2015年第1四半期(1月~3月)のエイズ動向が、厚生労働省エイズ動向委員会より発表されました。(5月27日付け)
その概要を速報であなたにお届け致します。最新のエイズ動向としてご覧下さい。
管理人注記:2015年第2四半期以降、最新のエイズ動向については姉妹サイト「HIV検査完全ガイド」にてご覧下さい。
今回報告されたのは、2014年12月29日から2015年3月29日までの約3ヶ月間のエイズ動向情報です。従って2015年の第1四半期(1月~3月)にあたります。
情報源はこちらです⇒『エイズ動向委員会報告』
今回の発表では新規HIV感染者は221件、新規エイズ患者は100件となり、どちらも前回(2014年第4四半期)よりも減少傾向にあります。詳細は本文にて。
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今回の報告でエイズ動向委員会岩本委員長コメントの中では、
「10代~90代までの幅広い年齢層においてHIV感染の報告が認められた。性別・年齢を問わず、HIVに感染する可能性がある。」
と警告されています。HIVというウイルスは感染力が非常に弱いウイルスではありますが、感染するときは年齢、性別関係なしという訳です。近年、高齢者に「いきなりエイズ」が多い傾向にあり、特に高齢者のHIV検査が重要ということでしょうか。
では、エイズ動向委員会のデータから主要なものをご紹介しましょう。本文のグラフ、表は全て管理人がエイズ動向委員会から公表された数値を元に作成したものです。
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◇2015年第1四半期エイズ動向 目次
1.2015年第1四半期(1月~3月) 新規HIV感染者とエイズ患者の人数
2.2015年第1四半期 新規HIV感染者とエイズ患者の感染ルート
3.2015年第1四半期 新規HIV感染者・エイズ患者年代別分布
4.2015年第1四半期 都道府県別新規HIV感染者・エイズ患者数
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1.2015年第1四半期(1月~3月) 新規HIV感染者とエイズ患者の人数
項目 | 1月-3月 | 前回 | 昨年同時期 |
新規HIV感染者数(人) | 221 | 265 | 243 |
新規エイズ患者数(人) | 100 | 117 | 89 |
合計数(人) | 321 | 382 | 332 |
いきなりエイズの割合(%) | 31.1% | 30.6% | 26.8% |
表1.新規HIV感染者とエイズ患者
表中の前回とは2014年10月~12月(第4四半期)を指します。前回から比較すると新規HIV感染者は44人、新規エイズ患者は17人の減少となっています。いきなりエイズの割合はほぼ横ばい状態です。
いきなりエイズの割合=新規にHIV感染者として報告された人のうち、すでにエイズを発症していた人の割合
それでは個別にデータをみていきましょう。
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2.2015年第1四半期 新規HIV感染者とエイズ患者の感染ルート
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2-1)新規HIV感染者感染ルート
2015年第1四半期(1月~3月)の新規HIV感染者の感染ルートは以下の通りです。
感染ルート | 件数 | 比率 (%) |
異性間性的接触 | 46 | 20.8 |
同性間性的接触 | 146 | 66.1 |
静注薬物使用 | 0 | 0.0 |
母子感染 | 0 | 0.0 |
その他 | 6 | 2.7 |
不明 | 23 | 10.4 |
合計 | 221 |
100.0 |
表2.2015年第1四半期 新規HIV感染者の感染ルート
表2をご覧頂いてお分かりのように新規HIV感染者の最大感染ルートは同性間の性的接触です。146件全て男性同士の性的接触となっています。
なぜ男性同士の性的接触にHIV感染が多いのか?それは当サイトでも再三記事にしてきました。避妊の必要がないのでコンドームを使用しないことが多い、アナルセックスは小さな傷や出血が多い、こうしたことがHIV感染の確率を高めています。・
表2をグラフにしたものが図1です。
図1.2015年第1四半期 新規HIV感染者の感染ルート
図1をご覧頂いて、同性間の性的接触によるHIV感染がいかに多いか、お分かり頂けると思います。異性間、同性間、両方の性的接触を合計すると全体の86.9%を占めます。つまり日本国内において新規HIV感染者は9割近くが性行為によって感染しているのです。
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2-2)新規エイズ患者感染ルート
2015年第1四半期(1月~3月)の新規エイズ患者の感染ルートは以下の通りです。
感染ルート | 件数 | 比率 (%) |
異性間性的接触 | 23 | 23.0 |
同性間性的接触 | 58 | 58.0 |
静注薬物使用 | 1 | 1.0 |
母子感染 | 0 | 0.0 |
その他 | 2 | 2.0 |
不明 | 16 | 16.0 |
合計 | 100 |
100.0 |
表3.2015年第1四半期 新規エイズ患者の感染ルート
