母親がHIV感染者の場合、生まれてくる子供にHIVが感染する可能性があります。これをHIV母子感染と言います。
今回はこの母子感染について私が調べたことを甥っ子の陽介に教えます。ぜひ、あなたもいっしょに聞いてください。
(甥っ子陽介)おじさん、HIVの母子感染について教えてください! | (私)陽介、日本では母子感染は少ないけどぜひ知っておいて欲しいね。 |
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(陽介)おじさん、日本ではHIVの母子感染は少ないんですか?
(私)そうだよ。妊婦のHIV検査はほぼ100%近く実施されているし、もしも母親がHIV感染者の場合、どうすれば母子感染が防げるかもわかっているからね。
(陽介)そうなんですか。でも日本のHIV母子感染って実際にはどのくらいの件数なんですか?
(私)厚生労働省エイズ動向委員会の発表によると、昨年までの直近5年間はこんな感じだよ。
●2008年 0件
●2009年 0件
●2010年 3件(日本人2件、外国人1件)
●2011年 1件(外国人1件)
●2012年 0件
管理人注記:2017年9月30日
2013年 1件、2014年 2件、2015年 1件、2016年 0件、となっています。
(陽介)ふーん・・・。件数は少ないけど起きてるんですね。
(私)うん。詳しい情報はないんだけど、2010年に発生した3件のうちの1件は、母親が妊婦健診を受けておらず、産婦人科への飛び込み出産だった。
(陽介)えー!HIV検査を受けていなかったんですか?
(私)詳しい事情は分からないんだ。たぶん個人情報保護の観点で明らかにしていないんだと思う。
(陽介)おじさん、そもそもHIV感染の場合、母子感染の確率はどのくらいなんですか?
(私)そうだね。母親がHIVに感染して何も治療せずにそのまま出産すると子供が感染する確率は20%~30%と言われている。ただし、母親に対して適切な治療を行い、出産時にも十分な配慮を行うと感染確率は0.5%以下に下げることが可能だ。
(陽介)0.5%ですか!それならほとんど安心ですね。
(私)そうだね。完全にリスクをゼロには出来ないけど0.5%以下だからね。
(陽介)実際にはどんな方法で母子感染を防ぐんですか?
(私)うん、それは3つの対策を行うんだよ。まず抗HIV薬によって母親のウイルス量を減らす、次に産道感染しないよう帝王切開で出産する、そして母乳を与えない、この3つだね。
つまり、HIVの母子感染とは、
●胎内感染・・・HIVが胎盤を介して母親から赤ちゃんへ感染
●産道感染・・・産道内のHIVが出産時に赤ちゃんへ感染
●経母乳感染・・母乳に含まれるHIVが赤ちゃんへ感染
この3つの感染リスクがあるわけだ。
(陽介)なるほど。だから母親に抗HIV治療を行ってウイルス量を減らし、帝王切開で産道感染を防ぎ、赤ちゃんに母乳を与えない訳ですね。
(私)その通り。これらを複合的に行うことで赤ちゃんへの感染確率を30%から0.5%以下に下げるんだよ。また、生まれた赤ちゃんにも抗HIV薬の投与を行うんだ。
(陽介)生まれたばかりの赤ちゃんにですか?
(私)そうだよ。これはHIV感染予防の意味合いもあって投与するんだ。厚生労働省の作った「HIV母子感染予防マニュアル」によれば、母親がHIVに感染している場合には生まれた赤ちゃん全てに6週間、抗HIV薬を投与すると書かれてある。
(陽介)ふ~ん、そうなんですね。赤ちゃんでも大人と同じようなHIV検査もするんですか?
(私)いや、ちょっと違うんだ。生まれたばかりの赤ちゃんは、生後1年から1年半くらいまでは母親から移行抗体の影響を受けてしまう。そのため、通常のHIV抗体検査をしてもHIVに感染しているかどうか分からない。なので、NAT検査によって直接ウイルスが存在するかどうかを検査するんだ。
(陽介)そうなんですか。ところで、今までのお話は母親がHIVに感染した場合の母子感染でしたね。それではもしも父親がHIVに感染していた場合はどうなんですか?
(私)当然だけど母親がHIVに感染していなければ、父親が感染していても問題ない。もしも父親になる男性がHIVに感染していると分かっている場合、精液からウイルスを除去して体外受精させる妊娠方法もあるんだよ。
(陽介)えー!精液からウイルスを除去する?それって、いったいどうやるんですか?
(私)いや、おじさんも詳しくは知らない。ただ非常に高度な技術が必要であることは間違いない。実際にその方法が出来るのは厚生労働省研究班の事業として取り組んでいる一部の施設だけらしい。
(陽介)そうなんですか。それじゃ誰でも簡単に、という訳にはいきませんね。
(私)そうだね。それじゃ最後に今回の話をもう一度おさらいしてまとめておこう。HIVの母子感染の3つのルートとその対策だ。
●胎内感染
胎盤を介して母親のHIVが赤ちゃんに感染する。母親に対して抗HIV治療を行い、ウイルス量を減らして感染を防ぐ。
●産道感染
出産するときに産道内のHIVが赤ちゃんに感染する。帝王切開によって産道感染を防ぐ。
●経母乳感染
母親の母乳からHIVが赤ちゃんに感染する。赤ちゃんには母乳を与えない。
これらの処置によってHIVの母子感染は感染確率を20%~30%のリスクを0.5%以下に抑えることが出来る。
(陽介)分かりました。でも、実際に出産にあたってはHIVの専門医、産婦人科の専門医、小児科の専門医、そうした医師の協力が必要ですね。
(私)まさにその通りだね。とにかく事前に母親のHIV感染が分かっていれば母子感染は0.5%以下に出来るんだ。妊婦健診ではHIV検査は必須だね。
(陽介)本当にそうですね。おじさん、今回のお話どうもありがとうございました!
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