ジカ熱の流行が大きなニュースになっています。妊婦が感染すると胎児が小頭症になるリスクがあるとして警戒されています。
このジカ熱はこれまで蚊が媒体となって感染すると思われていました。ところが蚊以外にも性行為が新たな感染ルートであると分かりました。つまり性感染症として人から人へと感染するのです。
今回はジカウイルスとHIVの違いについて私の調べたことを甥っ子の陽介に話します。ぜひあなたもごいっしょに聞いて下さい。
(甥っ子陽介)おじさん、ジカ熱が大きなニュースになってますね。 | (私)陽介、その通りだ。新たに性行為によっても感染すると分かってニュースになってるね。 |
![]() |
![]() |
(陽介)でも性行為で感染すると分かったことがなぜ大きなニュースになるんですか?
(私)それは感染者が増える恐れがずっと大きくなるからだよ。ジカ熱はこれまで蚊が媒体となって感染するとされていたよね。
(陽介)はい。そうでした。ジカ熱が発生している国では長袖のシャツで蚊に刺されないように用心するとか、水たまりをなくして蚊の発生を防ぐとかテレビのニュースで見ました。
(私)そうだね。でも、今度性行為によっても感染すると分かった。蚊に刺されなくても感染する訳だ。人から人へ感染するとなると国境関係なしに感染が広まる可能性があるよね。
今朝ラジオを聞いていたら、アナウンサーが
「HIVが広まった時と同じようになるかも知れません。いや、HIVは蚊では感染しないのでHIV以上に感染拡大するかも知れません!」
なんてちょっと興奮気味にしゃべってたよ。BBCネットニュースでも同様の指摘が書かれてたな。
(陽介)そうなんですか。実際そんな可能性があるんですか?
(私)いや、正直良く分からない。性行為感染についてもどのくらいの感染力があるのか詳しくはまだ分かってないみたいだし。世界保健機関(WHO)が1月末に発表したところによると、ジカ熱の感染者は最大で400万人に達する恐れがあるとしてるね。
(陽介)ふ~ん、そうなんですか。ジカ熱は蚊でも感染するし、性行為でも感染するんですね。でもおじさん、HIVは蚊では感染しないんですよね?
(私)そうだ。HIVは蚊にさされても感染しない。前に「これで感染する?しない?」って話の時にその理由を教えたよね。
(陽介)そうでしたね。日本脳炎やマラリアは蚊で感染するけど、HIVは蚊では感染しないってお話でした。
(私)それじゃもう1回、蚊で感染するウイルスと感染しないウイルスの違いを説明しよう。それはジカ熱とHIVの違いでもある訳だ。
(陽介)はい、ぜひお願いします。
(私)まず、蚊によって感染するウイルスの話からしよう。多く人がちょっと勘違いしてることがあるんだよ。
(陽介)勘違い?おじさん、それってなんですか?
(私)陽介は蚊によってウイルスが感染するのはなぜだと思う?
(陽介)え?それは・・・。まず感染した人の血液を蚊が吸って、別の人の血を吸う時に感染した人の血液が入り込むからでしょう?
(私)と言うことは血液感染ってこと?
(陽介)そうですね。いわば蚊と言う注射器による血液感染だと思います。
(私)それが大きな勘違いなんだよ。
(陽介)え!違うんですか!
(私)陽介と同じような勘違いをしている人は多いと思うけどそうじゃない。実は蚊が人を刺すとき、血液が固まらないように蚊は唾液を注入するんだよ。この唾液の中にウイルスが混じってて刺された人の血管に入ってくるんだ。
(陽介)そうなんですか。僕はてっきり感染者の血液が入ってきて感染するんだと思ってました。
(私)蚊が感染者の血を吸うと、血液の中に混じっていたウイルスは蚊の体内で増殖する。そして増殖したウイルスは蚊の唾液腺に入ってくる。そして次の人間の血を吸おうとして唾液を注入するとき、増殖したウイルスが蚊の唾液といっしょに体内に送り込まれる。そこで感染するんだよ。
(陽介)はぁ・・・。そうだったんですね。分かりました。唾液といっしょに侵入するのか。なるほど・・・。
(私)結局、蚊が媒体となって感染するウイルスは蚊の体内で増殖するんだよ。ジカ熱のウイルスも日本脳炎、マラリアのウイルスもみな増殖する。でも。HIVは蚊の体内で増殖することはない。だから蚊によって感染することもないってわけだ。
(陽介)なるほど。よく分かりました。ところでおじさん、ついでにジカ熱についても教えてもらえませんか?日本人で感染した人っているんですか?
