私が少し前に読んだ本がこちらの本です。

HIV/AIDS患者のトラブルシューティングとプライマリ・ケア-頭が真っ白にならないために

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『HIV/AIDS患者のトラブルシューティングとプライマリ・ケア』 岩田健太郎 著

この本の中に現在、そして将来的なHIV・エイズに関する課題が色々書かれてありました。その中から特に私が気になった点を甥っ子の陽介に話したいと思います。あなたもごいっしょに聞いて下さい。

 

(甥っ子陽介)おじさん、HIVやエイズとプライマリ・ケアってどう関係があるんですか? (私)陽介、今日はまたえらい難しい質問だね。プライマリ・ケアって知ってるのかい?
陽介 私

(陽介)いえ、実は知らないからそれも教えてもらおうと思って。

(私)なんだ、質問しといて知らないのか。

(陽介)はい。ただ、「HIV検査にはプライマリ・ケアの役割が大事」って記事を見つけて。いったいどう言う意味なんだろうと思ったものですから。

(私)いいよ、それじゃ説明してあげよう。まず、プライマリ・ケアって言葉の意味だね。日本プライマリ・ケア連合学会のホームページにはこう書かれているよ。

『身近にあって、何でも相談にのってくれる総合的な医療』

また、こうも書かれている。

『みなさんの身近な立場で健康をサポートする医療、介護、福祉、保健をまとめて「プライマリ・ケア」と呼びます。』

どうだい?この説明で何となくイメージが湧くかい?

(陽介)はぁ・・・何となく分かったような気もします。今のおじさんの説明を聞いて思い浮かんだのが2つあります。1つはいつも僕がお世話になってる町の病院です。どこか悪いとこがあると、真っ先にそこに行きます。その病院で手に負えないと専門病院へ紹介状を書いてくれます。

それからもう1つは僕の家の近くにある病院と介護老人ホームがいっしょになった施設です。医療、介護、福祉が一体になってます。

(私)ふむふむ、陽介のイメージで合ってると思うよ。プライマリ・ケアのプライマリとは最初の、とか初等の、とか言った意味だね。病気になってまず最初にお世話になる病院のイメージだね。しかも介護、福祉までつながってると尚いいよね。

(陽介)でもおじさん、そのプライマリ・ケアとHIV検査がどう結びつくんですか?

(私)うん、そこだね。その説明には私が用意した2つのグラフを見てもらおう。まずはこのグラフだよ。

どうだい?このグラフに見覚えはないかい?

(陽介)あ!覚えてます!『HIV感染は一般病院と診療所で見つかる?』で教えてもらった時に見せてもらいました。

(私)そうだったね。これは都立駒込病院に運び込まれたHIV感染者が、どこから紹介されて来たかを示したグラフだ。都立駒込病院はエイズ中核拠点病院の1つで、言わばエイズに関しては先端医療をやっている。そんなエイズ治療の専門病院に一般の病院や診療所、保健所などからHIV感染者が紹介されて治療に来るんだよ。

(陽介)はい、そうでした。

(私)このグラフを見てもらえば分かる通り、一般病院、診療所で全体の8割近くを占めてる。これはまさにプライマリ・ケアの現場でHIV感染者が見つかっているってことだよね。

(陽介)はい、そうですね。

(私)それからもう1つ別のグラフを見てもらおう。これだよ。

HIV検査を受けた理由

このグラフはエイズ治療・開発センター(ACC)で治療を受けたHIV感染者が、どんな理由でHIV検査を受けたかを調べたものだよ。つまりACCに来る前に、どんなきっかけでHIV検査を受けることになったのかを調べたんだね。

先ほどの都立駒込病院同様、一般の病院で医師にHIV検査を勧められ、その検査の結果HIV感染が分かったと言う人が46.2%で最も多い。

(陽介)ほんとですね。自分で自発的にHIV検査を受けようと思った人は44.2%ですか。

(私)つまりこのデータからも一般病院、すなわちプライマリ・ケアの現場におけるHIV検査がいかに重要か分かるね。HIV感染に気付いていない患者に対して、現場の医師が様々な症状や問診からHIV検査を勧めて、その結果がエイズ発症前の早期発見につながっている。

(陽介)なるほど。初期のHIV感染症って特異的な症状はないですもんね。梅毒やクラミジアなど、何かの性感染症に感染していると分かった人には当然HIV検査も勧めるでしょうけど、それって先ほどのグラフだとわずか3.8%ですもんね。

(私)そうだね。今やHIV感染症の治療はいかに早期発見できるか、ここが最も注力される点だね。早期に見つけることが出来れば抗HIV薬によってエイズ発症を防ぐことが出来る。

(陽介)だからプライマリ・ケア、すなわち僕たちが真っ先に行く病院における対応が大事ってことですね。

(私)そうだよ。プライマリ・ケアの現場でHIV感染の可能性を考慮した対応が今以上に出来れば、もっとエイズ患者を未然に防ぐことも可能になるよね。そしてもう1つ、別の視点からプライマリ・ケアの重要性が指摘されている。

(陽介)どんな点ですか?