新規エイズ患者においても最大感染ルートは男性同士の性的接触となっています。理由は先ほど説明した通りです。
表3をグラフにしたものが図2です。
図2.2015年第1四半期 新規エイズ患者の感染ルート
異性間、同性間、両方の性的接触を合わせると全体の81%となります。新規エイズ患者の8割は性行為によって感染しています。
新規HIV感染者の9割近く、新規エイズ患者の8割が性行為によって感染しています。いかにコンドームがHIV感染予防に有効か、この結果からも分かりますね。
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3.2015年第1四半期 新規HIV感染者・エイズ患者年代別分布
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新規HIV感染者とエイズ患者の年代別分布データをご紹介します。
3-1)2015年第1四半期 新規HIV感染者の年代別分布
年齢区分 | 件数 | 比率 (%) |
10歳未満 | 0 | 0.0 |
10歳~19歳 | 2 | 0.9 |
20歳~29歳 | 68 | 30.8 |
30歳~39歳 | 69 | 31.2 |
40歳~49歳 | 57 | 25.8 |
50歳~59歳 | 20 | 9.0 |
60歳~69歳 | 3 | 1.4 |
70歳以上 | 2 | 0.9 |
不明 | 0 | 0.0 |
合計 | 221 |
100.0 |
表4.2015年第1四半期 新規HIV感染者の年代別分布
この表だけでは分布が直観的に分かりずらいのでグラフにしてみました。図3をご覧下さい。・
表4をグラフにしたものが図3です。
図3.2015年第1四半期 新規HIV感染者の年代別分布
図3をご覧頂いてお分かりのように新規HIV感染者は20代から40代に集中しており、全体の87.8%を占めています。ただ、冒頭にエイズ動向委員会岩本委員長のコメントをご紹介しましたが、感染者は10代から90代まで幅広く存在します。HIV感染に年齢は関係ありません。
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3-2)2015年第1四半期 新規エイズ患者の年代別分布
年齢区分 | 件数 | 比率 (%) |
10歳未満 | 0 | 0.0 |
10歳~19歳 | 1 | 1.0 |
20歳~29歳 | 12 | 12.0 |
30歳~39歳 | 32 | 32.0 |
40歳~49歳 | 30 | 30.0 |
50歳~59歳 | 18 | 18.0 |
60歳~69歳 | 3 | 3.0 |
70歳以上 | 4 | 4.0 |
不明 | 0 | 0.0 |
合計 | 100 |
100.0 |
表5.2015年第1四半期 新規エイズ患者の年代別分布
こちらも表では感覚的に分かりずらいのでグラフをご覧頂きましょう。
表5をグラフにしたものが図4です。
図4.2015年第1四半期 新規エイズ患者の年代別分布
図4を図3と比べてみて下さい。新規エイズ患者の年齢層(図4)の方が高齢化しているのが分かります。これはHIV感染からエイズ発症までの潜伏期間が数年から10数年と長いことが理由としてあります。
しかし、同時に高齢者の方がHIV検査を受ける人の割合が少ないのではないでしょうか。第1四半期全体の「いきなりエイズ」の割合は31.1%ですが、50歳以上に限ってみると実に50%まで跳ね上がります。
高齢者の方が、「まさか自分が・・・」との思いが強いのではないでしょうか。何度も書きますがHIV感染に年齢は関係ありません。
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4.2015年第1四半期 都道府県別新規HIV感染者・エイズ患者数
2015年第1四半期(1月~3月)の都道府県別HIV感染者、エイズ患者の動向を表にしてあります。また今回までの累計データも載せました。赤字は特に感染者の多い都道府県です。
区分 | 新規HIV感染者 | 新規エイズ患者 | ||
都道府県 | 今回 | 累計 | 今回 | 累計 |
北海道 | 3 | 238 | 4 | 147 |
青森県 | 0 | 48 | 1 | 29 |
岩手県 | 0 | 27 | 2 | 31 |
宮城県 | 2 | 119 | 2 | 82 |
秋田県 | 0 | 21 | 0 | 23 |
山形県 | 0 | 23 | 0 | 23 |
福島県 | 0 | 63 | 2 | 45 |
茨城県 | 2 | 518 | 0 | 314 |
栃木県 | 2 | 238 | 3 | 192 |
群馬県 | 1 | 180 | 0 | 132 |
埼玉県 | 4 | 484 | 2 | 330 |
千葉県 | 8 | 743 | 7 | 507 |
東京都 | 71 | 6,366 | 21 | 1,973 |
神奈川県 | 16 | 1,170 | 10 | 570 |
新潟県 | 2 | 87 | 0 | 57 |
山梨県 | 1 | 107 | 1 | 45 |
長野県 | 1 | 301 | 0 | 194 |
富山県 | 0 | 36 | 2 | 28 |
石川県 | 0 | 72 | 1 | 37 |
福井県 | 1 | 48 | 0 | 31 |
岐阜県 | 4 | 131 | 1 | 110 |
静岡県 | 9 | 396 | 1 | 196 |
愛知県 | 18 | 1,004 | 7 | 509 |
