HIVやエイズに対する意識が年々薄くなっていると言われます。保健所でHIVやエイズのことを相談する人が減り、検査を受ける人も減ったまま増えていません。更には新規のHIV感染者もエイズ患者も高止まりしたまま減っていません。

こうした現象の背景にはHIVやエイズに関する意識や感心が薄れてしまい、どこか他人事で自分の危機管理としてとらえている人が少なくなっているからだと指摘されています。それって、ホントでしょうか。

(甥っ子陽介)おじさん、HIVやエイズに対する関心が薄れているってホントですか? (私)陽介それはどうかな。なかなか一概には言えないと思うけどね。ちょとデータを見てみよう。
陽介 私

(陽介)どんなデータですか?

(私)うん、昨年大阪市が市内在住の男女合計500人に対して行ったアンケート調査だよ。

『HIV感染症・エイズに関する調査結果』(大阪市保健所感染症対策課)

この中から興味深いアンケート結果を抜粋して話してみよう。大阪市だけのデータではあるけど、世間のHIVやエイズに対する関心度がうかがえるよ。

(陽介)そうですか。ぜひお願いします。

(私)まず、アンケートの結果の前に、大阪のHIV感染者、エイズ患者の状況を話しておこう。

2013年に、新規HIV感染者、新規エイズ患者の多かった都道府県は以下の通りだ。これで国内における大阪のエイズ動向が分かるね。

◇2013年(平成25年)新規HIV感染者・新規エイズ患者の多かった都道府県(厚生労働省エイズ動向委員会速報値による)

都道府県 HIV感染者 エイズ患者
東京都 352 107
大阪府 167 52
神奈川県 86 28
愛知県 58 30
千葉県 42 30
福岡県 46 15
兵庫県 32 21
埼玉県 30 11
静岡県 21 16
北海道 23 13

(陽介)大阪は東京に次いでHIV感染者、エイズ患者が多いのですね。

(私)そうだね。まぁ大阪の人口を考えるとある程度納得の結果だよね。

(陽介)はい。今回おじさんが紹介してくれるのは、東京に次いで二番目にHIV・エイズの多い大阪におけるアンケート調査という訳ですね。

(私)それじゃさっそく、いくつかのアンケート結果を見てみよう。

■1.通常のHIV検査では感染から2~3ヶ月以上経過しないと感染しているかどうか分からない。これは正しいか?

●正しい 202人(40.4%)

●誤り  59人(11.8%)

●分からない 239人(47.8%

(陽介)うへ!いきなりですか!これって何度もおじさんに教えてもらった、ウインドーピリオドの話ですね。正解者は40%ってことですね。

(私)そうだ。一般の人はHIVに感染してからどのくらいで検査が出来るか、なんて知らない方が多い訳だ。つまりこれは、いかにHIV検査に関心を持っていないかってことだね。もしもHIV検査に関心があれば、一番大事なことだから知ってるはずだ。

(陽介)なるほど。確かにそうですよね。

(私)では、次にいこう。

■2.性感染症に感染していると、HIVにも感染しやすくなる。これは正しいか?

●正しい 143人(28.6%)

●誤り 126人(25.2%)

●分からない 231人(46.2%)

(陽介)うーん・・・正解率は28.6%ですか。7割以上の人は正しい情報を知らないってことですね。

(私)そういうことになるね。それを知らずに性風俗や不特定多数との性行為でクラミジアや淋菌などに感染している。前に陽介にも教えたけど、クラミジアや淋菌、梅毒などで炎症を起こすと数倍、潰瘍ができると数十倍以上にHIV感染確率が上がるんだ。

(陽介)そうでした。だからクラミジアなどの性感染症に不安があるときはHIVも同時に検査するべきだって話ですよね。

(私)まさにその通り。HIVと同時検査を条件に、クラミジア、淋菌、梅毒などの検査を無料・匿名でやってくれる保健所が沢山あるよ。

(陽介)はい。次はどんなアンケートですか?

