当サイトで何回も記事にしてきましたが、抗HIV医療は進歩し今ではHIV感染症は慢性疾患に近づいてきました。
高額な医療費も公的支援を受けることで最少負担に抑えることが出来ます。
しかし、そんな抗HIV医療でも大きな問題を持っています。
今回は私が調べた抗HIV医療の問題点を甥っ子の慎太郎に話します。
ぜひあなたもいっしょに聞いて下さい。
【今回のテーマと内容】 ・ ●テーマ:抗HIV医療の問題点とは何か? ・ 1.抗HIV医療に関する要望書 ・ 2.HIV感染による免疫機能障害の認定基準 ・ 3.まとめ ・ |
(甥っ子慎太郎)おじさん、今日のお話は何ですか? |
![]() |
(私)慎太郎、今日は抗HIV医療の問題点についてだよ。 |
![]() |
(慎太郎)抗HIV医療の問題点ですか?
(私)そうだよ。今までにも抗HIV医療の話は何度もしてきたよね?
(慎太郎)はい。例えば、
こんなお話ですよね。
(私)そうだったね。
(慎太郎)おじさんの言う、抗HIV医療の問題点って何ですか?
(私)実は患者が負担する医療費を減らすための公的支援の話なんだよ。
(慎太郎)それは前に色んな支援制度があるって教えてもらいましたよね。
(私)そうだったね。その中で、HIV陽性者は免疫機能障害の認定を受けると、治療助成を受けることが出来る。
(慎太郎)はい。教えてもらいました。身体障碍者手帳が交付されるんですよね。
(私)そうだ。この免疫機能障害の認定基準に問題があるんだよ。
(慎太郎)へぇ、そうなんですか。
(私)それでね、その問題点を指摘した上で改善するよう、厚生労働省に要望書を出してるNPOがあるんだ。
(慎太郎)どこですか?
(私)「特定非営利活動法人ぷれいす東京」と、「特定非営利活動法人日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス」の2つだよ。
2017年7月13日付けで要望書が出されている。
(慎太郎)それで、具体的にはどこが問題で、どんな要望を出しているんですか?
(私)うん、簡単に言えば、
「今の認定基準では早期の抗HIV医療が受けにくい」
と言う問題があるんだよ。
(慎太郎)うーん、それってどういうことですか?
(私)前に、『早まる?抗HIV薬投与のタイミング 』と言う話をしたよね。
(慎太郎)はい。抗HIV治療は免疫力が低下する前に開始した方が、その後の治療経過が良いって話でしたよね。
確かCD4値による判断基準も、以前は350以下になったら治療開始だったのが、今では500以下で開始が推奨されているんですよね。
(私)その通り。日本だけでなく世界中の抗HIV医療の方針として早期治療開始が定着している。
(慎太郎)それのどこが問題なんですか?
(私)つまり、抗HIV治療としては年々早期治療開始が定着してきている。それなのに、患者を支援する仕組みはちっとも変わらず昔のままなんだよ。
つまり、早期治療開始を支援する仕組みが追いつていない。ここが問題なんだ。
(慎太郎)支援の仕組みが追いついてない?
(私)そうだ。今使われている、HIV陽性者の免疫機能障害の認定基準は1998年に作られたもので、そのまま改定されていない。
(慎太郎)そんな前の基準なんですか!当時だと、抗HIV治療開始の判断は、今より時期が遅かったんでしょうね。
(私)その通り。当時はね、
「可能な限り抗HIV治療の開始時期は遅らせる」
と言う考え方だった。
なぜかと言うと、抗HIV薬は一度飲み始めると中断することが出来ない。生涯治療となる。だから開始には慎重だった。
(慎太郎)そんなお話でしたね。
(私)今と違って副作用のリスクも大きかったし、薬の種類、量も多くて患者の負担はとても大きかった。
薬の大きさも今よりずっと大きくて飲みにくく、それを1日何回も、何種類も飲むのは大変だった。
だからこれ以上免疫力が低下すると日和見感染症を発症する、すなわちエイズ発症の恐れがある、と言う時期になって薬の投与を開始してた。
(慎太郎)それが今では副作用も小さくなっているし、1日1錠でOKと言うケースもあるんですよね。
(私)そうだよ。何より早期の治療開始が患者の命を救い、寿命を延ばすと分かってきたからね。
(慎太郎)その大事な治療の早期開始に、公的支援が追いついてないんですか?
