(私)確かにね。ただ、最初に言ったように今回の調査対象者は全部で28,564人で、そのうち男性が66%、女性が34%だった。
そして今見せたグラフは相手が男性だった場合のコンドーム使用率だから、男性同士の性的接触が66%なんだよね。恐らく避妊の心配がないのでコンドーム使用率が低いんだと思う。
もしも調査対象者の男女性別データがあればハッキリ分かると思うけどね。残念ながら性別のデータはなかった。
(陽介)そうなんですか。
(私)ただし、対象者の性別データはなかったけど、セックスの相手は男女別のデータになっている。グラフ1は相手が男性の場合だったけど、次に相手が女性だった場合を見てもらおう。
グラフ2.女性相手のセックス
こちらのグラフを見てどう思う?
(陽介)はい。確かに相手が女性の場合はコンドームの常用率が高いですね。これは避妊目的があるからなんでしょうね、きっと。それにしても50%にも満たないなんて、やっぱり使用率は低いですね。
それに避妊の必要がないから男性同士ではコンドームが使われないって、合点がいきませんね。
(私)どうしてだい?
(陽介)今までおじさんが何度も繰り返し教えてくれたように、日本ではHIVの最大感染ルートは男性同士の性的接触ですよね。つまりそれはコンドームなしのアナルセックスがHIVの感染確率が高いってことですよね。
だったら避妊目的じゃなくてもHIV感染予防でコンドームは必要だと思うんですけどね。
(私)そうだね。逆にこうした現状があるからこそ、男性同士の性的接触が最大感染ルートのままだとも言えるね。
ちなみに、今紹介したのはあくまでHIV検査を受けた人たちのコンドーム使用率で、HIV検査を受けなかった人も含めての使用率は42%らしい。⇒『コンドームの使用率、世界ワースト3位』
日本のコンドーム使用率は世界的に見ても低いんだね。ただ、この42%は常用者だけなのか、常用者以外も含むのか、そもそも何人を調べたものなのか、詳しい調査方法が分からない。まぁ、どっちにしても低い数字であることは間違いないけどね。
(陽介)でも、こうしたグラフを見るとちょっと怖いですね。
(私)何が怖いんだい?
(陽介)例えば僕が自分ではコンドームを使ってHIV感染予防に気を使っていても、僕の周囲では必ずしも同じように気を使っている人ばかりじゃないってことですよね。
(私)確かに。
(陽介)だとすれば自分の身は自分守ると言うか、自分がしっかりコンドームで予防しないと危ないってことですね。
(私)そうだね。今回はコンドームの使用率と言う、いわば本筋の話じゃないテーマだったけど、私が驚いたデータだったので紹介してみた。
2つのグラフを見る限り、HIV検査の受け方によるコンドームの使用率に大きな差はなかった。性行為の相手が男性の場合、郵送検査でHIV検査を受けた人が少しコンドームの使用率が低いかな、って感じる程度だね。そう大きな差でもない。
次回は郵送検査によるHIV検査を受けた人の特性を説明してあげよう。他のHIV検査方法を選んだ人とけっこうな差が出る項目もあったんだよ。
(陽介)そうなんですか。ぜひ教えて下さい。お願いします。
(私)では今日はこれでお終いだ。
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『それでもコンドームを使わない?』(姉妹サイトへリンク)