(私)お次はこれだ。

■3.HIVに感染したら必ずエイズを発症する。

●正しい 33人(6.6%)

●誤り  336人(67.2%)

●分からない 131人(26.2%)

(陽介)さすがにこれは正しい情報がある程度周知されていますね。要するにHIVとエイズの違いですね。

(私)うん、そうだね。でも、3人に1人は正しい情報を知らない。もっと周知されるべきだと思うよ。HIV感染者に対する偏見や差別をなくすには、まずここを知って欲しいね。

では、次だよ。

■4.HIV感染症は医学の進歩で服薬を継続することでエイズ発症をコントロールできるようになった。

●正しい 267人(53.4%)

●誤り  40人(8.0%)

●分からない 193人(38.6%)

(陽介)うーん・・・正しく知っている人は約半分ってことですか。この問いは前の3番とも関連していますね。

(私)そうだね。つまり、HIV感染症は早期発見が何より大事であり、早期に見つかれば薬によってエイズ発症を防ぐことも出来る、それを知ってて欲しいよね。

(陽介)なるほど、そこですね。次はどんなアンケートですか?

(私)次はこれだよ。

■5.現在のHIV感染症の主な感染経路は性的接触である。

●正しい 279人(55.8%)

●誤り  96人(19.2%)

●分からない 125人(25.0%)

(陽介)うわー!これは意外ですね。正しい答えを知っていたのは55.8%だけですか。

(私)厚生労働省エイズ動向委員会の2013年速報値によれば、新規HIV感染者と新規エイズ患者における感染ルートはこうなっている。


グラフ1.2013年 新規HIV感染者の感染ルート

新規HIV感染者の約88%は性的接触によって感染しているんだ。


グラフ2.2013年 新規エイズ患者の感染ルート

新規エイズ患者の方も約80%が性的接触によって感染している。つまり、HIV感染者もエイズ患者も圧倒的に性的接触よる感染が多いんだよ。これは前にも教えたよね。

(陽介)はい。そうでした。でも、そのことを正しく知っているのは55.8%の人だけですね。

(私)それはね、ちょっとおじさんにも心当たりがあるんだ。

(陽介)というと?

(私)HIVやエイズに関する情報サイトは数えきれないほどあるけど、中には感染ルートの説明で、性的接触と母子感染や針刺し事故、注射器の回し打ちを同列で説明しているサイトがある。また、専門書にも同列に扱ったものがある。

そんなサイトや本を見た人は、HIV感染は実は性的接触による感染が圧倒的に多いのだとは知らないままになってしまう。

(陽介)本当ですね。もっと言えば、前におじさんに教えてもらった通り性的接触の中でも男性同士の性的接触が大きな割合を占めているんですよね?

(私)その通りだ。そうした事実を正確に情報発信することが何より大事だと思うね。そこから予防なり、早期検査なりへ結びついていくと思うけどな。

(陽介)今回は大阪市のアンケート結果でしたけど、これって日本全国に置き換えても同じ傾向でしょうか?

(私)それはちょっと何とも言えないね。しかし、東京に次いで日本では二番目にHIV感染者の多い大阪でさえ、このアンケート結果に見られる認識だということだ。たぶん、もっと認識度の低い県もあるだろうな。

(陽介)厚生労働省や全国の自治体でもHIVやエイズの予防、検査の啓発活動はやってるみたいですけど。

(私)そうだね。でもハッキリ言ってインパクトに欠けるというか、あまり見向きされているとは言えないかも知れない。根気よく活動を継続するしかないね。

(陽介)ホントそうですね。僕もおじさんに色々と教えてもらっているからえらそうに言ってますけど、教えてもらわなければ知らないままです。

(私)このサイトを一人でも多くの人に見てもらいたい。そう願うよ。では、今回はここらでお終いだ。

(陽介)おじさん、ありがとうございました。

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