厚生労働省エイズ動向委員会から、平成25年(2013年)第1四半期(1月~3月)のエイズ動向が発表になりました。(5月22日)

エイズ動向委員会では四半期(3ヶ月)ごとのエイズ動向を発表しています。⇒『エイズ動向』

この報告の中から主要数値や私的に気になる点をご紹介してみましょう。

◇平成25年第1四半期(1月~3月)エイズ動向主要数値

1.平成25年第1四半期 新規HIV感染者とエイズ患者の人数

項目 1月-3月 前期 昨年同時期
新規HIV感染者数(人) 227 257 246
新規エイズ患者数(人) 107 114 105
合計数(人) 334 371 351
いきなりエイズの割合(%) 32.0 30.7 29.9

表1.新規HIV感染者とエイズ患者

表1をご覧頂いてお分かりの通り、前期(平成24年10月~12月)に比べて新規HIV感染者も新規エイズ患者も減少しています。ただし昨年同時期に比べると新規エイズ患者は2名増えています。

それから報告されたHIV感染者における「いきなりエイズ」の割合が32.0%に増えています。これはあとで説明しますが保健所などで行っているHIV抗体検査の受検数減少と関係があるかも知れません。

いきなりエイズの割合=((規エイズ患者)÷(新規HIV感染者+新規エイズ患者))×100%

すなわち、その年のHIV感染者全体における新規エイズ患者(=いきなりエイズ)の割合を意味します。

 

HIV検査を受ける人が減った⇒潜在的なHIV感染者が増える⇒いきなりエイズが増加

こんな図式です。

HIV感染症は自覚症状がないので、HIV検査を受けるしか感染を確認する方法がありません。そのHIV検査を受ける人が減っているのですから、HIV感染に気付かない人が増えている可能性があると思うのです。

これは私がそう思うだけで、確証はありません。

平成20年(2008年)をピークに保健所のHIV抗体検査を受ける人は減ったままです。この受検数が減ったことが「いきなりエイズ」の報告件数、報告率を上げなければいいのですが。とても気になるところです。

では引き続き主要データをご紹介していきましょう。

2.新規HIV感染者・新規エイズ患者の感染ルート

平成25年第1四半期における新規HIV感染者と新規エイズ患者の感染ルートは以下の通りでした。

新規HIV感染ルート
図1.新規HIV感染者感染ルート

新規エイズ感染ルート
図2.新規エイズ患者感染ルート

図1、図2をご覧いただいてお分かりの通り、新規HIV感染者も新規エイズ患者も性的接触による感染が最大感染ルートです。そして性的接触の中でも同性間(男性同士)の性的接触が最も感染数が多くなっています。

これは当サイトで何回か記事にしましたが、男性同士の性的接触の場合アナルセックスによって出血や傷ができやすいことが感染しやすい原因とされています。

3.新規HIV感染者・新規エイズ患者の年代別分布

新規のHIV感染者やエイズ患者はどの年代に多いのか、年代別分布のグラフを作ってみました。

新規HIV年代別
図3.新規HIV感染者の年代別分布

20代、30代に感染者が多いのですが、50歳以上にも全体の14.5%の感染者がいます。このグラフを見るとHIV感染に年齢は関係ないことがよく分かります。

新規エイズ年代別
図4.新規エイズ患者の年齢別分布

30代に最も多くのエイズ患者がいるのですが、50歳以上にも全体の28%が存在します。HIVは感染してからエイズ発症までの潜伏期間が長いので、高齢者に新規エイズ患者が多いのは分かります。でも、その理由とは別に高齢者ほどHIV検査を受けずにいきなりエイズを発症している可能性もあると思います。

4.保健所などにおけるHIV抗体検査数

平成25年第1四半期(1月~3月)における、保健所などのHIV抗体検査受検数

●20,911件 (前期 33,820件)

HIV検査を受ける人が減っています。保健所では無料・匿名でHIV検査を受けることが出来るので、あなたもぜひ検査を受けて下さい。

5.献血件数とHIV陽性件数

平成25年第1四半期(1月~3月)における、献血件数とHIV陽性件数

●献血件数 1,304,418件 

●HIV陽性 23件

この献血件数におけるHIV陽性件数を見ると、ちょっと気になる点があります。献血10万件当たりのHIV陽性率を見ると、

●平成25年 第1四半期(1月~3月) 1.763件

●平成24年通期 1.290件

こんな感じです。平成25年になってHIV陽性率が高くなっています。これは潜在的なHIV感染者の増加を示すデータと言えないでしょうか。

ここ数年は年間のHIV陽性件数は100件を大きく下回っていたのですが、今年は第1四半期のペースでいけば年間で100件近くまでいきそうです。

◇まとめ

●新規HIV感染者も新規エイズ患者も前期よりは減少している。

●HIVの最大感染ルートは男性同士の性的接触による。

●保健所でHIV抗体検査を受ける件数が減少したままである。

●報告されたHIV感染者におけるいきなりエイズの割合が増えている。

厚生労働省エイズ動向委員会が5月22日に発表した第1四半期(1月~3月)のエイズ動向から、主要数値をご紹介しました。

あなたもHIV感染の予防には十分ご注意ください。そしてもしもHIV感染が不安なら、どうぞ早期のHIV検査を受けて下さい。

早期のHIV検査は救命的検査であり、エイズ発症を防ぐことが可能です。

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