(私)それはね、今はHIVに感染してもちゃんと治療をすれば寿命が格段に延びている。これも前に話したよね?

(陽介)はい。『エイズの治療とは?』の話の時に教えてもらいました。

(私)しかしエイズで亡くなる人は減っているけど、新規にHIVに感染する人や、エイズを発症する人は減っていない。これも陽介に話したよね。

(陽介)はい。

(私)HIVに感染する人、エイズを発症する人は減ってないのに亡くなる人は減っていると言うことは、抗HIV治療を受けながら生活を続けてる人がどんどん増えてるってことだ。

(陽介)あ~、なるほど!それはそうですね。

(私)『HIV感染者・エイズ患者の累計は? 』でも話したけど、平成24年末の時点で、新規HIV感染者と新規エイズ患者の累計は24,561人となってる。これからもっと増えていくよね。

(陽介)はい。

(私)するとこれからどんな状況が生まれると思う?

(陽介)え~っと・・・。HIV感染の治療を受けながら生活する患者が増えるってことですよね・・・。

(私)その通り。どうなる?

(陽介)患者がどんどん増えると病院も医師も足りなくなるんじゃないですか?

(私)その通り!抗HIV治療そのものはやはりエイズ中核拠点病院みたいな専門性を要求される医療機関が必要だね。でもそうした患者がHIV感染症以外の病気を患うことも当然起こる。例えば普通に風邪や腹痛、頭痛を起こすことはあるよね。

(陽介)はい。僕でもしょっちゅうあります。

(私)そうした場合に全てエイズ中核拠点病院で対処しようとしても限界があるよね。そうした拠点病院とプライマリ・ケアを受け持つ一般病院とがうまく連携して患者のフォローにあたることが必要になってくる訳だよ。

(陽介)なるほど。でもおじさん、現状だとHIV陽性だと分かると診察を拒否する病院があるんでしょう?

(私)そう、残念だけど陽介の言う通りだね。まぁそれも無理もないケースもある。例えば人口の少ない地方都市のプライマリ・ケアの現場ではHIV陽性者と向き合う機会なんて極めて少ないよね。何の経験もないのに、いきなりHIV陽性者の対応を求められても困惑するよね。

(陽介)あ~、そうですね。それは無理ないですよね。

(私)そうした状況をどう改善していくか、それは医療の専門家にお任せするとして、まずはどんな課題があるのかもう一度整理してみよう。

(陽介)はい。今日おじさんに教えてもらった要点は、

①HIV感染者の多くは一般病院でHIV検査を勧められてHIV陽性が分かった。だからもっとプライマリ・ケアによってHIV感染者が早期に見つかればエイズ発症を減らすことが出来る。

②抗HIV治療の進歩によって、HIVに感染しても治療をしながら生活を送る患者が増えている。専門病院だけでは全ての患者をカバー出来なくなってくる。

この2点ですかね。

(私)そうだね。少し補足すると、今の日本ではHIVに感染したと報告された人の約30%はすでにエイズを発症している。この割合はもう何年も変わっておらず、早期のHIV検査をもっと広める必要がある。

(陽介)『いきなりエイズとは?』でもそう話してましたね。

(私)それからHIVの治療は現状では生涯治療になるので、患者はどんどん高齢化していく。当然介護や福祉の問題が出てくる訳で、こうなるともうエイズ専門病院だけでは限界があり、プライマリ・ケアとの連携なしには解決出来ない。

(陽介)なるほど。こうしてみると、HIV感染者、エイズ患者、共にプライマリ・ケアに期待される役割は大きいですね。

(私)そうだね。私たちもプライマリ・ケアに期待しよう。

(陽介)でも、今すぐの話としては、いつものかかりつけの病院でHIV検査をどこまで考慮してくれるか分かりません。HIV感染の可能性に心当たりがあれば、自分からHIV検査を受けるしかないですね。

(私)そうだよ。元々HIV感染症は症状からは判断出来ないので頭痛、発熱、腹痛、咽頭炎、発疹などで町の病院に行ってもHIV検査を勧められるとは限らない。自分の行為を振り返って、感染リスクありと思えば自らHIV検査を受けることだね。

(陽介)分かりました。

(私)それじゃ今回の話はこれまでにしよう。

(陽介)おじさん、ありがとうございました。

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