エイズを発症するのは意外と高齢者に多いのです。あなた、ご存知でしたか?

何となく性感染症というと、若者の病気、みたいな印象がありますね?確かにクラミジアや淋菌などは若い世代に感染者が多いのです。

ところが、エイズとなるとちょっと事情が違います。

まず、厚生労働省エイズ動向委員会が今年の2月に発表した平成24年のデータから、新規HIV感染者と新規エイズ患者の年代別分布を見てみましょう。

新規HIV感染者・新規エイズ患者

グラフの見方がお分かりでしょうか。各年代で、左の青い棒グラフが新規HIV感染者で、右の赤い棒グラフが新規エイズ患者を表しています。

まず、新規HIV感染者についてみると、20代、30代に感染者が多いことが分かります。それでも50歳以上にも全体の11.7%の感染者がいます。

更に新規エイズ患者を見ると、50歳以上に全体の30.8%も患者がいます。何と20代、30代よりも50歳以上の方がエイズ患者が多いのです。

確かにHIV感染からエイズ発症までの潜伏期間が数年間と長いため、エイズ発症年齢が高齢化するのは分かります。しかし、それだけが理由でしょうか?

各年代の左右のグラフの長さに注目してください。ほとんどの世代は左の青い棒グラフの方が赤い棒グラフよりも長くなっています。

ところが50歳以上だけは赤い棒グラフの方が長くなっています。これは何を表しているかと言えば、新規HIV感染者よりも新規エイズ患者の方が多いことを表しています。

つまり、平成24年においては、50歳以上で新規に見つかったHIV感染者のうち、50%以上は「いきなりエイズ」を発症して見つかったことになります。

実際の数値で計算してみると、

137÷(117+137)=53.9%

となります。新規エイズ患者も新規HIV感染者には違いないのです。ただエイズを発症してから見つかったということです。

現在の医学ではHIVに感染しても早期治療ができればエイズ発症を防ぐことが出来ます。従って「いきなりエイズ」の比率が大きいのはとても残念なことです。

50歳以上のHIV感染者に「いきなりエイズ」の割合が大きいのは、それだけHIV検査を受ける人が少ないせいもあるような気がします。

というのも、私の50代の友人2人にHIV検査を勧めてみたところ、2人とも保健所や病院に行くのが嫌だと言いました。どうにも世間体を気にしているのです。いい年をして恥ずかしいと言うのです。

これは確かにあるかも知れません。大都会とは違って小さな町のたった1つしかない保健所です。知った顔にバッタリ会う可能性もあります。

別にHIV検査を受けることは恥ずかしいことでも何でもありませんが、やはり高齢になるほど気になるのですね。これは仕方ないかも知れません。

結局、私の友人は2人ともHIV検査キットを購入して自宅検査となりました。幸いにも2人とも陰性でした。

では、平成24年以外の年はどうだったのでしょうか。私は厚生労働省エイズ動向委員会のデータを調べてみました。その結果が下のグラフです。

50歳以上のいきなりエイズ

いかがでしょうか。平成24年に限らず、毎年50歳以上の「いきなりエイズ発症率」は非常に高いのです。

注)いきなりエイズ発症率=((新規エイズ患者)÷(新規HIV感染者+新規エイズ患者))×100%

すなわち、その年のHIV感染者全体における新規エイズ患者(=いきなりエイズ)の割合を意味します。「発症率」というのはちょっと不適切な表現かも知れませんが、他にいい言葉思い浮かびませんでした。意味としては前述の通りです。

 

私なりに、50歳以上に「いきなりエイズ」が多い理由を考えてみました。

●若い世代に比べてHIV感染に対する知識や情報が不足している。

●そのため、HIV検査を受ける人が少なく、かつ警戒感も少ない。

●今の高齢者は元気な人が多いので、HIVに感染する機会も多い。しかも感染予防が不足している。

他にも理由があるかも知れませんが、要するにHIV感染もエイズ発症も、年齢には関係ないと言うことです。どの年代であってもHIVは感染するし、エイズを発症します。

特に50歳以上のあなた。もしもHIV感染に心当たりがあるような行為をしたら、HIV検査を受けて下さい。どうしても保健所や病院に行くのが嫌なら、私の友人たちのようにあなたの自宅でHIV検査キットを使うことも出来ます。

自分だけは大丈夫だなどと、根拠のない自信でHIV検査を無視していると、「まさか自分が・・・」なんてことになります。

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(こちらの記事の方がデータが新しいです。)

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