三重県 | 1 | 145 | 0 | 84 |
滋賀県 | 2 | 71 | 1 | 56 |
京都府 | 1 | 222 | 2 | 108 |
大阪府 | 41 | 2,153 | 7 | 693 |
兵庫県 | 6 | 371 | 2 | 209 |
奈良県 | 2 | 99 | 1 | 68 |
和歌山県 | 1 | 57 | 0 | 46 |
鳥取県 | 0 | 13 | 1 | 15 |
島根県 | 1 | 18 | 0 | 7 |
岡山県 | 3 | 118 | 3 | 73 |
広島県 | 1 | 205 | 2 | 103 |
山口県 | 1 | 55 | 0 | 19 |
徳島県 | 1 | 30 | 1 | 21 |
香川県 | 2 | 52 | 2 | 39 |
愛媛県 | 1 | 70 | 0 | 50 |
高知県 | 0 | 34 | 1 | 20 |
福岡県 | 6 | 441 | 5 | 209 |
佐賀県 | 0 | 27 | 0 | 13 |
長崎県 | 0 | 46 | 1 | 29 |
熊本県 | 1 | 75 | 1 | 55 |
大分県 | 0 | 48 | 0 | 25 |
宮崎県 | 1 | 42 | 1 | 32 |
鹿児島県 | 0 | 75 | 0 | 54 |
沖縄県 | 4 | 192 | 2 | 100 |
合計 | 221 | 17,079 | 100 | 7,733 |
表6.都道府県別新規HIV感染者・エイズ患者数
なお、このデータはあくまでも報告地ベースであり、新規のHIV感染者、エイズ患者が報告された都道府県に居住しているとは限りません。例えば北海道に住んでいる人が東京に遊びに来てHIV感染が見つかれば東京でカウントされます。
表4から、新規のHIV感染者、エイズ患者の多い都道府県は、東京、大阪、神奈川、千葉、愛知などです。
また、あなたのお住まいの都道府県でHIV感染者やエイズ患者が少ないからといって、それはあなたがHIVに感染するリスクが少ないと言うことではありません。どうぞ誤解されないようにお気をつけ下さい。
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5.保健所などの抗体検査数
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2015年第1四半期(1月~3月)に保健所や地方自治体の実施するHIV抗体検査を受けた件数は以下の通りでした。
◇2015年1月~3月の保健所などにおける抗体検査件数
時期 | 今回 | 前回 | 昨年同時期 |
件数(件) | 31,445 | 37,569 | 35,481 |
表7.保健所抗体検査数(保健所以外の自治体が実施する検査を含む)
ご覧のように、前回から6,124件、昨年同時期から4,036件の減少となっています。保健所でのHIV検査は2008年をピークに減少して横ばい状態を続け、やっとここ数年は微増傾向でした。しかし、2015年の第1四半期としてはまた減少傾向みたいで心配です。
保健所でのHIV検査は無料・匿名だしスタッフも揃っています。まずは保健所でのHIV検査がオススメです。でも、どうしても保健所に行けないあなたには自宅で使えるHIV検査キットもあります。心配や不安があれば放置しないで下さい。
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6.献血件数、及びHIV抗体検査陽性件数
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2015年の1月~3月に献血を受けた件数、及びHIV陽性が発見された件数をご紹介したいと思います。
◇2015年1月~3月の献血件数
時期 | 献血件数 | HIV陽性件数 | 10万人当り |
件数(件) | 1,246,253 | 15 | 1.204 |
表8.献血件数とHIV陽性件数
2013年の11月末に献血からHIV感染が発生するという事故がありました。その事故を受けて日本赤十字では2014年8月から献血で集めた血液を完全個別NAT検査にかけています。
それでもHIV感染初期の血液では見逃してしまう可能性があります。従って献血をHIV検査代わりに使うことは絶対に止めて下さい。血液感染の恐れがあります。
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7.まとめ
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以上、2015年の第1四半期(1月~3月)のエイズ動向をご紹介しました。前回(2014年10月~12月)と比較すると新規HIV感染者、新規エイズ患者、共に減少しています。しかし、まだ第1四半期だけのデータなので今後どうなるか予断を許さないところです。
ここにご紹介したデータは国内のエイズ動向ですが、HIV感染者が減少傾向にあるといってもあなたご自身のHIV感染リスクが減った訳ではありません。どうかくれぐれもHIVに感染しないようご用心下さい。
そしてあなたに少しでも不安があるなら早期のHIV検査を受けて下さい。現在、HIV感染は致死的疾患ではありませんが、それでもエイズを発症してからの治療は困難です。死に至らなくても重大な後遺症が残ることもあります。
早期のHIV検査はあなたにとって救命的検査であることを忘れないで下さい。