(私)私が調べた限り、これまでに日本人でジカ熱に感染した人は3人いる。3人のうち2人はポリネシア、1人はタイで感染し、日本に帰国して感染が報告されている。だからまだ国内感染は発生してない。
(陽介)へぇ、それっていつ頃の話ですか?
(私)2013年に2人、2014年に1人だ。
(陽介)そうですか。ジカ熱ってどんな症状が出るんですか?
(私)そうだね、主な症状は発熱、発疹、頭痛、腹痛、下痢、嘔吐、結膜炎、筋肉痛、関節痛、倦怠感、とまぁ、こんな感じで色々出てくる。でもこれらの症状は4日から7日ほどで治る。薬も解熱剤や鎮痛剤くらいだ。
(陽介)そうなんですか。割と軽い症状ですぐに治るんですね。
(私)そう、大人が感染した場合は大事に至ることはめったにない。ほとんど症状が出ない場合もあるんだよ。ところが妊婦がジカ熱に感染すると胎児が小頭症になる危険性があって、これが大問題なんだよ。
(陽介)小頭症ってどんな病気なんですか?
(私)うん、小頭症っていのは胎児の時や出産した時の脳と頭蓋骨が通常より異常に小さく、脳に様々な損傷が生じる病気なんだよ。死産する場合もあるし、生まれて間もなく死亡することもある。あるいは脳が未発達のまま育ち身体が適切に機能出来ないこともあるんだ。
(陽介)それは怖いですね。妊婦は感染しないように気をつけないと危ないですね。
(私)そうだね。だから感染ルートが蚊だけでなく性行為でも感染するとなれば予防も大変だ。現地のニュースではコンドームの使用を勧めてたね。
(陽介)性感染症としての予防も必要なんですね。
(私)そうだね。私が見たジカ熱の記事によると、感染者の血液中にいるジカウイルスは1週間くらいで駆除されてしまうらしい。
(陽介)症状も7日くらいで消えるって話でしたよね。
(私)そうだね。ところが血液中からウイルスが消えても男性感染者の場合には精液の中にまだウイルスが残ってた例があるそうだ。
(陽介)え~!そうなんですか!それはまたしつこいウイルスですね。
(私)でも何日くらい残っているのか、詳しいことはまだ分かってないみたいだね。
(陽介)おじさん、日本にもウイルスが上陸して流行する恐れがありますか?
(私)厚生労働省のホームページを見ると、日本での流行は可能性が小さいと書かれてる。それはジカ熱が蚊を媒体に感染すると言う前提でね。だから今回、性行為でも感染すると分かれば、また見解が変わってくるかも知れないね。
(陽介)確かにそうですね。ところでジカ熱ってどのあたりで流行してるんですか?
(私)現在もっとも被害が大きいのはブラジルみたいだね。他にも中央アメリカ、南アメリカ、カリブ海域で20を超える国や地域で感染者が報告されているそうだ。
(陽介)それじゃそちら方面に旅行する場合は用心が必要ですね。
(私)まぁそうだけど性感染症で言えば他にも怖い病気はいくらでもあるから、特にジカ熱だからって特別なことは必要ないと思うよ。HIVや梅毒感染の予防をすればジカ熱も予防できる。
後は蚊に刺されないように注意することだね。長袖、長ズボン、防虫スプレーの使用などかな。あと、妊婦さんは流行している国への渡航を控えた方いいって厚生労働省のホームページには書かれてるね。
(陽介)分かりました。
(私)HIVは蚊では感染しないのに、ジカ熱は感染する、その理由が分かったかい?
(陽介)はい、よく分かりました。ウイルスが蚊の体内で増殖するかどうか、そこが分かれ目なんですね。
(私)そうだね。それじゃ今回の話はこの辺で終わりにしよう。
(陽介)おじさん、ありがとうございました。
・