つい先ごろ、献血によるHIV感染が大きなニュースとして報じられました。では、その献血を行っている日赤とはいったいどんな組織なのでしょうか。

そして、本当にHIV検査の結果を教えないのでしょうか、それとも実態としては教えているのでしょうか?

今回は少し別の角度から献血とHIV検査について考えてみます。

(甥っ子陽介)おじさん、日赤ってそもそもどんな組織なんですか? (私)陽介、日赤というのは正式名称を日本赤十字社といって、認可法人の1つだよ。
陽介 私

(陽介)認可法人って何ですか?

(私)普通の法人と違って特別の法律に基づいて設立され、かつ行政官庁の認可を受けた法人だよ。日赤の場合は昭和27年に制定された日本赤十字社法に基づいて設立されたんだ。管轄しているのは厚生労働省だね。

(陽介)そうなんですか。認可法人って、あまりなじみがないですね。

(私)いや、知らないだけでけっこう身近にあるんだよ。例えば日本銀行や預金保険機構なんかも認可法人だ。

(陽介)ふーん、そうでしたか。でも、日本赤十字社ってどんな仕事をするんですか?

(私)それはさっき言った日本赤十字社法によって決められている。災害時や有事には国に協力して国民の救済にあたるんだ。献血事業も大事な業務の1つだね。

(陽介)日赤病院なんかもありますよね。

(私)その通りだね。病院、診療所、血液センター、献血ルームなどもあるね。

(陽介)では日本赤十字社の組織ってどうなっているんですか?

(私)うん。これはあまり知られていないよね。日本赤十字社の代表者すなわち社長は、近衞 忠煇(このえ ただてる)という人なんだ。

(陽介)ひゃぁ~!何だかおえらい名前ですねぇ~!

(私)そうだよ。近衛家は平安時代の公家の家系だからね。もっとも近衞 忠煇は旧肥後熊本藩主細川家の出身であり、近衛家には養子で入ったんだ。第79代内閣総理大臣だった細川 護熙(ほそかわ もりひろ)氏は実のお兄さんにあたる。

(陽介)そうだったんですか。知りませんでした。

(私)全国の都道府県に日本赤十字社の支部があり、だいたい知事が支部長についてるんだ。

(陽介)そして日本では献血をやっているのは日赤だけですよね?

(私)もちろんそうだよ。でも献血だけでは日本の血液需要はカバーできない。足りないんだね。

(陽介)そおれじゃもっと献血してくれる人を増やさないといけないんですね。

(私)まぁ、そうだね。実際、献血件数は年々減少してるんだよ。このグラフを見てごらん。

このグラフは1987年からの献血件数と、献血で見つかったHIV陽性件数の推移だ。陽介、このグラフから何が分かるかい?

(陽介)えーっと、まず献血件数はどんどん減っています。ここ数年は横ばいですけど下げ止まりって感じですね。

(私)そうだよね。2012年の献血件数を1987年と比べると35%も減っている。

(陽介)それなのに献血で見つかるHIV陽性件数はずっと増加傾向だったんですね。

(私)そうだね。1つには検査の精度が上がって、それまでは見つけられなかったHIV感染が見つかるようになったことも要因だね。そしてここ数年はHIV陽性件数が減っているね。

(陽介)献血件数はほぼ横ばいなのに、なぜHIV陽性件数が減ったんですか?

(私)うん、日赤によると献血前の問診でHIV検査目的の受検者に遠慮してもらうことを強化した成果だそうだ。

(陽介)そうなんですか。それでは今回のHIV感染発生を受けて、更に問診が厳しくなるんですか?

(私)うーん、そういう声もあるけどね。でも、さっきも言ったけど現状の献血ではまだ血液が足りない。もっと献血件数を増やしたいんだよね。そこにあまり問診を厳しくしたらどうなるだろう?

(陽介)そうですね。個人のプライバシーを根ほり葉ほり聞かれてチェックされたら、中には献血に行くのを止める人もいるかも知れませんね。

(私)そうだよね。そこが日赤としても頭の痛いところだよ。

(陽介)でも、献血の件数を確保することと、安全性を確保することは両方大事ですよね。

(私)まさにその通りだね。HIV感染が発生してしまった後の、最近の日赤のホームページを見ると、2014年からは検査体制を改めるらしい。これまでNAT検査は20人分まとめて行っていたけど、それを1人ずつ個別に行うことにすると書いてある。

(陽介)そうなんですか。『献血のNAT検査をパスしたHIV!』でおじさんが言ってた話が本当になったんですね。

(私)これでも100%完全に安全とは言えない。だからHIV検査目的で献血を受けるのを止めるよう、引き続き訴えているよ。

(陽介)そうなんですね。HIV検査目的の献血、これがなくなればぐっと安全性が高まりますね。

(私)そうだね。その意味ではやはりHIV陽性の告知がカギだね。いくら日赤が教えていないと表向きの話をしても実際に告知を受けた例を知っている人がいる。

(陽介)そうでしたね。

(私)ただ、HIV陽性の告知は日赤の表の仕事じゃないし、全員に行っている保証もない。決して献血はHIV検査の代わりにはならない。

(陽介)それも以前おじさんに教えてもらいましたね。

(私)新聞報道によると、厚生労働省の血液対策課のコメントが紹介されていた。そのコメントによると、

『日赤としてはHIV陽性の告知は行わない。しかし、担当する医師が個人的に治療して欲しいという理由から献血者に告知を行う例がある。この告知を日赤が止めることは出来ない。』

ということだ。

(陽介)うーん、だとすると、必ずしもHIV陽性者全員が告知を受ける保証はないですね。個別の医師の判断によるってことですよね。

(私)そう。前から言ってる通りだね。それに、おじさんが読んだ献血でHIV陽性が判明した人の手記やブログでも、確かに担当医師から連絡があったとする例が多い。

(陽介)そうなんですか。血液センターからの正式な連絡ではないんですね。

(私)確かなことは分からないけど、たぶん表向き告知しないとしているから正式連絡は出来ないだろうね。

(陽介)うーん・・・。やっぱり献血はHIV検査の代わりにはならないってことですね。

(私)そうだね。HIV検査は決して大げさでなく自分の命に係わる検査だから、絶対確実な検査を受けて欲しいね。

(陽介)本当にその通りですね。

(私)今回は日本赤十字社とはどんな組織なのか、そしてHIV陽性告知を行っているのか、再度検証してみた。

(陽介)おじさん、よく分かりました。

(私)では、今回の話はこれでお終いだ。

(陽介)ありがとうございました!

■関連記事:この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます。
『献血のNAT検査をパスしたHIV!』
『献血でHIV感染が分かるか?』

___________________________
■「この症状はもしや・・・」
不安になったその時、あなたはどうするべきか?

■自宅でHIV検査体験記。
年間に6万5000個も使われている、その秘密とは?

___________________________

補足資料