つい先日、ネットの健康相談サイトでエイズ関連死についての相談を見つけました。

「どうしてもっと早くHIV感染を見つけることが出来なかったのか?」

相談者はその疑問を医師に尋ねます。

あなたはこのやり取りをどう思いますか?

 

◇あるエイズ患者の死

私が見つけた相談サイトでは、質問や相談に対して現役の医師が回答します。

今回の相談はその現役の医師の見解を問うものです。

相談者はある40代の男性です。その男性の大切なパートナー(男性)がエイズで亡くなりました。

エイズ指標疾患の1つであるニューモシスチス肺炎が直接の死因だったそうです。

この男性が医師の見解を聞きたいのは、

「なぜ大切なパートナーがHIVに感染している、エイズを発症していることがもっと早く分からなかったのか?」

と言う疑問に対する回答です。

男性にしてみれば、もっと早期にHIV感染が分かっていればもっと長生き出来たのではないかと思っている訳です。

では男性のパートナーが亡くなるまでにどんな経緯をたどったのか、それを説明しましょう。

男性の書き込みによればこんな経緯でした。

1.亡くなる4ヶ月前に悪性リンパ腫が見つかる。

2.入院して抗がん剤治療を行う。

3.抗がん剤の効果がなく、放射線治療に切り替える。

4.放射線治療中に肺炎を発症する。

5.ニューモシスチス肺炎であることが分かり、ここで初めてHIV検査を行う。

6.HIV陽性であること、ニューモシスチス肺炎がエイズ指標疾患として発症していることが分かる。

7.肺炎によって亡くなる。

このような経緯をたどったそうです。

HIV陽性が分かったのは入院してから3ヶ月目だったようです。

それゆえ、相談者の男性はもっと早くにHIV検査を行いHIV陽性が分かっていればもっと延命出来たのではないかと、病院側の対応を不審に思った訳です。

そして、相談サイトの回答者である医師に、この病院の対応は妥当なのか、もっと早くHIV検査を行うべきではなかったのか、それを問うているのです。

 

◇医師の見解は・・・

最初にお断りしておきますが、この相談サイトはあくまで医学、医療情報の提供が目的であり、医療行為やそれに準ずるものではありません。

回答する医師は相談者の情報を元にそれぞれの見解を情報提供と言う形で答えるものです。

そして今回の相談に対する医師の見解は以下のようなものでした。(回答は複数の医師による)

1.確かにもっと早くHIV陽性が分かっていれば延命出来た可能性はある。

2.性病科でもない限り、いきなりHIV感染を疑うことはないかも知れない。

3.ニューモシスチス肺炎を発症した時点でHIV検査を行ったのは妥当かも知れない。

4.入院時におけるHIV検査は必ずしも全ての病院で行っている訳ではない。

5.患者側から、ゲイであることが情報として医師に伝わっていればもっと早くHIV検査を行っていたかも知れない。

このような回答が多く見られました。

結局、医師の見解として病院側のHIV検査がハッキリ「遅すぎた」とも、「妥当だった」とも回答していません。

「かも知れない」といった、あいまいな表現が目立ちました。

まぁ、確かにそうとしか言いようがないのでしょうね。

ただ私が思うに、医師の回答内容からは、

「患者側からもっと情報提供があれば、HIV陽性に早く気付けたかも知れない。」

といったニュアンスが汲み取れます。これは完全に医師の立場からそう思うのでしょうね。

 

◇抗HIV医療が進めば進むほど・・・

私は過去に多くの抗HIV医療の事例を調べてきました。

私が調べた限りでは、患者本人がHIV陽性を疑ってHIV検査を受ける、あるいは医師に情報提供する、と言った事例は少ないように思います。

「まさか自分がHIV陽性なんて・・・」

と言う思いと、もしも本当にHIV陽性だったら怖い、と言う思いがあるのですね。

確かに患者から言わないと医師には分からない情報もあります。しかし、言えない患者の気持ちも分かります。

一方、ほんのささいな患者のシグナルを見逃さず、早期にHIV陽性を見つけた医師の判断事例も多く知っています。

しかし全ての医師が常にHIV陽性の可能性を配慮して治療に当たる、これも難しいと思います。

エイズ中核病院ならともかく、普通一般の内科、外科などでいきなりHIV陽性を疑うことは少ないと思います。

しかし、当サイトでご紹介してきた通り、現在の抗HIV医療は進歩し、早期にHIV陽性が分ればエイズ発症を抑えることが可能です。

そして最近では、抗HIV治療は開始が早ければ早いほど、予後がいいことが分かっています。

それゆえ、いかにして早期にHIV陽性を見つけるか、言い換えるといかにして早期のHIV検査を受けるか、これが大きな課題となっています。

抗HIV医療が進めば進むほど、早期のHIV検査が大きな課題となっているのです。

冒頭の、

「どうしてもっと早くHIV感染を見つけることが出来なかったのか?」

この疑問に対しては医療に素人の私ごときに答えは分かりません。

ただ、私は定期的にHIV検査を受けています。

どんなにHIV感染予防を行っていたとしても、その予防効果を確かめる方法はHIV検査以外にありません。

しょせん、人間のやることに100%完璧などあり得ません。

だから私は定期的にHIV検査を受けるのです。

そして、今回の相談事例を読んで、いっそう定期的なHIV検査の重要性を痛感しました。

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