(私)そうだ。さっきも言った免疫機能障害の認定は、免疫力が低下してからの方がより重度の認定になる。
治療は免疫力が低下する前に開始した方がいいのに、認定は免疫力が低下してからでないと受けられない。
これって完全に矛盾してるし、医学の進歩に公的支援制度が追いつていない。
(慎太郎)なるほど。そういうことだったんですか。
(私)先のNPO2団体の要望書によると、
「CD4が500以上、RNAウイルス量が5000未満の場合、多くのエイズ拠点病院では、身体障害認定が難しいため、経過観察となっている。」
そうだ。
ところが、『抗HIV治療ガイドライン 2017年3月版』によれば、
「CD4値に関わらず、全てのHIV感染者に抗HIV治療の開始を推奨する。」
と書かれている。
CD4が500以下では強い推奨、500より多い場合は中程度の推奨となってる。
このガイドラインの発行は厚生労働省のエイズ対策事業の1つだからね。
(慎太郎)厚生労働省が早期治療を推奨しておきながら、同じ厚生労働省の支援基準が早期治療のじゃまをしている訳ですね。
(私)その通り。先の要望書にも書かれているんだけど、早期に治療受けたいのに、もっと免疫力が低下しないと支援が受けられないので治療を遅らせている人が沢山いるんだ。
(慎太郎)それは大問題ですよね。
(私)まぁね、この件に限らず国の制度ってのはそう簡単に変わらないね。国民の間から強い要望を出して変えていく必要があるね。
(慎太郎)うーん、でもこの問題が国民の間に広く認識されているとは言えないと思います。
(私)そうだね。だからNPOが要望書を出してくれたことはありがたいね。何とか国も制度の見直しに動いて欲しい。
(慎太郎)本当にそうですね。決して他人事じゃないですから。
(私)その通り。今はエイズ治療に無関心、自分には無関係だと思っている人も、いつ支援される側になるかも知れない。
(慎太郎)誰だってHIVに感染する可能性はありますよね。
(私)そうだ。だからこそ、HIV感染予防は大事だし、ちゃんと予防出来ているかどうかを確かめるためのHIV検査も大事だ。
そして万一の時は公的支援を受けて抗HIV治療を早期に開始する、これが大事だね。
今や早期治療開始が出来れば、非HIV陽性者と寿命はそれほど変わらないところまで医学は進歩してる。
(慎太郎)本当にそうですね。今回の要望書が早く叶うといいですね。
(私)では、今日の話をまとめておこう。
●抗HIV治療は早期開始が患者の命を救い、寿命を延ばすことが分かってきた。
●最新の抗HIV治療ガイドラインによれば、CD4値に関わらずHIV陽性者は全て抗HIV治療開始を推奨している。
●抗HIV治療は高額であるため、HIV陽性者は免疫機能障害の認定を受けることで公的支援を受けることが出来る。
●ところがこの認定基準が1998年のままであり、早期治療開始に沿った基準になっていない。
●免疫機能障害の認定では免疫力が低下しているほど重度の認定がされ、助成内容が広く大きくなる。
●そのため、早期の治療を受けたいのに受けることが出来ず、経過観察のままで治療が止まっている患者が大勢いる。
●この状況を改善するため、NPO団体から国へ認証基準改善の要望書が出されている。
こんなところかな。
(慎太郎)はい。おじさんどうもありがとうございました。
(私)それじゃ今日はここまでにしよう。