アメリカにおける行為別HIVの感染確率データを入手しました。日本のデータとどう違うのか比べてみましょう。

甥っ子の陽介に話すのであなたもいっしょに聞いて下さいね。

(甥っ子陽介)おじさん、今日のお話しは何ですか?
陽介
(私)陽介、アメリカ版のHIV感染確率データだよ。日本版のデータと比較してみよう。
私

(陽介)え~、アメリカ版ですか?

(私)そうだよ。私が最近読んだこの本に載ってた。

『本質のHIV』岩田健太郎 訳 メディカル・サイエンス・インターナショナル

(陽介)これはどんな本ですか?

(私)アメリカのHIVケアにかかわる医療関係者向けに書かれた本だ。HIVの基礎的な情報から症状、治療法まで大変詳しく載っている。

(陽介)そうなんですか。

(私)この本の中に、性行為によるHIV感染の説明が書かれていて、一部に行為別の感染確率が載ってた。

(陽介)それっておじさん、前に「HIV感染の確率データ」って話で教えてくれましたよね。

(私)そうだったね。そのデータは厚生労働省の関連サイトに掲載されているデータで、私が知る限り最も信頼出来て、かつ広く使われているデータだと思う。いわば日本ではこの確率データが基本になってるね。

(陽介)そうでしたね。すると今回はアメリカ版の基本データってことですね。日本とアメリカで差があるんでしょうか?

(私)さぁ、ではさっそくデータを比較してみよう。こんな感じだ。

感染の可能性がある行為

感染確率(%)
日本 米国
輸血 90
静脈注射ドラッグ使用時の針の共有 0.67 0.67
アナルセックス
(受け入れ側)
0.5 0.1~0.333
針刺し事故 0.3
膣を使ったセックス
(女性側)
0.1 0.08~0.2
アナルセックス
(挿入側)
0.067 0.033
膣を使ったセックス
(男性側)
0.05 0.033~0.1
フェラチオ
(受け入れ側)
0.01
フェラチオ
(挿入側)
0.005

*日本のデータは「HIV検査相談マップ」から引用

(陽介)なるほど。大まかな傾向は日本でもアメリカでも同じですね。でも、よく見ると微妙に差がありますね。

(私)そうだね。例えばアナルセックスについては日本の方が感染確率が高くなってるね。

(陽介)そうですね。日本でもアメリカでも、性行為の中では一番感染確率が高くなってますけど、値はちょっと差がありますね。

(私)ただね、「本質のHIV」の中にも書かれてるんだけど、HIV陽性者でも体内のウイルス量は個人差があるし、確率の低い行為でも繰り返せば確率は高くなる。

だからあくまでも行為別の感染確率は目安と言うか、決してこれで安全な行為、危険な行為の振り分けが出来る訳じゃないと思うよ。

(陽介)はい。それはおじさんが前から言ってましたね。

(私)そうなんだよ。ただ、現実問題として日本でもアメリカでも男性同士の性的接触によるHIV感染が多いのは事実なので要注意だね。避妊の必要がなくてもコンドームで感染予防することが大事だ。

(陽介)それからおじさん、アメリカのデータにはオーラルセックスによる感染確率がありませんけど・・・?

(私)うん、そうなんだよ。残念ながらデータはなかった。ただ、数値データはないものの、本文の中にオーラルセックスによるHIV感染は確率こそ低いけど可能性ありとハッキリ書かれていた。

(陽介)あ~、やっぱりアメリカでもオーラルセックスでHIV感染アリの見解なんですね。

(私)その通り。だからコンドームを使うなど予防が必要だね。

(陽介)分かりました。

(私)今日は「本質のHIV」と言う、アメリカのHIVケアの医療者向け本からデータを紹介してみたよ。行為別のHIV感染の確率を日本のデータと比較してみた。

それじゃ今日はこの辺で終わりにしよう。

(陽介)はい、おじさんありがとうございました。

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